重要な問題点を、桂報告書とBCA論文において、読み返してみよう。

BCA論文には、STAP(幹)細胞はES細胞から作られた
“STAP cells are derived from ES cells”
と書かれているが、この論文を読む人たちにとっては、BCA論文に書かれた結果説明には、疑問を持たざるを得ない。

なぜこのような書き方なのか?について考えると、恐らく、BCA論文著者らは疑義なる部分をしっかり残したいと思ったからではないだろうか?

BCA論文著者らは複数の人たちであるし、学者の立場では、ES説に疑問を感じるだろう。
それぞれの調査員が考えることは異なるはずだ。
BCA論文著者らが、科学界や一般社会に対して、どのようなパフォーマンスするかは、各著者ごとに思惑や意向が違っていたとしても良い。

科学の疑問は、疑問のまま示して、後世にゆだねたい人もいたであろう。
あるいは、著者らの中には積極的にESねつ造説に反旗を翻していた人もいるかもしれない。
科学的にES説への疑義の証拠を示しておきたいと思った人がいたのかもしれないとも思う。

そうした科学に忠実な人がいなければ、桂報告書、及びBCA論文は、現状のような記載内容にはならないと思う。

閉鎖環境のマウスは遺伝子が極めて類似している。同時期であれば、親が違ってもそこから作った細胞の遺伝子は極めて類似する。

若山研究室マウスにおいて、違う129とB6マウスをえらび、細胞を作った場合、AC129-1、AC129-2、FLS-T1、FLS-T2などのSTAP幹細胞と、129B6F1ES1のES細胞の、遺伝子構造は極めて一致していた。
この事実は、BCA論文のExtFig2でしっかり示してある。
異なる機会で作られた細胞であるにかかわらず、遺伝子構造が近似する様相がBCA論文のExtFig2でわかる。
わざわざ、この一覧表ExtFig2を示した理由は、若山研究室マウスの特徴を読者に伝えるためである。

近時点でのマウスコロニーは、均一性が高い。
つまり、同時期のマウスの遺伝子は均一化されているのである。
BCA論文のExtFig2には、STAP ChiP-seqの遺伝子パターンが示されているが、これも同じコロニーマウスをピックアップした場合は、同一細胞パターンとなることを示している。
均一コロニーマウスをピックアップして、細胞を作製すると、こうした結果になるのである。
注目すべきは、同時期に作られたはずの、FES1とFES2では、こうした関係に無いことである。
これは、単に親が違うということでは説明がつかない。
FES2が作られた後に、3番、8番の大きな構造変化が起きたのであろう。


同一コロニーマウスでは、遺伝子状態が極めて似てくる事実をふまえると、STAP細胞がES細胞から作られたと決めるには、構造異常の一致、一部のSNPの近似では十分ではないのだ。

決め手は、親にない遺伝子変異を、両細胞が共有しているかどうかである。
特に、細胞同士の同一性を考える場合は、培養途中に突然変異的で生じた一塩基変異を共有するかどうかである。
今回は、親マウスに一塩基変異があったかどうかは必ずしも明らかにされていない。
従って、SNPが極めて高率に一致するかどうかが同一性の決め手になる。
STAP(幹)細胞はES由来であると言うには、構造変化に加え、SNPも高頻度で一致する必要がある。

しかし、実際の結果は、STAP(幹)細胞と一致するES細胞は無かったのである。
FLS,CTSの幹細胞と極めて高率にSNPが一致したのは、細胞由来不明の129/GFP ESである。


マウスから次世代のマウスができる時に、染色体の構造変化が起きたり、突然変異の一塩基変異が起きる。
しかし、ntESG1、ntESG2で見られるように2年の差異では、若山研究室のマウスは、遺伝子構造は大きくは変化しない。
この事実を、NGS解析が示している。
2005年のマウスコロニーは、FES2パターンなのである。

桂報告書には、FES1とFES2の間では、染色体3番、8番でみられる大きな遺伝子構造の違いが示されたが、BCA論文では、その違いの原因は、マウスコロニーが違うと書いている。

この重要な問題点を、桂報告書とBCA論文において、読み返してみよう。

桂報告書6頁
>他方、ES 細胞 FES1 と同時に樹立された ES 細胞 FES2 は、 ES 細胞 FES1 とかなり類似した SNPs 分布を有するものの、第 6 染色体、第 11 染色体お よび第 12 染色体の一部に ES 細胞 FES1 と異なる領域が存在していた

>ES 細胞 FES1 と FES2 で異なる SNPs を 示すこれら3つの染色体領域に関して、2012年に樹立されたとされるSTAP幹細胞FLS3、 FI 幹細胞 CTS1 および小保方研ストックの由来不明 ES 細胞 129/GFP ES は、ES 細胞 FES1 とほぼ同一の SNPs パターンを示し、ES 細胞 FES2 とは異なっていた。

>ES 細胞 FES1 と FES2 でのみ異なる SNPs に関して、両者の遺伝的背景の相違によると 判断された上記第 6、第 11、第 12 染色体の SNPs クラスターを除外し、残った 1,290SNPs を用いて比較を行うと、STAP 幹細胞 FLS3、FI 幹細胞 CTS1、および、ES 細胞 129/GFP ES は同一細胞株といって良い程の高い類似性を示すことが判明した。従って、STAP 幹細胞 FLS3、FI 幹細胞 CTS1、および 129/GFP ES は同一の細胞由来であり、ES 細胞 FES1 と同 一、あるいはそれから派生した株の可能性が高い、と結論づけた。


日本語には、以下のBCA論文で示された1290個のSNPの30%が合わないとの記載(赤字)がない。無い代わりに、上記のような微妙な言い回しになっている。ここも、科学に忠実な著者ら(の一部)は、しっかり書きたくとも書けなかった?部分ではないのだろうか?ES派と、科学派のせめぎあいの場か?

外部から、ES論を確定せよ!のプレッシャーがあったかもしれないが、理研調査員らに対する内外のプレッシャーは、桂報告書を書いた状況と比べて、BCA論文著作時にはかなり弱まっていたと考えられる。

つまり、タイトルを、[STAPはES!]と書きさえすれば、BCA著者らは論文内容を自由にかけたのではないかと想像できる。それが、この30%の数値となっているのではないだろうか?

もうひとつ上記記載で興味深いのは、[および、ES 細胞 129/GFP ES は]の部分である。129/GFP ES は持ち主不明の細胞であり、これがES細胞かどうかは不明とされている。それをあえて公式報告書において、ES細胞と決めつけた。このES細胞との言葉を入れた書き方は、読者が疑問を持つように、わざわざと誘っている感がある。



BCA論文
Furthermore, these STAP cell lines shared two genomic characteristics with FES1, but not FES2; first, two chromosomal deletions (Fig. 1a) are present only in FES1 and all Acr/cag-GFP STAP stem-cell sublines, but not in the other cell lines examined, in the paternal Acr/cag-GFP mice (frozen stock in 2010), or in potential maternal 129 substrains available in Japan. Second, FES1 and the STAP cell lines with Acr/cag-GFP share large SNP clusters that differ between FES1 and FES2 in three chromosomes (Fig. 1b and Extended Data Fig. 1b, c).

以下のBCA論文の一部は以前より、問題になっている。
以下に、FES1とFES2では、ピックアップしたマウスのコロニーは違うと明記してある。

>These differential SNP clusters probably arose from chromosomal heterogeneity in the parental mouse colonies when FES1 and FES2 were established. It is highly unlikely that the Acr/cag-GFP STAP cell lines and FES1 all independently acquired these two unique deletions and inherited the same three mosaic chromosomes from parental mice.

After the above three SNP clusters reflecting parental heterogeneity are excluded, the remaining 1,290 SNP alleles that distinguish FES1 and FES2 are supposed to have accumulated at or after establishment in 2005. Regarding these SNPs, STAP cell lines FLS3 and CTS1 and 129/GFPES cells are nearly identical, but differ slightly from FES1 (at 30% of these alleles), suggesting that STAP cell lines FLS and CTS were derived from a sub-stock of FES1 ES cells.


もし、理研がES捏造説を進めたいなら、FES1とFES2の比較解析をわざわざ載せたりはしないだろう。
ES説堅持の立場なら、FLS,CTSに極めて近いFES1がすでにSTAP作製前に存在していること、NGS解析においても、FES1からSTAP細胞が作られたことが確認できたと記載することで、STAP調査は終わりとするはずである。

追記

ため息氏の早朝コメントです。
思いつき見当外れコメントです。もはや、この問題に大きく遅れをとってるため息氏です。

学とみ子がラベルを替えたと言ってると、ため息氏は書いてるけど、どこにあるんだか?これこそ、ため息妄想である。

上記記事の英語も日本語も、読者から疑問が出ることをもくろんで、報告書や論文の著者らが書いてるのです。

ため息氏と学とみ子は、決して相互理解のための議論のまな板に乗らない。

以下のようにため息氏が威張ったり、エラぶってみたりしても、学とみ子に何の影響も無いです。


ため息氏のコメントです。
>以下に、「FES1とFES2では、ピックアップしたマウスのコロニーは違うと」明記してある。』
と翻訳したが、「コロニーが違う」ではな両親のマウスのコロニーが遺伝的にheterogeneityである、つまり不均一であるという意味で間違いである。桂委員会報告書と同じ表現である。しっかり読め。


追記

さて、理研の調査員の中には、マスコミ、政治的影響に反対する姿勢の人がいた!との想定論を書いてきたが、もう少し考えてみようと思う。

まず、桂報告書で、129xB6のマウスから作られたものでないとの記載があるが、これは標準マウスからSTAP細胞が作られたものでなく、特殊なマウス(一部の遺伝子構造において異常構造を持つマウス)から作られたと言っている。しかし、STAP細胞は生きたマウスから作られたわけでない(ES細胞から作られた)と、桂報告書が言ってると読者が誤解しやすいように書かれている。

しかし、ES論に納得できない調査員が世間に伝えたかった真意は、STAP細胞作成には、特殊なマウスが使われたとの事実ではないのか?

特殊なマウスからSTAP細胞が作られたとの事実は、BCA論文のExtFig1である。

BCA論文発表前に、クローン状態にある若山研究室のマウス遺伝子状況が、スライドとしてすでに情報提供された。
しかし、その時点では、STAP細胞作成は、特殊なマウスが使われた事実に視点がおかれず、又、そのようなマウス由来であれば、同一性の証明には、厳密性が要求されるとの解説も無かったと思う。結局、STAP細胞と酷似したES細胞など、見つけられなかったのである。


BCA論文では、こうした部分の説明がきちんと書かれていて、学とみ子のような素人読者でもハッとなる説明文章になっている。

BCA論文タイトルは、著者らはそう思ったからそうつけた。これだけ証拠があるんだ!と著者らは表向き言いながら、一方で、(実は)ここまでの証拠しかないんだとも言っている。

FES1とFES2が、同時に作られた細胞であると、桂報告書に何度も強調されているのも、両細胞に注目せよ!との(調査員からの)ありがたいメッセージである。
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