毎日がハッピーだと、女性は長生きできない?! 日本の疫学研究から

日本人の健康や病気に関する疫学データは、欧米と比べ、学術的研究として歴史が浅く、立ち遅れているのが現状です。疫学を解析できる人は、医療の現場にアプローチできず、臨床家は、疫学的手法や協力者がみつからない事が多いです。
 
そんな日本の研究環境でも、1990年頃から、欧米に追い付こうと、国の研究費でコホート集団を設定し、参加した日本人の病気の発症を追跡する研究がおこなわれています。そのいくつかを紹介します。
 
そんなことわかっているのに・・・と思う人もいるかもしれませんが、医学的事実は、証拠を出すのを求められるので、評価の数値は、とても大事なものです。病気や健康について、人々は思いこみをしていることがあり、間違ったことが常識になっていうことがあります。疫学研究は、そうした誤解を正したり、事実を、再評価することに役立ちます。

毎日を楽しく過ごすことは、健康に良さそうです。その影響は、心血管系に良い効果がもたらしているでしょう。では、メンタルな健康状態は、どの位に心血管系に影響するのでしょう。この研究では、男女の違いに興味深い結果がでました。
 
脳卒中に関しては、男女差が比較的少なく、冠状動脈疾患は、圧倒的に男性に多いことがわかります。しかし、女性では冠状動脈疾患は少ない割には、死亡者が多いこともわかります。冠状動脈疾患が少ないことは、女性のコレステロールを下げるべきかどうかの医学的議論にも関係します。男性のように、冠状動脈疾患予防のためのコレステロール降下剤は、必要ないという考えがでてきます。この研究では、多くの人が参加しました。参加人数が多いと、精度の高い疫学研究をすることができます。

この研究では、参加者たちに、単純質問として、「あなたは楽しく過ごしていますか?」を聞きました。その結果、いくつかの男女差の事実を明らかにしました。女性では、本人の幸福の意識と、病気の発症が必ずしも関係がなかったのです。男性において、毎日を楽しく過ごすことで、生命予後をよくなりましたが。女性では、関連がありませんでした。
 
他の疫学データでは、孫のいる女性は、心血管疾患が多くなるとの研究がありました。毎日を充実して暮らすことは、女性の心臓には、案外、負担になるかもしれません。
 
さて、実際の論文にアプローチしてみましょう。PMID: 19720937 Circulation. 2009 Sep 15;120(11):956-63.
 
日本の前向きコホート研究(個人を年余にわたり追跡する型の研究スタイル)は、Japan Public Health Center-BasedStudy Cohort. Data、略してJPHC)研究と言われるものです。この研究の対象には、2種類のコホート集団参加者が含まれます。コホート集団1では、1990年より、追跡研究が開始された40-59歳の54498人、コホート集団2では、1993年から、追跡研究が開始された40-69歳の62398人です。その後の病気の発症について、12年間、追跡しました。
 
解析が可能であったJPHCコホート研究の対象は、40歳から69歳までの日本人の男女88 175人です。この参加者たちに、単純質問として、「あなたは楽しんでいますか?」を聞きました。この質問以外にも、今までの病気、肥満、喫煙、酒などの嗜好、A型性格かどうかなどを質問しました。(いつも、せかせかとあせっていて目的達成意識が高い性格の人をA型性格という。血液型とは無関係)
 
結果:男性では、とても楽しんでいると答えた人17399人、普通と答えた人21057人、楽しんでいない人は、3633人でした。
 
女性は、とても楽しんでいると答えた人18425人、普通と答えた人23384人、楽しんでいない人は、4277人でした。男女とも、楽しんでいない人は、運動が少なく、メンタルストレスが高い人でした。男性では、楽しんでいる人でも、メンタルストレスが高いと答えた人が、15%いましたが、女性では、9.8%でした。
 
楽しんでいない人たちでは、男女共半数で、メンタルストレスが高いと答えていています。男女とも職種の違いは、楽しみに影響しました。
 
脳卒中は、男性1688人、女性1098人、冠状動脈疾患は、男性522人、女性は、164人でした。
さらに、死亡した人の数は、脳卒中死は、男性502人、女性310人、冠状動脈疾患死は、男性297人、女性115人でした。冠動脈疾患による死亡は、女性は少ない(男性297人、女性115人)です。男性では、楽しんでいると答える人では、死亡が少ないのですが、女性では、そうした傾向が少なく、冠動脈疾患患に至っては、幸せでない人の方が、病気が少なかったです。
 
脳卒中と心血管疾患発生率状況につき、多変量解析をしました。楽しむと答えた人のグループと、楽しみが少ないと答えたグループの人の間での、脳卒中と心血管疾患の発症の頻度を比較しました。
 
楽しむと答えた男性のグループの数値を1と設定すると、楽しみが少ないと答えたグループの男性では、病気の頻度が何倍になるかをみました。
 
楽しみが少ないとしたグループの男性は、1より多い数値となり、脳卒中と心血管疾患の病気が増加しました。その程度は、脳卒中では、1.22 倍(95% 信頼区間l, 1.01ー1.47) 、心血管疾患は、1.23倍 (95% 信頼区間, 1.05ー1.44) でした。脳卒中の死亡は、1.75倍(95%の信頼区間、1.28ー2.38)、冠動脈疾患による死亡は、1.91倍(95%の信頼区間、1.30~2.81)、全心血管疾患による死亡は、1.61倍(95%の信頼区間、1.32~1.96)となりました。
 
 しかし、女性に関しては、男性とは異なり、毎日の楽しみ方と、心血管疾患発生率や死亡状況とに関連がありませんでした。

 
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