STAP細胞の理解には、ES細胞がどのように分化していくのかを学びたい。

丹羽総説の解釈をめぐって、ため息ブログメンバーとやりあったのは、大分前でした。

丹羽総説です。
その中でも、以下の部分が一番、丹羽先生が伝えたかったことかな?と思います。

なぜ、単一の細胞から、様々な機能をもつ細胞からなる動物の体ができるのでしょうか?でしたね。
丹羽先生はまず、その疑問を呈し、その鍵は転写因子がにぎってますヨと丹羽総説は語ります。

These findings raised a key question: why are multiple TFs required to artificially change a cellular phenotype? To answer this question, we need to know how TFs function in a cell to define a phenotype. During differentiation, multiple TFs are known to cooperate with each other to activate transcription of their target genes (Whyte et al., 2013). To stably maintain a certain cell type, multiple TFs form a network that maintains their own expression, as well as that of cell type-specific genes as a downstream subcircuit (Davidson, 2010). While these broad principles have been established for a number of years, specific issues, such as what determines the exact number of TFs required to form a cell type-specific TF network, and how TF networks are sequentially replaced during differentiation, remain unanswered. A simple model system with synchronous differentiation would provide an ideal platform to address these issues. The in vitro differentiation system of mouse embryonic stem cells (mESCs) (Box 1, Glossary; Box 2) provides one such model (Niwa, 2010). In this Review, I focus on studies that analyze the role of TFs in regulating mESC self-renewal and differentiation, and summarize the mechanisms involved in the functioning and transitioning of TF networks.


まずは、この論文の解釈を再考してから、以下に、2020年の丹羽先生たちの論文を紹介します。

まず、最初に示すのは、議論となった2018年の丹羽総説の出だしです。
Introduction
During mouse development, a single, totipotent cell divides repeatedly to give rise to a few billion cells, which differentiate into a few hundred different cell types.

この部分を単純にグーグル訳にかけると以下です。

マウスの発育中、単一の全能性細胞が繰り返し分裂して数十億個の細胞を生じ、それが数百の異なる細胞型に分化します。

(単一の全能性細胞は受精卵です。これがわからない人がいました。)

つまり、上記英文は、「受精卵から体の全てが作られるよ」と当たり前のことを言ってるんですが、科学的表現が私たちにはわかりにくいのです。

"a few hundred different cell types" に鍵があります。体の各種の細胞種は数百種ですから、体を構成する組織・臓器のさまざまな全種類の細胞を指して、そのように表現しているからなんですね。
これがCell phenotypesの意味です。

Cell phenotypesは、体のいろいろな細胞を指しますが、ここを理解するのがなかなか難しいらしいです。
とにかく、大学の先生の頭でも、ここが直に入っていけないようでしたね。

このようにCell phenotypes を“細胞の表現型”と訳さず、体の中のいろいろな種類の細胞と置き換えると、だれでも理解できます。

丹羽総説は、普通の人でも想像できる言葉に置き換えると、特別に難しいものではありません。

“細胞の表現型”は、動物体内にあるいろいろな種類の細胞です。例えば、皮膚であるとか、内臓細胞であるとかです。さらに進むと、内臓のうちでも、肝臓なのか、すい臓なのか、脳なのか?となっていきます。
さらに、すい臓なら、すい臓のうちの、消化酵素をつくる外分泌腺細胞なのか?インスリンを作る内分泌腺細胞なのか?はたまた腺細胞を構造体としてしっかりさせておくための支持組織の細胞なのか?とどんどんと多種多様な細胞構造になっていきます。

インスリンを作る腺細胞になるためには、それを作るための遺伝子が働くことが必要ですが、すい臓で腺細胞になるために分化して集まってきた細胞にだけ、限定的にインスリンを作るための遺伝子が働きます。
「この細胞はこの働きをする」ように、「別の細胞はそれを助ける働きをする」ようにと、臓器の中の役割を分けて、一部の細胞のみに特別の能力を持つ細胞に分化させていく流れを調節する活動をしているのが転写因子です。
体内に何千種類と存在しています。

