食物に対する反応により、起きてくるであろう病気について 特に小児1型糖尿病について

食物に対して、人はいろいろに反応を起こします。多くの場合は、自然に調整され、それが症状として出てくることは少ないです。時には、食物アレルギーのような, 乳児に起きる一過性の病気があります。食物アレルギーの多くの場合は、軽快していくものの、中には慢性化する場合がまれにあります。

子どもたちが、食物に対して反応しないようにするためには、どうした工夫が必要なのでしょうか?それについて、論文を紹介します。
 
まず、ヨーロッパの健康乳児を対象として出された学会勧告です。パン食が多い欧米では、セリアック病というのがあります。小麦アレルギーに似ているのですが、それよりやや複雑な病気で、慢性の腸炎を起こします。離乳食への小麦導入をいつするかは、欧米の母親の関心事です。
 
学会の勧告では、早すぎても、遅すぎてもいけないというものです。離乳食への導入時期によって、セリアック病のみでなく、糖尿病の発症が増えることが指摘されています。もちろん、小児の糖尿病は誰でも起きる病気でなく、素因があるのですが、そうした子どもたちは、インスリンに対して自己抗体をつくってしまうのです。すると、インスリンをつくる膵臓の島細胞が死んしまいます。こうした子どもでは糖尿病が数年後から起きてきてしまいます。インスリンが作れない一型糖尿病が発症します。

まず、一つ目の論文です。
6か月までの乳児に、母乳は望ましい。抗原性の高い食品の導入を遅らせることは、アレルギーリスクのある子供であっても、そうでなくても、アレルギーを防ぐことにはならない。固形の離乳食、グルテン(小麦)の導入は、乳児が生後4か月未満で早すぎても、7か月以後の遅すぎてもいけない。母乳を飲んでいる間に、じょじょに小麦を開始するのが、セリアック病、糖尿病の予防に役立つ。J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2008 ;46:99. PMID: 18162844
 
膵臓から分泌されるインスリンに対して抗体をつくってしまう子どもがいます。なぜ、こうした間違いが体内で起きてしまうかというと、食物として体に入った蛋白構造物に対して反応をしてしまい、抗体を作っていまいます。この抗体が、自らのインスリンに対して反応してしまうようです。これを自己免疫と言います。
 
子どもがこうした間違いをして、反応してしまう食べ物の代表的なものは、ミルク、小麦などです。すなわち、子どもがミルク蛋白に対してつくった抗体の中に、ミルク蛋白に結合するだけでなく、インスリンにも結合しやすい構造をとってしまう場合があります。すると、抗体がついたインスリン産生細胞はへっていってしまい、ついに糖尿病が発症してしまいます。
 
離乳食として体に入った食物が、のちの糖尿病の元になることがあるのです。とっても不思議なような気がしますが、こうした事が、実際に起きてしまう子どもがいます。
 
普通の人は、ミルクや小麦が、こんな大それたことを起こすと考えないと思いますが・・・・。その機序はまだ解明されていませんので、真相の解明までには、紆余曲折があると思います。インスリンに自己抗体をもつ子どもたちが、将来、糖尿病になりやすいと言えますが、短期間の観察では、証明できないことがあります。又、こうした特殊な反応に過剰に反応して、食べ物を制限するのも、良くないことです。どの食べ物も、何かをしでかす可能性!があるのです。
 
病気の素因を持つ子どもにおいては、離乳食をいつの時期に開始するのかが大事です。乳児期は、食物をすみやかに受け入れやすい時期になっているので、時期を逸せずに、ミルクなどの異物蛋白に接する(ミルクを飲む)ことが必要でしょう。しかし、個人差があり、どの子にいつ糖尿病が発症するのか予想は難しいものです。
 
欧米では、成人期までもちこすセリアック病が多いので、論文が多く見られます。次に紹介するのは、どの食べ物に対して作られる抗体が、慢性腸炎や糖尿病へのリスクをもっているかを調べています。調べたのは、牛乳、小麦、鶏肉などでした。結果は、ミルク蛋白に対して作られる抗体が、インスリンにも結合してしまう(インスリン自己抗体になりやすい)ことがわかりました。
 
自己抗体が陽性の子供を、数年、経過をおっていくと、一部に糖尿病が発症してきます。作られた抗ミルク抗体が、インスリンにも結合してしまい、インスリンを産生する細胞を壊します。以下の論文は、インスリンと結合する抗体を含む血清(自己抗体が陽性の血清)に、ミルクを加えることにより、インスリンに結合する能力が低下することを示した成績です。試験管内で、ミルクと抗体が結合してしまい、インスリンに結合できる能力が減ってしまうのです。これをしらべた実験結果です。インスリンに結合する抗体が、ミルクで吸収されるのは、ミルクとインスリンの立体構造が似ているからです。(抗原抗体複合物の形成され、抗体のインスリン結合能が低下する)。
 
Clin Exp Immunol. 2011;164:42-9
インスリンに対する自己抗体を持つ0•3-14歳の人53人から血清を集めました。このうち、6人の血清に、ミルク粉末をくわえると、23%から100%に、インスリン結合能が低下しました。この子どもがミルクを飲むと、インスリンに結合する自己抗体産生をつくらせてしまう可能性があります。ミルク抗体が陽性の6人の血清が、α、βカゼイン蛋白で吸収できかどうかを調べたところ、二人が吸収されました。インスリンに反応する抗体をつくったこどもが、将来膵臓の島細胞に対する自己抗体をつくるように発展する可能性が懸念されましたが、5年間、追跡した限りにおいては、糖尿病の発症はありませんでした (この実験的手法を、ミルクによる吸収試験と呼びます)。
 
今回の研究では、抗インスリン抗体を持っている子どもから、糖尿病の発症はありませんでした。この論文では、糖尿病の発症機序として、食物に対する抗体が、自己抗体として働き、将来、糖尿病の発症につながる可能性は、それほど高くはないであろうと言っています。
 
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