女性ホルモン療法の長期観察により、直腸癌も増加した。


前回のブログで、併用ホルモン療法による、肺がん死を報告しました。今回は、2編の関連論文を紹介します。
 
1編は、エストロゲン単独使用法を用いたホルモン補充療法が、肺がん発症に及ぼす影響についてです。結論を簡単に言うと、エストロゲン単独では、肺がんによる死亡を増やさなかったという結果でした。
 
もう1編は、女性ホルモン療法の利点として評価された大腸がんを減らす治療効果に関してです。実は、観察が長期に及ぶようになると、大腸がんを減らす女性ホルモン治療効果は消失してしまったとするものです。
 
この結果から、何を連想できるでしょうか?かつて近代医学が、女性ホルモンを初めて取りだすことに成功してから、この物質は、子宮がんを増加させる物質であることがすぐ判明しました。それゆえに、エストロゲン単独療法は、子宮摘出後の女性に限定して行われてきました。その子宮摘出群の女性を対象とした試験では、女性ホルモンは肺がんの発症を増やしませんでした。
 
このギャップがなぜ生じたのかの原因は解明されていませんが、子宮がんを減らすために添加された黄体ホルモンに何らかの問題があった可能性が高いと推定されています。
 
WHIの無作為対照化試験で、治療に使われたホルモンは、うまの尿から精製されたものです。以前にジエチルスチルと言う名前の合成エストロゲンが作られた時代、がんの増加が指摘されました。そして、その物質には子マウスに影響が及ぶ薬害が証明できました。現在でも、どの女性ホルモン製剤をどのように使って、安全にホルモン補充療法を行うかの結論はまだ出ていません。
 
今回の結果から推定できることは、薬剤別の結果に違いが出たことが大事ではないかと思います。すなわち、エストロゲン単独では肺がん死との関係は出ず、一方エストロゲンと黄体ホルモン併用では、肺がん死との関係が出たというこの事実です。同時に進行させた臨床研究によって、特定の薬剤のみに、効果との関連が証明できました。この意味は、治験が正確に行えたと見なされること、その結果、真実に近い結果を導きえたと考えてよいかと思います。

Women Health Initiative(WHI)無作為対照化試験では、抱合型馬エストロゲンの治療により、閉経後の女性の肺がんの発症を偽薬群と比較しました。今回の研究は、エストロゲン単独の使用でも、肺がん発症に影響があるかどうか、事後評価を行ったものです。

方法: WHI研究は、アメリカ合衆国の40のセンターで行われる無作為二重盲検プラセボ対照試験です。 子宮摘出を受けた50-79歳の閉経後の女性、計10 739人を対象に、一方は、625mgのタブレットの抱合型馬のエストロゲン(n = 5310人)を、もう一方は、偽薬(n = 5429)の1日1回投与しました。結果: 追跡機関の7.9年(標準偏差= 1.8年)後、ホルモン治療グループでは61人、プラセボ群では54人が肺がんと診断されました(年= 0.15%対0.13%につき肺がんの発病率; 発生率= 1.17、95%のCI ;0.81-1.69、P = .39)。 非小細胞肺がんは、両群に統計的に差がなく、肺がんによる死も両グループの間で同等でした。肺がんによる死亡数は、エストロゲン群は34人、プラセボ群では33人、オッズ 1.07、95%のCI 0.66-1.72)。

結論:抱合型馬のエストロゲンだけの使用は、発生率および、肺がん死を増やしませんでした。J Natl Cancer Inst. 2010 ;22;102:1413.PMID:20709992
 
次は、女性ホルモン療法による直腸癌に関する論文です。

WomenHealth Initiative(WHI)エストロゲン+プロゲスチンの併用治療は、かつて、直腸がん発生率を減らしたと報じられました、しかし、その後、年余が経過し、7-9年以上のホルモン補充療法群の女性を再検討の結果、直腸癌が減少するとしたホルモン療法の優性は否定されるに至りました。
 
方法: WHI登録のエストロゲン単独群は、50歳から79歳の女性たち21,552人と、別の観察グループに属する10,739人の女性を対象としました。 エストロゲン+プロゲスチン併用群は、子宮を持つ女性たちで、WHIに属する群32,084人と、別の観察グループに属する女性16,608人です。 結腸直腸がんは、病理学報告によって確かめられました。

結果:WHI観察研究、結腸直腸がんと診断されたのは、エストロゲン群168人と、併用群175人の女性たちでした。危険率は、エストロゲンでは、0.80(95%の信頼区間0.53-1.20)、プロゲスチン+エストロゲン群では1.15(0信頼区間.74-1.79)でした。 エストロゲン+プロゲスチン群で、診断の遅れはないようです。
 
今回の結果によると、エストロゲン+プロゲスチン併用療法を7-8年以上続けると、結腸直腸がん死亡率を減少させるという治療効果は消えていることがわかりました。
Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2009 May;18(5):1531-7  PMID: 19423530
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