丹羽先生は、この転写因子の詳細はまだ不明であると言っています。
しかし、そのしくみの解明のモデルとして、ES細胞は大事なツールだといっています。
ES細胞における転写因子の研究が、この生命の謎を解く大事なモデルであると言っています。

しかし、転写因子の正体はたんぱく質であることからわかるように、その構造解析がとても難しいのです。
DNA解析は、4種の塩基(アデニン、シトシン・・・)の並びを決めればよいのとは異なり、蛋白質は構造変化をしますので、その解析は難しいです。

受精卵の分化の最終物である体の細胞は、染色体が簡単に変化しないように、複雑な多種多様なたんぱく質で固く巻かれています。一方、ES細胞はそうした分化の経過はまだとっていないです。今だ、特定のたんぱく質で巻かれたことのないDNA構造を持つのがES細胞です。

ですから、転写因子の蛋白解析が比較的やりやすいということなんですね。
丹羽先生は、そのことを強調しています。
そして、どのような転写因子の働きで、ES細胞、TS細胞へと分化していくのか。それらの細胞を人工的に操作すると、どこをどう調節できるのか?その転写機能のメカニズムはどうなのか?ということを、以後の本文に精力的に書いています。


この丹羽総説が書かれたのは2018年でした。今、丹羽先生のグループの研究はどうなっているのでしょうか?
PubMedをそのような視点でみていくと、ひとつ参考になる論文がありました。
ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)活性に関する研究です。

HAT活性を構成する遺伝子を改変してみたら、HAT活性には影響を与えず、むしろ細胞増殖に影響を与えたとする論文です。
実は、細胞増殖に関係する遺伝子は、当然、がんの研究でも注目されていて、転写因子の研究成果は、がんの研究領域の進歩にも大いに関係するようです。

ざっとのぞいてみましょう。

丹羽先生たちの2020年の論文です。

題して、

MEAF6 is essential for cell proliferation and plays a role in the assembly of KAT7 complexes
Kumi Matsuuraら・・・Htishi Niwa.

まあ、山のように遺伝子の名前が出てきますが、学とみ子は上記のように、”受精卵”を”唯一の万能細胞”と書くようなことはせず、簡単なる説明を心がけます。

遺伝子の名前を少し載せますが、ため息さんからデタラメ書くな!と言われた時の予防策として、多少学術的に表現するかもしれませんが、わかりやすくなるように心がけます。

Myst family genes encode lysine acetyltransferases that mainly mediate histone acetylation to control transcription, DNA replication and DNA damage response. They form tetrameric complexes with PHD-finger proteins (Brpfs or Jades) and small non-catalytic subunits Ing4/5 and Meaf6. Although all the components of the complex are well-conserved from yeast to mammals, the function of Meaf6 and its homologs has not been elucidated in any species. Here we revealed the role of Meaf6 utilizing inducible Meaf6 KO ES cells. By elimination of Meaf6, proliferation ceased although histone acetylations were largely unaffected. In the absence of Meaf6, one of the Myst family members Myst2/Kat7 increased the ability to interact with PHD-finger proteins. This study is the first indication of the function of Meaf6, which shows it is not essential for HAT activity but modulates the assembly of the Kat7 complex.

核内でDNAがからみついているコアヒストンのリジン残基に、アセチル化がおきるとクロマチン構造が緩みDNAが転写されやすくなります。その働きをするのがヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)であり、その働きはHAT活性と呼ばれます。

真核生物では、HAT活性は、リジンアセチルトランスフェラーゼ(KAT)によります。
主要な5種のHAT / KATファミリーの1つに、MYST(Moz、Ybf2 / Sas 3、Sas 2、Tip60)ファミリーがあり、ヒストンH3およびH4のアセチル化を介して、転写調節、DNA複製、およびDNA損傷応答をしています。

Mystファミリーは、(Myst1 / Kat8 / Mof、Myst2 / Kat7 / Hbo1、Myst3 / Kat6a / Moz、Myst4 / Kat6b / Morf、Tip60 / Kat5)です。

