66歳以上の女性のエストロゲン内服は、腎機能を悪化させる。

日本では、ホルモン補充療法をしている人は、2-5%位、看護職では10%位かと言われています。欧米では、2002年までは、40-60%の女性がホルモン補充療法をしていましたが、2002年のWHIの比較研究以後は、3人に1人がこの治療を止めています。ホルモン補充療法の低下は、米国で乳がんの発症が減少したことと関係すると推定されています。(2月13日のブログ参照)

血圧は、レニン及びアンギオテンシンと呼ばれる物質の支配をうけています。レニン・アンギオテンシン系は、血圧上昇に働きますので、レニン・アンギオテンシン系を抑える薬は、ACE阻害剤、ARBと呼ばれ、世界的に使われています。エストロゲンは、この物質にも関連します。
 
今回のカナダの研究で、66歳以上の女性で、経口のホルモン補充療法を行っていると、腎機能がわるくなる(糸球体ろ過量)が低下することが示されましたので、紹介します。
 
Kidney International 2008;74,377
ホルモン補充療法群(エストロゲン群1083人、黄体ホルモン群40人、エストロゲン+黄体ホルモン群336人)と、ホルモン補充療法を受けていない女性群4386人の間で、腎機能を2年間にわたり比較しました。女性たちの年齢は、66歳以上で、3群とも10-20%に糖尿病などの合併があります。レニン・アンギオテンシン系の降圧剤は、3群とも、40%に使われています。
2年間の間に、ホルモン補充療法を受けている人では、腎機能がわるくなる(糸球体ろ過量)が低下することが示されました。この腎機能の低下は、エストロゲン使用量と関係しました。エストロゲンを膣に挿入している人(経膣的エストロゲン)では、この腎機能低下はみられませんでした。エストロゲン+黄体ホルモンの併用群にも、腎機能低下はみられませんでした。
今回の研究では、経膣的エストロゲンは、経口と異なり、腎機能への悪い影響は出ませんでした。経口薬と比較し、肝臓の代謝酵素の誘導などが少なくて済むことが関係するようです。
 
経口エストロゲンは、レニン・アンギオテンシン系に作用し、血圧を上昇させます。妊娠中の女性では、循環血圧量が増大しますが、レニン及びアンギオテンシンの調節作用により、高血圧を避ける方向に働きます。妊娠中は、大量の内因性の女性ホルモンは、血圧をさげる方向に働きます。しかし、ピルなど人工的に投与されたエストロゲンは、血圧をあげてしまいます。特に、高齢になってからの外から経口的に体内に入ったエストロゲンには、レニン及びアンギオテンシンを上昇させます。そして、腎臓の機能を低下させます。
 
 
エストロゲンを投与すると、女性に益になると考えられている根拠は、卵巣除去マウスからの実験から推定されていることが多いです。卵巣除去したマウスでは、腎機能が悪くなります。そこにエストロゲンを人工的に投与継続的に与えると、腎臓機能が維持できます。しかし、エストロゲンの間欠的では、そうした効果が期待できません。
 
当初、閉経後の女性ホルモン投与は、脳にも心にも良い影響があると考えられました。しかし、心も脳も、悪い効果がでてしまいました。人の予測がはずれました。実際の人の体は、さまざまな物質が交錯し、機能しているわけですから、相互関係で働きが異なります。
 
男性ホルモン、および女性ホルモンの人工的投与については、今後も、実際の人の疫学データの成績をしっかりフォロウしていく必要があります。
 
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