私たちが知らぬ間に、皮膚の角化細胞と細菌が頑張ってくれている仕組みについて

私たちの体には、病原菌やウイルスなどの外敵から体を守るために、体中にセンサーがはりめぐらされています。そうした免疫細胞の守りのおかげで、私たちは守られています。さらに、それらのセンサーは働き過ぎないように調節されています。
 
以前に、肺の中に吸い込んだカビに、反応しないように、肺には、カビを見逃すしくみが働いていることをブログに書きました。同じ様に私たちの腸でも、セグメント菌などの腸内細菌のおかげで、異物排除ためのの過剰な免疫反応が回避されていることを話しました。私たちが知らぬ間に、体の細胞が頑張ってくれている仕組みについて書きます。今回は皮膚編です。ネーチャー2009年12月号の記事です。
 
皮膚の角化細胞のセンサー(受容体)は、そこに付着した危険な物質を感知します。普段の皮膚にはついていない物質を感知して、危険信号をだします。さらに、角化細胞が危険を感じ取ると、周りの角化細胞は、炎症性のサイトカイン(IL-6、TNF-α)を出します。すると、そこの皮膚の血流が多くなり(赤くなり)、白血球が呼び込まれてきます(腫れて痛くなります)。
 
食事の前には、手を洗いましょうとは、衛生教育の大事なポイントでした。でも、実は、皮膚に常在する細菌は、私たちを守る役割をしていることがわかりました。それは共生と呼ばれる、持ちつ持たれつの関係です。私たちの皮膚は、無菌ではありません。皮膚には常在菌と呼ばれる菌がたくさんいます。皮膚の表層は、角化細胞から成ります。皮膚は2-4週間で、下層の細胞が上まで登ってきて脱落していきます。この時、膨大な細胞由来の蛋白質にさらされます。こうした自己成分に反応しないように、皮膚は守られています。皮膚に常在する菌や、自己の細胞に過剰な免疫反応がおきないようになっています。
 
ちょうど、腸内細菌が、私たちの腸に病気をおこさない様に働いているのと同様です。
腸管では、1週間くらいで細胞が入れ替わるので、多数の細胞死がありますが、腸内細菌は、過剰な免疫反応を抑える働きがあります。
 
皮膚の常在菌は、表皮ブドウ球菌などが代表ですが、皮膚の免疫活動を調節しています。表皮ブドウ球菌は、皮膚が赤く腫れたりしないよう、白血球が皮膚に呼び込まれないように抑え込む役割をしています。
 
この常在菌表皮ブドウ球菌の活躍は、皮膚の細胞を傷つける実験にて確認することができます。皮膚に傷をつけたり、紫外線をあてて細胞を殺してその周りの角化細胞の動きを見ます。角化細胞のセンサー(受容体)は、自らの傷を感知して、あわてて炎症性のサイトカインを産生し、白血球を呼び込みます。血流を増やして、早く傷を治そうとします。角化細胞のセンサーは、トールライクレセプター(TLR)と呼ばれます。角化細胞の表面に出ているセンサー(TLR3受容体)で、外部で起きている危険状態を感じ取るのです。
 
角化細胞による炎症反応は、表皮ブドウ球菌由来の物質を加えることにより抑えられます。表皮ブドウ球菌培養液中の低分子の水溶性物質に、炎症抑制作用があり、サイトカインの産生が低下します。皮膚のトールライクレセプター(TLR)を生まれつき欠損したマウスがいますが、このマウスでは、皮膚に傷をつけてもサイトカインが産生されず、白血球も呼び込めません。
 
一般的に細菌は、炎症を起こさせる役割のものでしたね。しかし、皮膚の表層では、炎症が起き過ぎないように、皮膚と細菌と究極の協力関係が築かれているのです。しかし、細菌は細菌です。皮膚の深層の細胞では、表皮ブドウ球菌に対して免疫反応を起こします。つまり、表皮ブドウ球菌の侵入がどこまで及ぶかで、生体の反応が変化していくのです。血液まで入ってきたら、生体は強く反応します。
 
トールライクレセプター(TLR)は、昆虫類から、人間まで伝わった生体防御のための受容体(危険を感じ取る部分)です。皮膚のTLR3(受容体)は、自己の傷ついた細胞からこぼれたRNA部分を感知しています。角化細胞上のTLR3(受容体)は、壊死した自己細胞のRNAを感じ取り、炎症を起こします。そこに、表皮ブドウ球菌由来物質を入れると、炎症反応が低下します。細胞がこわれる時に排出されるRNA分解酵素もTLR3(受容体)を壊します。TLR3が壊されると、生体に過剰な免疫反応はおきないですみます。
 
表皮ブドウ球菌は、角化細胞上のTLR3(受容体)が、RNAと反応するのを抑えていて、皮膚の健康を維持しているのです。
 
しかし、黄色ぶどう球菌などの毒性の強い病原菌の中には、この生体側の調節機構(免疫が弱まる)を逆手にとって、自らの増殖に利用することがあります。
 
健康や美容のために、皮膚に次々と何かを乗せていくと、時に免疫細胞の逆鱗にふれてしまうことがありますね(接触性皮膚炎)。特に、タンパク成分が可能性が高いです。
 
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