妊娠中に限った出来事であっても、高血糖の妊婦は、将来、糖尿病を発症する確率は高くなる

妊婦の高血糖は、胎児の発育不全あるいは、巨大児などのリスクがあります。出産時のトラブルのリスクも高くなります。
 
しかし、妊婦の高血糖が軽度である場合、多く妊婦の場合は、出産後には、血糖が元に戻ります。妊娠中に限局した出来事であっても、軽度高血糖を示した妊婦は、将来、糖尿病を発症する確率は高くなると予想されます。しかし、出産後に、何10年にもわたり、健康な女性を追跡して研究するのは難しく、女性の健康に関する影響については、まだ、データは十分ではありません。
 
妊娠中の高血糖の程度をしっかり、把握し、長期の女性の糖尿病の発症をみていく追跡研究が、世界的に進行しています。妊婦の糖尿病発症の原因について、長期的に評価していくことが必要だからです。
 
妊娠中に起きる出来事については、それが一過性であっても、実は、将来、病気への発展を示唆させるものなのです。
外国では、女性の健康についての研究が盛んです。世界的医学誌ニューイングランドメディシンからの論文です。N Engl  J  Med 358:19,2008

多数の健康妊婦を集めて、ブドウ負荷試験を行いました。健康妊婦たちには、過去の糖尿病、HIV、B,C型肝炎などの感染症、生殖医療を受けた人などは除かれています。
 
妊娠24-32週の時に、ブドウ糖負荷テストを妊婦に行い、その時に得られた血糖の数値と、生まれた子どもの血糖などの健康状態を評価した成績です。この研究は、ミシガン大学内分泌学教室が中心となったHAPO (Hyperglycemia Adverse Pregnancy Outcome)と呼ばれている、大規模、世界的な研究です。米国、英国、タイ、中国、スエーデン、オーストラリアなどが参加しています(残念ながら、論文著者には日本の大学の名前がありませんでした)。

妊娠24-32週の妊婦25505人に、ブドウ糖負荷テストを行い、空腹時が105mg/dlを超える、あるいは2時間値が200mg/dlを超えた妊婦を除き(高血糖と判断)、それ以外の妊婦においては、介入なしで、出産までの経過と新生児の健康状態を観察しました。
 
今回の定義した高血糖の範疇に入らない妊婦は、23361人でした、35週目までに検査したブドウ糖負荷試験よリ得た血糖の数値を、7群に分け、(75未満、75-79、80-84,85-89,90-94,95-99,100以上)とし、それぞれの群ごとに、出産の経過を観察しました。
 
その結果、妊婦の血糖が上昇するにつれて、新生児の出産時体重が増加する現象が観察できました。その他にも、妊婦血糖は、新生児の状態に影響を与えました。
 
妊婦血糖と関係がみられたのは、出産時の新生児体重の増加、帝王切開の増加、新生児の低血糖頻度の増加でした。
 
妊婦の血糖は、新生児の臍帯血のC-ペプチド(CPR)と相関しました。
 
35週目までに検査したブドウ糖負荷テストの1時間値、2時間値も共に評価しましたが、空腹時血糖と似た相関関係を示しました。
 
妊婦の血糖が95mg/dlを超えると、体重の大きな子どもは、15%程度に、妊婦の血糖が100mg/dlを超えると20%程度に生まれました。

空腹時血糖が、1SD (6.9mg/dl)を超えるごとに、体重の大きな子ども(90パーセンタイルを超える)が生まれる確率が1.38倍に高くなりました。
 
1時間血糖が、1SD (30.9mg/dl)を超えるごとに、体重の大きな子ども(90パーセンタイルを超える)が生まれる確率が1.46倍に高くなりました。

2時間血糖が、1SD (23.5mg/dl)を超えるごとに、体重の大きな子ども(90パーセンタイルを超える)が生まれる確率が1.38倍に高くなりました。

血糖が75mg/dl未満の妊婦では、帝王切開は13%、100mg/dlを超えると25%前後でした。

空腹時血糖が、1SD (6.9mg/dl)を超えるごとに、帝王切開の確率が1.11倍に高くなりました。
1時間血糖が、1SD (30.9mg/dl)を超えるごとに、帝王切開の確率が1.10倍に高くなりました。
2時間血糖が、1SD (23.5mg/dl)を超えるごとに、帝王切開確率が1.08倍に高くなりました。

空腹時血糖が、1SD (6.9mg/dl)を超えるごとに、新生児低血糖の確率が1.08倍に高くなりました。
1時間血糖が、1SD (30.9mg/dl)を超えるごとに、新生児低血糖の確率が1.13倍に高くなりました。
2時間血糖が、1SD (23.5mg/dl)を超えるごとに、新生児低血糖が1.10倍に高くなりました。

その他の、出産時のトラブル(新生児仮死、新生児外傷、高ビリルビン血症、早期産などは、数が少なく、妊婦の血糖との有意な関係がみいだせませんでした。

負荷試験の解説
高血糖の程度が軽度な人の糖尿病を診断する時、ぶどう糖負荷試験を行います。空腹時血糖を測定した後、ブドウ糖75gを飲んで1時間後と2時間後に再び採血をして血糖値を測定します。場合によっては30分後、1時間半後、3時間後に採血をする場合もあります。
 
さらに、血中インスリン活性(血液中のインスリン濃度)、Cペプチドなどを測定します。
 
一般的な人の糖尿病の基準値と許容範囲
• 空腹時値…110mg/dl未満
• 2時間後値…140mg/dl未満 とされています。

C-ペプチド(CPR)とは、インスリンが合成される前段階の物質(プロインスリン)が、分解されるときに発生する物質です。インスリンと同程度の割合で血液中に分泌され、ほとんどが分解されないまま血液中を循環し、尿とともに排出されます。血中や尿中のC-ペプチドを測定すると、インスリンがどの程度膵臓から分泌されているのかが把握できます。
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