向神経病薬では、評価が難しい偽薬との比較試験に、多くの医師・医療者とPTDS軍人が参加しました。

退役軍人のPTDS(外傷性ストレス症候群)の治療に関する報告です。
 
2010年、米国コネチカットの23か所の軍人用医療施設の外来で、PTDSが診断された退役軍人たちの治療成績です。今回は、向神経病薬のリスぺリドン(リスパダール)の入っている実薬と、入っていない偽薬を、本人・医師がわからない状態で服用し、6ヶ月後の治療成果を評価しました。
 
二重盲検法という、信頼性が高い薬の評価方法を用いて、薬効を比較しました。向神経病薬では、評価が難しい偽薬との比較試験に、医師・医療者とPTDS軍人たちが参加して、薬剤効果の評価をチャレンジしました。
 
特に参加した医療者の数が多く、治験期期間中は、治療の成果、症状の評価把握をするために、医師、医療者、患者(軍人)が、真摯に治験にとりくんだであろうと思います。こうした研究には、評価する人、評価される人のエネルギーが必要になります。日本では、臨床で行うことが難しい研究です。
 
今回の偽薬との比較試験で、最後まで服用が可能で評価ができたのは247人でした。
治療を受ける側には、戦争経験の過酷なストレスに対する心身失調という均一性がありました。又、一般的に、PTDSは、SSRIで治療されることが多いようですが、兵士の場合は、薬の効果がでにくいとの傾向があるようです。

その結果、どちらの治療グループの人たちの症状には、改善がみられ、リスペリドン(リスパダール)群にはっきりした治療効果を出せない結果となりました。
 
リスぺリドンは、現在、日本でも多く使用されている向神経病薬で、12月17日に、当(学とみ子)ブログでも紹介しています。

JAMA. 2011 Aug 3;306(5):493-502. PMID: 21813427
367人の退役軍人に調査を行い、296人が、比較試験の対象となりました。この人たちは、2か月以上、他のセロトニン再取り込み阻害剤SRIによる治療を、めだった効果がでない人たちでした。
 
投薬による病気の変化の評価は、治療者によるPTSD臨床症状評価(PTSD Scale;CAPSで1から136点で評価)や、モンゴメリーうつ病評価尺度(MADRS)、ハミルトン不安評価尺度(HAMA)、臨床全般印象度(CGI)、退役軍人向健康調査票(SF-36V)をもちいました。リスペリドンは、最大4mgを就寝前1回服用としました。

治療開始後24週間で、PTDSの評価スコアであるCAPSの変化を見たところ、プラセボ群の人たちでは、
スコア-12.5と、症状が減少し、リスペリドン群の人たちでは-16.3と、症状が改善する数値は高くなりましたが、統計学的に評価したところ、リスペリドン群とプラセボ群の間に、有意差はでませんでした。
 
治療期間のポイントごとのCAPSスコアでは、両群に差が出ず、全期間のPTDSを評価したCAPSスコアでも、リスペリドン群64.71、プラセボ群67.16と、リスペリドン群にPTDS症状の減少があるものの、プラセボ群とに、統計学的な有意な差はでませんでした。
 
不安症状でも、HAMAや患者による評価CGI、治療者による評価のいずれも、症状の軽快の程度に、有意差はでませんでした。SF-36V(生活一般評価)による生活の質(QOL)についても、両群に有意差はみいだせませんでした。

体重が増えたと訴えた人は、プラセボ群2.3%に対し、リスペリドン群15.3%でした。 疲労感が増した人は、リスペリドン群13.7%に対し、プラセボ群はなし。眠気は、リスペリドン群9.9%、プラセボ群 1.5%でした。唾液がでやすいと答えた人は、プラセボ群0.8%に対し、リスペリドン群9.9%と、リスペリドン群で高率に認められました。
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