食物アレルギー、クローン病など、現代人の腸の病気が起きてくる理由とは?

現代人は胃腸が弱いです。不潔な食物が無くなった、食中毒が減ったなど、食品の衛生状態が良くなってくると、人の胃腸は弱くなります。病原体から腸を守るしくみが成長していかないのです。
 
若い人の胃腸の病気、慢性腸炎などが増えています。すぐ結果を求められる今の競争社会が、繊細な若い人の胃腸に負担をかけています。しかし、人の胃腸の健康がどのように保たれているかは、今でもまだ、よくわかっていません。どの部分の腸の働きの、何が破綻すると、どんな病気になるのかがわかりません。それを解明するには、起きてしまった病気から、いろいろ考えるしかありません。
 
小児期の食物アレルギーは、多くの場合、自然な調節が働き始め、病気は消えていくのですが、ごく一部の人では、慢性の胃腸炎が続き、その結果、好酸球性胃腸炎という病気が起きます。
 
人は、病気を治すための手段として、体内に炎症を起こしますが、起こした炎症は、うまく沈静化しなくてはなりません。それに失敗すると、病気が起きてきます。炎症が、炎症を呼び、症状は慢性化します。腹痛、下痢、血便、体重減少、腸の狭くなる(手術を要する)などの病気が起きてきます。
 
現代人のクローン病、潰瘍性大腸炎などの病気も、慢性炎症によるものです。腸内細菌の種類と量のバランスが乱れて、増えた一部の腸内細菌に過剰に反応して、腸の構造が壊れていくのではないかと推定されています。腸炎は、骨髄移植後に拒絶反応(DVHD)の一部としても起きていきます。
 
骨髄移植後の病気から、健康な人の胃腸の働きのヒントが得られます。臍帯血を用いた移植後腸炎は、クローン病と似た部分があるようです。今日は、臍帯血を用いた移植が、一般の移植拒絶反応とは異なり、むしろ、クローン病に類似した病気を起こしてくることを書きます。食物アレルギーやクローン病のように、最近、増加している腸の病気を理解するために、大事な病気と思えるからです。
 
多くの骨髄移植を手掛けている米国のデータです。N Engl J Med 2011;365:815
骨髄移植では、他人から採った骨髄血を、病気の人に入れますが、この時に骨髄血ではなく、臍帯血を用いる場合があります。周りから骨髄血の提供をうけられない状況の人たちが、この臍帯血による移植となることが多いようです。
 
論文の病院では、104人が臍帯血を用いた移植治療をうけましたが、このうち10%に、慢性腸炎が発症しました。移植後、88日から314日から、下痢を主体とする腸炎が出てきています。血便や腸の狭窄は少なく、水性下痢と体重減少が特徴です。そして、臍帯血移植後腸炎の特徴は、抗生剤にある程度反応してくれるという点です。一般的な拒絶反応(DVHD)との違い、このタイプの慢性腸炎では、免疫抑制剤による治療効果が低いのです。
 
つまり、臍帯血を用いた移植後の腸炎は、より生理的な炎症に違いのではないかと、推定できます。クローン病のように、本来、反応しないタイプの腸内細菌に、過剰に反応するようになっているのはないかが考えられます。
 
臍帯血移植後腸炎では、治療として用いた抗生剤は、バランスを失って増殖した一部の腸内細菌に対して殺菌効果を発揮しているであろうと推定できます。一般的に、健康人の腸内細菌は、正常な胃腸の働きに貢献してくれていますが、それが一歩間違えば、病気を起こす元となります。臍帯血移植後の慢性腸炎に、多く使われる薬は、抗生剤のメトロニダゾール(文末参照)、フルオロキノロンです。
 
一般的な拒絶反応(DVHD)による腸炎では、細胞があちこちで死滅してしまい、腸のひだひだの深い谷の部分の上皮細胞が消失してしまいます。臓器移植後に起きる一般的な拒絶反応は、腸の構造そのものが壊れていくので、最終的には。腸の狭窄や閉そくなどが起きてしまいます。
 
しかし、臍帯血後拒絶反応では、腸炎は軽度です。むしろ、臍帯血移植後腸炎では、腸に好中級が増えたり、肉芽腫などの塊が作られます。腸内で増加する菌に対して、それを抑え込もうとする反応が主体と思われます。
 
難しい話になってしまい恐縮ですが、病気の出方の違いから、腸の健康が維持されている仕組みの理解につながります。健康人と病気の人の腸の反応の違いを知ることで、腸の多様性を知ることができるのです。
私たちの体は、体に内在する微生物との免疫的な監視バランスの結果として、健康が保たれています。そして、必ずしも、外から病原体がやってくるわけではないのです。安全な食の提供について議論する時にも、いろいろな腸のしくみの解明が進む必要があります。
 
 
補遺:2007年8月23日、日本では、抗トリコモナス薬として認可されていたメトロニダゾール(商品名:フラジール内服錠)に「 胃潰瘍・十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリ感染症」の適応が追加されました。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック