扁桃体神経細胞を光に反応するように変換後、光らせて興奮させ、その働きを調べる。ネイチャー最新号

ある特定の細胞の遺伝子に、蛍光を発する蛋白物質をコードする情報を組み込み、蛍光が光る条件にすれば、その細胞内で、蛍光を発する蛋白物質を光らせることができます。
 
同様に、ある特定の細胞に、遺伝子的手法を用いて光を感じる受容体を埋め込めば、動物の体内に光を感じて反応する細胞をつくることができます。そして、体内に埋め込んだ微小光源から光をあてると、その細胞は、興奮して発火します。この手法を、脳の神経細胞などに用いて、神経細胞を、光刺激で反応させることができます。そして、その神経細胞(ニューロン)の性質が、興奮性か?抑制性か?を、知ることができます。
 
脳では、神経細胞同士がそれぞれに、神経突起を縦横無尽に突き出していて、密にからみあい、シナップスを形成しています。そのため、それぞれの細胞別に、働きを調べることが難しかったわけです。電極刺激などでは、その場所の神経細胞が、全部、刺激されてしまい、抑制性とか、興奮性が混合した結果しか、評価することができませんでした。
 
さらに、神経細胞は、核のある細胞体と、それが突起をのばした先の場所で果たす働きは同じとは限りません。シナップスにおける神経伝達物質が変わると、興奮か?抑制か?の役割は変わります。
 
光遺伝子を利用した研究の進歩が進んでいます。この手技は、光受容体遺伝子を細胞に埋め込みます。神経細胞の役割を研究する時、ターゲットにする細胞に、光受容体遺伝子を埋め込みます。そして、光を当てると、光受容体遺伝子を持つ細胞のみが興奮します。神経細胞は、増強か、抑制かの働きを持つので、興奮性か?あるいは抑制性を知ることができます。働きの異なる神経細胞を、個々に検討することができます。
 
脳の異なる場所に、光をあてて、脳のどの部分の細胞が、どのような働きをしているのかを見ることができます。
脳内扁桃体において、この光遺伝子の手技を用いて、興奮性と抑制性の神経細胞の相互作用を調べた成績が、ネイチャー2011年、3月11日にありました。
 
脳内扁桃体では、不安を起こす細胞と、それを抑える細胞が、相互に存在し、シナップスを形成して、不安感情をコントロールしています。つまり、同じ場所で、同じ様な細胞が、別々の作業をしているのですから、それを解き明かそうとする人間の努力は、大変なわけです。
 
マウスの扁桃体には、中央核CeA (外側中央核CeL、正中中央核CeM) と、外側核BLAある、それぞれのニューロン同志が、相手の細胞の興奮を牽制しあっています。扁桃体におけるニューロンの興奮は、不安の増強につながりますので、別のニューロンからの抑制性のシナップス結合が働き、不安が異常に高まらないようにしくまれています。図を参考にしてください。図には、3か所の部位と。そこにあるニューロンの相互のシナップス結合が書かれています。実際の細胞の大きさはもっと、小さいです。
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今回は、マウス脳内に、光刺激に反応する神経細胞をつくり、CeM(図では赤)、CeL(図では黒)、BLA(図では青)のそれぞれ異なる海馬の部分に光を当てて、そこに存在するピラミダール細胞(ニューロン)が、他の扁桃体部位にどのような影響を与えるかを調べました。
 
BLAにあるニューロンの細胞体を光で刺激すると、その刺激は、マウスの不安行動を増強しました。しかしBLAからCeLに神経突起を伸ばしてシナプスをつくっている場合、このシナプス部分に光を当てると、マウスの不安が抑えられました。その理由は、シナプスが、CeLの細胞に抑制性のシグナルを送っていたからです。CeMに光をあてると、この部分のニューロンが興奮しますが、その結果、抑制性の神経刺激が起こり、この場合も、マウスの不安状態が改善しました。
 
とても、複雑な実験系ですが、それぞれ異なる役割を、各ニューロンが担っているということがわかりました。
 
この研究から、個々のニューロンのシナップスレベルで、その機能を解明しない限り、脳内のニューロンの発火も、鎮静も、評価できないことがわかってきました。この領域での、さらなる進歩が必要です。
 
人の脳において、うまく機能しなくなってしまった場合、異常は、どのレベルで起きているのか?どこの場所にあるどの種類の細胞か?どこへの投影しているのか、シナプス伝達物質はどうか?などが、大事な情報になるでしょう。
 
個々の人で異なる異常部位を知ることができれば、そこを選択的に改善させることができます。脳科学の進歩は、個々の人の脳内環境の異常に応じた、副作用のない薬の開発につながることになるでしょう。
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