人が寿命を考える時

健康な人でも、自分はいつ死ぬのかという問題は、かなりの人が考えると思います。特に、歳をとって行くほど、普通は、気になってくるものと思います。

一般のクリニックでの診療現場でも、寿命は時に、話題になります。
 
女性の平均寿命は86歳位で、ひとつのめやすの数値ではあります。

しかし、死のイメージをふくらませる時、他にも想像をするための数値があります。たとえば、ある歳の人を1とすると、自分の年齢ではどの位、死に易いのかを想像するための数値です。
 
米国女性の論文ですが、65-69歳の女性の死亡を1と設定すると、75-79歳の女性の死に易さは3倍の確率、80-84歳では5.7倍、86歳以上では9倍となっています。女性は長寿といえど、85歳以上になると急に死ぬ確率が高くなってしまいます。
 
死を意識することは、生きるということをイメージすることでもありますが、平均寿命だけでなく、こうした数値をイメージするのも、興味深いかと思います。
 
以前に、初潮年齢が低い女性は、生命予後が悪い(長生きしない)という話題を提供しました。この話題に関して、別の情報を提供します。

この論文は、初潮と寿命の関連を検討するだけでなく、どのような身体条件、生活環境が、女性の寿命と関連するかを導くための研究です。
但し、この研究でも、初潮と寿命との関連が論じられています。

65歳以上の女性1031人を15年間追跡して、その死亡年齢と初潮年齢を比較した論文です。つまり、65歳をすぎると、どういうタイプの女性が、早く死に易くなってしまうのかを検討しています。

この研究でも、対象女性が自覚する健康度や病気の保有状況と、寿命との関連がみられています。BMC Public Health. 2010 Jun 15;10:341. PMID: 20546623
 
これはオーストラリア女性の話です。オーストラリアは豊かな先進国ですが、医療環境は日本ほどよくありませんし、貧富の差もあります。この生活環境と女性の寿命の関連研究は、1992年に追跡が始まりました。
 
日本では、オーストラリアより、生活の格差が少なく、平均的な暮らしをして、平均的医療を受けています。肥満の人も少ないです。そのため、日本の疫学研究では、生活格差と寿命の関係をみるのは難しいような気がします。そうした意味では、生活環境の格差の大きい外国の女性疫学から、何かを学べるはずです。
 
女性の長寿に影響を与える因子に、月経期間があります。出産可能年齢(月経のある期間)は、長寿にはつながらないようです

月経期間は、初潮から閉経までですが、初潮が早いと月経期間は長くなります。長期間に女性の健康と死亡を追っていく疫学研究において、子供を多く生むことは、出産のリスクが加味されます。しかし、閉経が遅い女性では、生命予後は悪くないようです。55歳を過ぎてから閉経した女性は、50-54歳で閉経した人より、15年の間に死ぬ確率が低下しています。
 
しかし、初潮の時期を、12歳未満と、12歳以上に分けて、それぞれの群を検討しますと、初潮の時期が早い女性では、65歳過ぎると早く死ぬという数値です。初潮の時期が12歳未満の女性は、12歳以上の女性とくらべ、だいたい1.3倍位の確率で死ぬようです。これは、生活環境などを加味しても、この傾向がでています。
 
初潮の早い女性のかかえる健康リスクに、肥満があります。初潮が早かった成人女性は、肥満傾向にあり、かつ心臓疾患を有する割合が高いことが示されています。この論文の対象女性でも、初潮の時期が12歳未満の人では、BMIが25を超える人が60%にもなり、一方、初潮の時期が12歳以上の人ではBMIが25を超える人は40%と少なくなっていました。
 
早期の初潮そのものが、心血管系にマイナスの影響を持つのかは、まだ確定していないようですが、初潮前にすでに代謝系の異常を抱えているかは、今後の研究で明らかになるかもしれません。
 
特にリスクが高いのは、生まれが小さく、8歳までに体重増加が著しい女性で、早く初潮と迎える傾向があります。細胞が早熟しやすいと、かつ早く老化するようです。Sloboda Dら J Clin Endocrinol Metabol 2007, 92:46-50.
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