統合失調症の発症原因(ネイチャーから)No.1

昨年11月、ネーチャー(世界の一流科学誌)に、統合失調症の特集がありました。
 
統合失調症は、幻覚、幻聴を特徴とし、人との交流や認知機能が難しくなっていく病気です。その変化は、PETなどで、画像的にもとらえることができます。世界中で、人口の約1%が罹患し、進行すると、脳の重量が低下し、脳室が拡大していきます。ネーチャーの記事の内容は、統合失調症の発症原因であり、そこから治療の方向性を示しています。ネーチャーですので、このあたりが今の最高レベルなのだと思いますが、総力をあげた編集なのだと思います。雑誌の表紙も苦悩する人の顔が描かれ、帯には美しい女性の写真がついていて、思わず手にとってしまいました。そこに書かれた統合失調症の最近の潮流に触れます。
 
前回ブログに書きましたが、統合失調症の原因は、脳の神経細胞を結び付けるシナプスなどの機能低下と考えられています。神経細胞の興奮が異常になり、それを制御するしくみがうまく働きません。過剰な興奮は、病気の特徴である幻聴などを生じさせます。脳内ネットワーク構造による調整の破たんと考えられています。
 
脳の前頭前野と呼ばれる部分は、一番最後に、脳の発達が完成する部位であり、思春期をピークに、前頭前野のシナプスが作られていきます。前回のブログに書きましたように、急速に脳のネットワークが作られるこの時期に異常が起きることが、後の統合失調症の発症に結び付くと想定されています。思春期に病気が目立つようになる原因は、それまでは脳の働きが補正、あるいはマスクされていたとしても、思春期になり、さらなる高度な脳機能が求められようになると、隠れていた脳の失調が表面化してくると考えられているようです。
 
思春期から20歳代にかけて、増悪しやすいことから、この時期に、社会的なメンタルストレスがたかまることがきっかけになるようです。男性で思春期発症が高い理由は、男性は、この時期、社会的に高度な協調性が求められるようになるためかもしれません。一方、若い女性は、同じ社会環境にはあるものの、男性や社会からから助けが多くさしのべられやすいのではないかと思います。女性では更年期にも小さなピークがあり、女性を取り巻く環境社会が悪くなるためかもしれません。
 
大脳の表面は、皮質と呼ばれますが、その中の灰白質は、白質よりも色が濃く灰色がかって見えます。この灰白質は、5歳から20歳にかけて、重量が減少していきます。人間など霊長類の前頭前野の研究から、灰白質に神経細胞が多数存在して、その軸策にミエリン鞘がつくられていき、そのためのミエリン鞘の集まる白質の部分が増えていきます。神経同志の連絡網がしっかりと守られるために、この神経細胞から出る軸策のミエリン化(前回のブログの図における水色のさやの部分)の形成が進行していくことが必要です。
 
下図を参照にしてみてください。見にくくてすみません。それぞれ興奮性や抑制性の働きが、何歳までに脳の中で、完成されてくるかをグラフにしたものです。0歳から20歳までの間に、神経細胞や、シナップスの形成が完成されていきます。そのできあがりまでの割合が縦軸の百分率の数値です。何歳までに、どの機能ができあがっていくかの割合で、完全にできあがると、100%と表示されます。生下時すでに、神経細胞は、増殖と分化が完成しています。そして、9割の神経細胞が樹状突起の完成を終えています(黄緑の線)。しかし。生まれた後も、この突起は整理されていきます。続きます。
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