細菌の人への病原性は、相互関係です。人が弱くなればバランスが崩れます。

このところ、腸内細菌の話しをしてきました。腸内細菌の難しさは、培養できない名無しの細菌がたくさん住みついている事実があるからでした。そして、病原性がないと考えられていた細菌が、実は、腸内環境の条件が変わることにより、毒性を増すことを紹介しました。
 
細菌と人は、共生関係にあるものの、それは免疫が正常の時に良い関係が保てるのですが、人の免疫が低下した時は、菌は障害を与えるようになります。人と菌は相互関係だからです。さらに、人と菌とのかかわり合いについては、まだ、わからないことが多くあり、医学常識が変わって行くのです。以前は病原性がないだろうと考えていた菌が、実はあるに変わります。今回、紹介するのは、嚢胞性線維症と診断された遺伝子異常の病気の話しです。
 
日本には少ないのですが、嚢胞性線維症という白人に多い病気があります。肺に粘調な痰がたまり、慢性の肺炎症をおこしてきます。この病気の人は、気管支拡張症や肺炎の頻度が高くなり、肺に常に細菌の感染をかかえることになります。今回はカナダの成績です。American Journal of respiratory and critical care medicine2011;183:635
 
嚢胞性線維症では、肺に常に菌が住みつくようになります。おなじみの病原菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌が住みつきます。さらに、黄色ブ菌、そして、最後は緑膿菌が住みつきますが、この菌が増殖する人では、生命予後が悪くなります。緑膿菌は、抗生剤に耐性のことが多く、この菌にすみつかれてしまうと命取りです。嚢胞性線維症では、かなり長期にわたり、菌と人との戦いが続くことになります。肺の殺菌能の低下により、気管支や肺胞に菌が定着してしまいます。菌と人の免疫細胞は、常にせめぎ合っているのですが、健康人ではたやすく、菌の封じ込めができる作業ですが、嚢胞性線維症の人では難しいです。健康人では、痰はでませんし、肺は、マクロファージが多く、外気とつながっていても、無菌状態を保てます。
 
嚢胞性線維症では、肺の免疫機能の低下する結果、痰から多種の菌が培養されます。健康人で、病原性を発揮する菌は、嚢胞性線維症の人では、さらに危ないです。それでは、明らかな病原菌でなく、嚢胞性線維症の痰に住みつく他の菌は、どう考えたらよいのでしょうか?意外に思うかもしれませんが、実は、まだ、こうしたことが、あまりわかっているのではないのです。
 
Stenotrophomonas maltophilia(S. maltophilia)が、そんなよくわからない動向の菌です。嚢胞性線維症の人692人を調べました。S. maltophiliaが持続的に培養される人、時に培養される人、培養されない人の3群にわけました。そして、692人を8年追跡しました。すると、S. maltophiliaが持続的に培養される人では、血清の抗体価が高くなりました。
 
菌が増殖体制に入ると、生体は抗体を増やします。抗体は、本来、感染の制御するために、生体が作る物質ですが、逆に過剰な反応を呼び込み、嚢胞性線維症を悪化させることがあります。S. maltophilia菌の持続的保有者は。肺機能が低下していく速度が早く(肺が壊れていく)、又、入院を要する急性増悪の機会も多くなる事がしめされました。これは、S. maltophiliaが嚢胞性線維症では、病原性を発揮していることを示すものです。
 
人の菌のかかわりあいは相互関係であることが、重要なポイントです。今後も、人間と菌との共生関係を維持させていくには、何十万年と引き継がれてきた人の免疫機能を、失わないことが大事ではないかと思います。病原体と戦うことの機会が少なくなってしまった現代、人が病原体と緊張状態を強いられなくて済む分、免疫細胞がアレルギー反応を起こす方向に廻ってしまいそうです。
 
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