ビタミンAは、免疫調節に重要で多様な役割を持ちますが、腸炎では、増悪因子としての新しい顔が発見されました。

小麦のアレルゲンはアルブミン・グロブリンなどの水溶性タンパク質と、グルテンと呼ばれているグリアジン・グルテニンなどの不溶性タンパク質の2つに大別されます。
 
不要性蛋白とは、なかなか分解されない蛋白物質ですが、こうした物質は、人に病気を起こすことがあります。
 
グリアジンの中でも、ω-5グリアジンが最も頻度の高いアレルゲン物質と考えられ、血液検査が可能で、グリアジン特異IgEの存在の有無を知ることができます。
 
IgEが存在し、アレルギーが準備状態にあっても、実際に病気の症状が出るとは限りません。ここが、IgE検査の解釈の難しさです。私たちは、腸内に入る危険物質を、見分けるために、IgE、IgGなどの免疫グロブリンを作りだします。ですから、これらの物質の産生があっても(検査が陽性でも)、即、病気ではないのです。

特異IgEの産生は、一過性であり、腸内の免疫細胞は、腸内に侵入した食物が危険でないと判断すると、IgEをつくらなくなります。多くの、小児の食物アレルギーが軽快していくのは、こうした免疫の成熟の成果です。正常人では、エネルギー源として必要としている食物に対しては、IgEはつくらなくなっています。いろいろな食べ物と腸内細菌などの共同作用で、腸内免疫の成熟していきます。
 
子どもが食物アレルギーの検査をすると、乳幼児ではIgEが陽性になりやすいです。卵、ミルクに対するIgEは、赤ちゃんが小さい時に作りやすいのですが、年長になると、卵、ミルクに対しては、IgEは消えていきます。しかし、除去食がきつすぎると、こうした自然な免疫の成熟がおきにくくなるようです。アレルギー免疫反応を落とす調節性T細胞が、増加してこないのです。
 
私たちが健康なのは、免疫が働いていて、異物を排除し、かつ、調節性T細胞が、免疫が過剰に起きないような見張りをしているからです。そのどこの部分でも壊れれば、私たちは病気になります。
 
これは、以前に腸内細菌の説明で出した絵です。腸管内で、IgEをつくるかどうか判断するのは、白血球の仲間である樹状細胞です。図では、3個のピンク色の細胞です。黄色い粘膜固有層と呼ばれる部分を、泳ぎ回ります。そして水色の上皮細胞に食い込んで、外側の物質に触れます。水色の上皮細胞の外側(黄色の部分の反対側)は、腸管の内腔部分で、ここに食べものが入ってきます。そして、肛門側に送られていきます。
イメージ 1
この細胞が、卵やミルクに触れて、危険であるかどうかを判断します。危険であると、樹状細胞が判断すると、その情報は、リンパ球に伝えられ、司令塔であるリンパ球が、腸で炎症を起こすように指示をだします。その結果、血管が広がり、腸管内に多種類の白血球が呼び寄せられてしまうので、腸に火が付いた状態の腸炎がおきてきていまいます。こうなると、私たちは、腹痛や下痢や血便でつらい状態になります。
 
そして、表面をおおう構造物である粘膜の上皮細胞(水色の四角の並んだ部分)は、萎縮という状態になります。凹凸のあるざらざらした表面構造から、つるつるした構造に変化します。こうなると、上皮細胞の働きが低下し、腸内に入り込む食物、病原体、腸内細菌など、個々の構造物の鑑別ができなくなっていまいます。私たちの腸は、過剰に反応し、下痢、血便、狭窄などがおきてくるようになります。

今回は、腸炎とビタミンAの関係を検討したネーチャー2011;421;220の論文を紹介します。
小麦でおきる腸炎には、セリアック病とよばれる成人な難治な病気があります。マウスなどのモデル動物に、実験的にセリアック病を発症させ、人間の病気が研究されています。このマウスは、人間の遺伝子を入れられていて、小麦に反応するように運命つけられています。

このマウスは、小麦に反応して炎症物質が腸内で大量にふえてしまうのです。そして、ビタミンAは、腸炎を増悪させる作用があることがわかりました。ビタミンAは、免疫調節に重要な多様な役割を持ちますが、ネーチャー2011年雑誌は、腸炎増悪因子としての、ビタミンAの新しい側面を指摘しました。
 
開発途上国で、ビタミンAが欠乏する乳児では、ワクチン効果が低下することが知られています。その理由は、ビタミンAが不足すると、免疫細胞の寄り付きが悪くなるためと考えられます。
 
普通の人では、パンやうどんを食べてもなんでもありません。正常な人と、セリアック病の人では何が違うのでしょうか?セリアック病になる人では、白血球の表面に出ている蛋白に特徴があります。これは、HLAと呼ばれている蛋白質ですが、この型が、DQ2,DQ8という名の構造をしている人では、セリアック病になりやすくなります。樹状細胞表面も、DQ2,DQ8タイプとなりますので、樹状細胞は、小麦蛋白であるグリアジンを、T細胞に提示してしまいます。この情報をうけたリンパ球は、危険な物質の腸内侵入と判断します。その結果、T細胞が、IL-15,IL-12という物質を増やしTh17細胞が増加し、腸炎がおきてきます。

実は、普通の人でも、食品の蛋白質が入ってくれば多少は反応をするのです。しかし。セリアックでは、これが働かず、炎症を止める仕組みが機能しません。食物アレルギーの人でも、同じような現象が起きています。セリアック病の患者さんでは、IgGの役割が高いこと、一方、食物アレルギーでは、主としてIgEが病気を起こしている点が、違うのです。

セリアック病の患者さんは、白血球のHLAがDQ2,DQ8タイプを持ち、免疫提示に不利な体質を持ちます。次に、セリアック病の患者さんは、腸管でIL-15、IL-12と呼ばれる、炎症を起こす物質を増やしてしまうのです。このIL-15を感じ取る受容体は、樹状細胞が持っています、つまり、腸炎を起こす大事なキーファクターのIL-15は、樹状細胞が産生の鍵を持っています。腸管の樹状細胞は、他の臓器の樹状細胞には見られない、大事な役割をもっています。従来、炎症の調整役は、T細胞の仕事と考えられていたのです。腸には、そこでしか見られない免疫調節のしくみが働いています。

IL-15が増えてしまうと、炎症を止める働きをする調節性T細胞が働かなくなります。その結果、IL-12, IL-23という物質が腸管内で大量にふえてしまい、腸炎が起きます。IL-15の働きは、ビタミンAとの協力作用であるのです。

一方、正常な人では、樹状細胞は、グリアジンをT細胞に提示しないので、IL-15は増えず、IL-12,IL-23も増えません。調節性T細胞が、体中にどこにでも準備できる状態になっていて、過剰な炎症が起きないようなしくみになっています。
 
少し、難しい話になってしまいましたが、食物アレルギー、セリアック病、慢性腸炎などの、現代病の腸炎治療を考える時、多様な免疫の仕組みから理解していきましょう。災害対策の意味でも、治療法の確立が大事です。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック