BRCA1遺伝子は、心筋梗塞後に心臓の働きを守るために必須な調節因子である。

昨年のブログで、私たちの遺伝子を守る重要な働きをしているBRCA1遺伝子の話を紹介しました。この遺伝子は、DNAの複製をする時にDNA構造が壊れないように修復に働く遺伝子です。
 
このDNA複製の暴走が起きると、がん細胞となっていきます。BRCA1遺伝子の異常により、その働きが悪いと、乳がん、卵巣がんになりやすくなります。
 
いわゆるがん家系の人は、正常の細胞においても、BRCA1遺伝子異常を持ち合わせています。そのため、家族内に、乳がんの家系が多い人(特に姉妹に乳がんのある人)では、事前にこの遺伝子をチェックすると良いと考えられます(日本では、一般的な診療所でチェックできるまでには至っていません)。将来、がん抑制遺伝子の操作が可能にして、がんの治療に応用できる方向性があります。
 
BRCA1遺伝子は、がんの発症を抑え込むのみならず、細胞の世代交代をスムーズに行うための監視の役割をになっています。そして、細胞障害が大きい場合には、その細胞を体内からすみやかに消去する方向に、働きます。
 
BRCA1遺伝子は、正常細胞の維持に努めるために働きますので、BRCA1遺伝子に異常があると、他の部分の体の細胞にも、働きの異常が起きてくると考えられます。
 
そうしたBRCA1遺伝子の多彩な役割を紹介します。Shukla PCら(カナダ)が、Nat Commun. 2011 Dec 20;2:593. PMID: 22186889に発表した論文を紹介します。
 
題して、BRCA1遺伝子は、心筋梗塞後に心臓の働きを守るために必須な調節因子である。
 
BRCA1遺伝子が心臓の働きを守る、ゴールキーパーの役割を担っている事実を、マウスの実験を用いて証明してみました。マウスの心臓の細胞に、BRCA1遺伝子を消去させます。この遺伝子異常を抱えた状態の心臓に、虚血(血管をしばって、血流を低下させる)させたりなどの、心臓に負担をかける条件付けをすると、心臓に構造的な変化が起き(形が異常になっていき)、心臓の働きが低下してしまいました。つまり、BRCA1遺伝子異常をかかえるマウスでは、心臓の働きが低下ししまい、心不全となっていまうことが証明されました、
 
BRCA1遺伝子異常があると、心臓細胞は消えやすくなり、ポンプとしての心臓の筋肉の働きが保てなくなり、心不全という状態になることを示しました。
 
BRCA1遺伝子の働きの低下は、P53と呼ばれる有名ながん抑制遺伝子の働きにも影響を与えることが証明されています。ひとつの遺伝子異常が、次なる遺伝子異常を呼びこみ、がんが発症しやすくなるのです。
 
p53遺伝子も、DNAが修復不可能な損傷を受けた場合に、アポトーシス(細胞が自ら密やかに消えていく現象)を誘導するための遺伝子として、知られています。がん抑制遺伝子として、最初に注目を浴びた大発見でした。
 
p53遺伝子(ウキベディアより)http://ja.wikipedia.org/wiki/P53%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90
半数以上の悪性腫瘍においてp53遺伝子の変異や欠失が認められる。何らかの原因でp53遺伝子が損傷を受けると、細胞にアポトーシスが誘導されにくくなる。例えば、肺癌ではタバコに含まれるベンゾピレンという発癌物質によりp53遺伝子の変異が起こっている。また、肝細胞癌の原因の1つであるピーナッツに生えるカビが産生するアフラトキシンという物質は、p53遺伝子の249番目の塩基に点変異を多く引き起こす。

p53遺伝子の変異は抗p53抗体の出現と相関がみられる。
日本では抗p53抗体測定は食道癌、大腸癌および乳癌が疑われる際に2007年11月より保険適応が認められた。
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