取り巻き学者が、桂報告書やBCA論文で示された不確実性に気づいていたら、顛末は変わっていただろう。

前回記事で、

権力のある者が、権力の無いものをいじめる。
知識ある者が、知識無い者をだます。

と書いた。

STAP事件は、ここから、更にひとひねりの状況があって、起きた事件だ。

調査に関わった専門家が、本当のことを言えなくなってしまった事件であったと言える。

大声を出して、STAPのES捏造説を広めたのは、細胞の非専門家であった。
生き残ろうとする細胞の改変能力を知らない学者たちが、STAP細胞のコンセプトを理解しなかった。
動物体内で待機する多能性細胞のクロストークやターンオーバーの実態などは、遺伝子学者の彼らは考えたこともなかったのだろう。
体内に待機する多能性を秘めた細胞群がどこからどうやってくるのかは明らかでない。
遺伝子学者たちは、論文に記載のないマウス遺伝子発見を証拠として、STAP細胞実験者のねつ造だと信じ込んだのだ。

細胞の非専門家であるにもかかわらず、STAP細胞を論評できる専門的学者としてマスコミからもてはやされた。
遺伝子を知っていても、細胞の生き死や生理機能はわからない人たちであった。

しかし、ES捏造を早期から告発した遺伝子専門家は、勇気ある学者として、もてはやされた。
こうして、ESねつ造説は、科学としての正当性を獲得してしまったのである。
ESねつ造を信じた人たちは、科学者層にも出てきて、議論に参加した。
さらに社会の多くの一般の人たちを、誤解させてしまったのである。

一方、STAP細胞を支持する人たちは、「ESでは説明できない」 と感じる人たちだ。
この事件の経緯に疑惑をかんじたのが、STAP派の人たちだ。

この事件が今だに、人々の関心を集めるのは、この事件の真相は、科学的にも、社会的にも明らかになっていないからである。
まず、科学的に疑問の部分から書く。
STAP幹細胞が、本当にES細胞と同一といって良いか?は、まだ、解決していない。

同一と言ってる学者もあれば、いや違う!と言う学者もいる。
つまり、学問的にまだ、定まらない。
なぜなら、STAP幹細胞とES細胞は微妙に違うのである。
この違いを問題ないとするのか?しないのか?の判断は、考察する人に任されている。
FES1は、FLS,CTSと微妙に違うし、129B6F1ES1とAC129の同一性は、ぼかされている。

BCA論文の英文言い回しについては、当ブログでも、さんざん議論されてきた点である。
結局、学問的には遺伝子構造解析では、決着がつかないのである。
遺伝子構造解析では、同一性を決めることができないのであるが、そこを理解するには、やはり勉強が必要だ。

いづれにしろ、大事なのは、STAP幹細胞とES細胞が同一の細胞かどうか?の科学的結論が出ていないことは事実である。

あちらの人で、この学問的未解決部分を説明できる人はいない。
学問的疑問点として、残されたままなのだが、すでに解決できたとわめく人々は、細胞科学が理解できないからである。


STAP幹細胞とES細胞は微妙に違うとの理解は、勉強が好きな人であれば、専門家でなくても、学問的到達は可能である。

129/GFPESとFLS,CTSはほぼ同一だが、FES1とは微妙に違うとBCA論文に書かれていて、BCA論文著者らの葛藤が見て取れる。
BCA論文の著者らは、「本当にこれでよいのか?」 と葛藤しながら英作文をしたと思う。
こうした経緯を、著者らになった気分になって、その葛藤を共に味わってみるのは一興だ。


まさに、学問的論点が未決であるからこぞ、小保方ESねつ造論には根拠が無いのである。


次に、社会的疑問部分に移る。
多くの解析されないサンプルも残存し、かつ、消えたサンプルもある。
129/GFPESを誰が作製したか明らかにされず、かつ、キメラマウスのTCR図などもあって、実験サンプルには謎が多いのである。
後から、解析したくても、サンプルの正当性は保たれていない。
本来、どれとどれが同一か?は、作成者なら簡単なことである。
しかし、作成者からは、何らの言葉も出てこない。
もし、作成者が保存した状態が、他の人によって動かされてしまうと、作成者にもわからない。