Mystファミリー遺伝子産物のうちのMyst2/Kat7は、四量体複合体構造をとり、PHDフィンガータンパク質(BrpfsまたはJades)および小さな非触媒サブユニットIng4 / 5およびMeaf6からなります。


丹羽先生グループは、このMyst遺伝子構成成分のMeaf6を欠損したES細胞(Meaf6 KO XEN 細胞)を作製し、Meaf6の役割を明らかにしました。

研究の成果です。

Meaf6を欠損したES細胞はどうなったかですが、Meaf6遺伝子を除去しても、ヒストンのアセチル化はほとんど影響を受けませんでしたが、ES細胞の増殖は停止してしました。

つまり、Meaf6遺伝子は、HAT活性というより、細胞増殖に関与していることがわかりました。
しかし、他の細胞では、どうなのかはわかりませんので、まだ、結論的なことは言えません。
しかし、HAT活性関連遺伝子産物は、HAT活性にとどまらず、細胞増殖に関連することは、さらにこの領域の研究テーマを広げる事になりました。

がん細胞における不死化因子研究につながりそうです。

In contrast, cancer genome analyses revealed that fusion of MEAF6 to PHF1 was recurrently found in endometrial stromal sarcoma [9], suggesting its role to control cell proliferation in mammals.


しかし、まあ、参っちゃいますね。ため息さんのレスポンスでした。

>参っちゃうね。こんな簡単な英文をGoogle翻訳で訳さないとわからないのか?それとも初心者用に解説してあげているとでも言うのですかね。

ため息さんは全体の意味をつかめないのです。however but 等の用語にこだわるレベルですが、それ以上に医学を知らないのだと思います。ため息さんは、基礎科学の本当に狭いことしか知らないらしいです。学とみ子の書くことをを否定するということはそういう事です。

体内時計さんは、自らの考えが正しいと、いわゆる専門家にいつも確認したい志向の人だと思うけど、そうした意味で、ため息ブログメンバーは罪作りだと思います。正当なるものを否定して、デタラメを堂々と正しいと公言してしまうグループですからね。検索技術で、専門家ぶる人も複数、ため息ブログにいますね。一方的に情報を出すだけです。

自らが理解できない事は、全部デタラメにしてしまう人たちです。一般人が科学を勉強するにはとんでもないサイトです。

>Google翻訳がないと…

ため息さんよ、このタイトルはひどすぎる。ため息さんの資質を問われるという意味で、ですけどー ー 。世の中の人を甘く見ちゃダメです。

Dさんです。
>この辺り、擁護の皆様が烏合の衆なのがよく分かりますね。

こういうことを公言して憚らないのが、エセ学者ですぞ!画策学者ですぞ!
素人を甘くみてると思うよ。画策学者たちは何か大きな権威に守られているとおもっているのだろうけど、桂報告書の真意とは違うと思います。

世間を納得させるのは、小保方捏造場面を証拠立てることが必要です。見た!聞いた!この証拠!なるものが必要です。

桂報告書に書かれた実験ミス論への科学的反論をしてください。あるいは、それを書いた桂報告書を訴えてください。

第三者の学とみ子にいやがらせをするのは逆効果ですぞ!



ため息さんです。

>当方の資質を問う方がいたらコメントください。

そこには、誰も書きません。


plusさんです。
>お待ちしておりますよ。

学べども、私たちの命ある間には解明は難しいと思いますよ。

それでも、各種細胞ごとに、増殖能、分化能が詳しくわかるようにはなるでしょう。

特定の遺伝子産物構造体が、一部細胞の増殖能、分化能に影響を与えることができる事も明らかになるでしょう。

特定の遺伝子改変動物が、分化能、増殖能において異常亢進するかもしれませんね。

その時、あったらいいなのSTAP細胞が、やっぱりあった!になるかもしれません。

これは素人だましではなく、人類の未知の解明ということです。
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コメント

Ooboe
学さん、

私こんなテーマのエントリ大好きです。
イメージを刺激してくれます。
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