ホルモン補充に関する3編の論文の紹介。 多彩な物質を評価することの難しさ

ホルモン補充療法には、2002年のWomen Health Initiative(WHI)研究と、2003年のMillion Women Study(百万人の女性研究)の結果が代表とされています。ホルモン補充療法に関するWHI試験の結果は、世界の女性診療に、大いなるショックを与えました。

このWHI試験発表の前に、英国のがん財団で書かれた論文1編と、発表後にシンガポールと米国で書かれた論文をそれぞれ紹介します。
 
WHI試験が進行中の時期である1999年に書かれたレビュー論文です。この記事の紹介から、始めます。
 
J Epidemiol Biostat. 1999;4(3):191-210;
今までに発表された100本の疫学的研究は、ホルモン補充療法の使用と、女性の生殖器(胸、子宮、卵巣)ガン発症の危険性が、関係することを指摘しています。 ホルモン補充療法の治療中は、乳がんまたは子宮体がんの発症リスクが増します。このリスクは、ホルモン補充療法の継続期間が増す程、増加します。
 
エストロゲンとプロゲストゲンを合わせることで、単独エストロゲンよりがん発症が減らせますが、乳がんを減らす効果は、あまり期待できないようです。しかし、子宮内膜がんの発症は、減らすことができます。5年以内のホルモン補充療法であれば、治療を止めた後に、乳がん発症への影響は、徐々になくなります。ところが、子宮体がんに対する影響は、長く続きます。 しかし、今だ、HRTの使用と死亡率の関係に関しては、信頼できる情報がありません。HRTの使用期間がより長いほど、乳がんと子宮内膜の発生率は、高くなるでしょう。HRTの使用が短期間であれば、これらのガンの発病率は、ほとんど影響を及ぼしません。
 
これまでの研究では、女性が、エストロゲン単独によるHRTを、50歳で始めて、10年の間、続けると、1000人の女性において、乳がんは6人多く発症し、女性の子宮体がんは、42名多く発症します。エストロゲン・プロゲステロンの併用であれば、子宮体がんは20人程多く発症すると推定されます。HRTと、これらのガンの過剰な発病率の関連に関しては、今後も慎重に評価される必要があります。 10695959

2002年7月のWHI発表後に、世界の女性診療は、どのように変化したかについては、英語圏の国々を中心に、いろいろな視点から論文がでてきます。

アジアでは、英語圏代表として、シンガポールからのレビュー論文を紹介します。しかし、実際で、シンガポールで調査研究されたものでなく、欧米で行われた研究成果を紹介したにとどまっています。

シンガポール大学の女性の健康担当課が書いています。Maturitas. 2009 ;64:80
2001-2002年と、2005-2006の間で、欧米において、およそ22%の乳がんの発病率が減少しました。ホルモン補充療法の減少により、乳がんの発症率が低下したのは、それまで広くHRTが使われていた50-60才の女性において、最も著明でした。特に、エストロゲン受容体陽性、あるいはプロゲステロン受容体陽性の乳がんが減少しました。それらは、HRT使用との関連が。最も疑われるタイプの乳がんでした。
 
米国、アイオア大学は、WHI発表後に、ホルモン補充療法を2/3の女性が止めたと報告しています。アイオア大学内科診療で、実施されていたホルモン補充療法の場合です。内科領域では、がん、血栓症を恐れる傾向が強いようです。
 
J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2005 ;60:460
米国アイオア州のアイオア大学からの内科学からの論文です。この論文では、WHIの発表後、2/3の女性は治療を止めたが、1/3は続けていることが示されています。

2002年7月のWomen Health Initiative(WHI)試験の公表の後、すでにそれまで内科診療で続けられていた、閉経後のホルモン補充療法(HRT)は、数が減りました。内科診療中の1000人の閉経後の女性(平均年齢66 +/- 9歳)に、後向きの聞き取り調査をしました。
 
閉経後の女性1000人のうち、445人(45%)は、ホルモン補充療法ユーザーでした。286人の女性(64%)は治療を中止しましたが、159人(36%)は、ホルモン補充療法を続けていました、中止者の181人の女性(63%)は、WHI発表をうけてホルモン補充療法を止めた女性です。そして、136人の女性(48%)はWHI試験の参加者でした。
ホルモン補充療法を続けた女性は、159人でした。ホルモン補充療法を継続する主な理由は、31人の女性(20%)は、更年期症状によるもの、39人の女性(25%)は骨粗鬆症によるもの、20人の女性(13%)は、本人の希望が強いためでした。
 
 HRTを続けている159人の女性のうち、41人(26%)はアテローム性動脈硬化性があり、7人は静脈血栓塞栓症があり(4%)、8人には乳がん(5%)の病歴、12人には乳がん(8%)の家族歴がありました。
 
結論: WHI試験の影響はあるものの、一部の女性は、いろいろな理由のために、内科の診療現場で、ホルモン補充療法を続けていました。
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