政府取り巻きの非専門学者たちは、ES捏造説を信じた。
非専門学者たちは、BCA論文に残された疑問を感じ取って、ES捏造説を推進していたわけでない。
政府取り巻きの学者たちに、ES捏造説の正当性を信じさせた組織があるのである。


社会から科学者として認められている人たちが、間違った理解をしたのは大問題だ。

しかし、学者と言われる人でも、間違うことはある。さらに、悪い事には、知らなくてもごまかす学者がいる。
学者なら、信頼できる意見ばかりを言えるわけではないのだ。
問題点を理解できなくとも、無知をごまかそうとする自己顕示の強い学者がいる。
わからないことでも、わかっていると空威張りをする学者を、STAP派の人たちはまのあたりにしている


もし、取り巻き学者が、桂報告書やBCA論文で示された不確実性に気づいていたら、顛末は変わっていたかもしれないと思うと残念だ。
学者なら、最後まで科学的正論で勝負してほしい。

政治的圧力を理研調査員にかけたのは、政界人に取り巻く御用学者層だったと思われる。
取り巻き御用学者は、自身にとって政界での立場が良くなる方向へと解釈を持っていったように思う。

今、コロナウイルス自粛の政府判断を支持するタレントたちがいる。
彼らの本心はさておき、タレントが政府を支持すると、そのタレントにとって有利な事が多い。

政府がそのタレントの活動をサポートしてくれれば、そのタレントの名誉だ。そのタレントを公式イベントでの重要な立ち位置においてくれたり、公式ポスターに採用してくれたりする。結果、常に、人の目に触れることになる。

政府、政界人と仲良しタレントなら、脱税や不正行為にも有利かもしれない。

マスコミも、タレントと同じように、政府方針をヨイショして、国民に説得する方向でマスコミ記事を書けば、政府の覚えめでたきとなる。

専門知識を持たないマスコミが、誤解を拡散させた事件として、STAP事件は後世に残す価値がある。
一般人が理解するには、難しい細胞論を、マスコミはいとも簡単に、実行困難なねつ造劇に仕上げた。
ねつ造論の注目度にうかれて、営業主義におぼれたマスコミが犯した大きなミスである。
結果、幾重にもSTAP細胞を誤解した人たちを社会に増やしてしまった。

しかし、一方で、STAP事件は、科学に興味を持ち、科学論に参入したいと努力する一般人を増やした。
科学の一般化というポジティブな影響を残した。

科学の一般化は、留まることがない。
今は高等知識でも、教育の低学年でも理解できる生物学の知識となっていく。
そうした社会の潮流に応じて、今後も、細胞機能の医学的知見を増やしていきたいと思う。
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コメント

Ooboe
学さん

>一方で、Stap事件は、科学に興味を持ち科学論に参入したいと努力する一般人をふやした。

仰るように、パートナーや私なんか、全くの科学圏外の生活者だったんですが、
いまや、命、生物、細胞など、の不思議絶妙な振るまい世界の魅力に嵌まってしまってます。

専門家におかれても、一般素人が純粋に興味を抱いてくれるのは、うれしいみたいです。パートナーは、相沢先生に様々な
質問をしていましたが、どんな初歩的質問でも、うれしそうに、答えてくれたそうです。今私達は、無謀にも、Stap現象過程の素人仮説の考察を楽しんでいます。

パートナーは、Stap現象に関わるであろう、最新研究資料を次々送って来ます
とても面白いです。素人として、専門資料の理解の仕方のコツをパートナーにおそわりましたので、今はすんなり、研究核心部分を把握できるようになりました。

私なんか、
そもそも、専門語が並んだ資料なんか
端からスルーです!が、パートナーの好奇心は、核心理解を掴むコツを会得してしまいました。
研究成果の難しいデータ証明部分は、研究結果核心を同じ専門家の反証に向けて、追試用に記述した部分であり、素人が理解しようと背伸びしてこだわっても、
無駄な努力部分だ。そこは端から飛ばして

素人でも理解できる、始めの
研究テーマ概説と後の総括記述を
読むのが、言わんとする研究核心を
つかむコツなんだと。お蔭で
私でも、研究論旨と成果の大枠はなんとか
理解できるようになりました。

*すみません、
なぜか横書きに出来ませんでした。
読みにくいかも知れません、、、


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