エストロゲンは、抗うつ剤SSRIの効果を減少させる!

抗うつ剤のSSRIは、セロトニンという神経伝達物質の作用を増強させるために作られた薬です。しかし、実際の人でおきている複雑なうつ状態は、この薬により、抗うつ作用のみならず、予想できないさまざまな作用が現れます。
 
医師にとって、薬の効果を予期するのは難しいのですが、日本では、昔から、医師は、患者の体質を知っていて、薬をうまく使うことのできる人であると信じられています。しかし、これは希望に過ぎず、多くの場合、薬の効果をあらかじめ予想することはできないのです。
 
特に、抗うつ剤は、元にある病気の影響などあり、薬の作用、副作用がどう出てくるのかの予想は極めて難しいと思います。性ホルモンも、抗うつ剤の効果に影響を与えることがわかっています。今日はこの話題です。Neuropsychopharmacology. 2009 Feb;34(3):555-64.
 
薬の効果をしらべるために動物モデルが使われます。マウスやラットを用いて、脳内の海馬の脳細胞に、いろいろな薬を注入して、動物の行動の変化をみます。抗うつ剤の代表的な評価法として、水泳テストがあり、動物を水につけ、どの位のやる気で泳ぎきるかをみます。泳がせ実験前に、動物脳内に、SSRIを注入して、やる気効果の変化をみます。
 
まず、脳内にセロトニンを注入して、マウスのやる気が高まるかをしらべます。それが証明できたら、セロトニンを長持ちさせる抗うつ剤のSSRIを脳内海馬に入れて、実際に脳内でセロトニンが長持ちするかを調べます。そして動物の泳ぐ時間との関連を調べます。その後に、動物をと殺して、脳内物質を回収して、セロトニンなどの生体物質を計り、薬の影響をみます。
 
抗うつ剤を投与した動物では、セロトニンは長持ちするので、動物はやる気を出して、水中でよく泳げるようになります。しかし、動物でも、実験はそれほど、単純ではなく、動物間の個体差や、同じマウスの系統の違いで、セロトニン濃度とやる気との関連は同じではありません。しばしば、脳内セロトニン濃度と、泳ぐ時間が平行しないものです。
 
理論では、セロトニンの増加は、神経伝達が増強するので、元気がでるはずです。水泳時間とセロトニン濃度との関連の結果はばらつきます。
 
うつ状態の人に、抗うつ剤の投与をして、脳内セロトニンを増やせば、不安やうつの解消につながることを期待されます。しかし、抗うつ剤を実際の人に投与して、自殺や興奮性を高めることがあります。
 
セロトニンがセロトニントランスポーターと結合するのを、どのような機序で、SSRIが押さえるのかについて、脳内の動的なしくみはまだ、解明されていないようです。脳を変容させる薬は、今後も試行錯誤を繰り返えしながら、開発せざると得ないと思います。
 
このブログでは、特に性ホルモンの影響について、脳内への影響を書いています。
 
巷では、女性ホルモン力を高めようとか、その低下は女性の健康を悪化させるという記事にあふれています。
 
効能の確かめられていないサプリの宣伝で、新聞の一面が使われています。今の時代、効果は無くても、大きな副作用がなければ許される時代なのでしょう。選び取る側に責任があると考える時代なのだと思います。
 
さて、女性ホルモンと脳との話題に戻りますが、女性ホルモンは、海馬の脳神経に対する影響力が強いです。女性ホルモンの代表であるエストロゲンが、女性の不安を悪化させ、抗うつ剤の効果を低下させるという話題について、紹介します。
 
雄マウスでは、抗うつ剤SSRIの注入により、セロトニン濃度が上昇しますが、発情期前のメスマウス(エストロゲンが高い時期)では、こうした抗うつ剤のセロトニン増強作用は消失しています。つまり、メスマウスでは、女性ホルモンの影響があると、セロトニン濃度が上昇しにくくなるのです。発情しているマウスでは、セロトニンは早く消失しています。
 
抗うつ剤SSRIの効果をみてみましょう。単純図解では、セロトニンは、セロトニントランスポーターSERTに結合して、再吸収されます。SSRIは、セロトニントランスポーターSERTとセロトニンを結合させない作用があり、その結果、脳内局所でセロトニンが増加します。この話に熟知していない場合は、ウィキペディアの説明図を参考にしてみてください。
 
すべて理解できなくても、最後のセロトニンがどうなるかだけでも理解できれば良いでしょう。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%B8%E6%8A%9E%E7%9A%84%E3%82%BB%E3%83%AD%E3%83%88%E3%83%8B%E3%83%B3%E5%86%8D%E5%8F%96%E3%82%8A%E8%BE%BC%E3%81%BF%E9%98%BB%E5%AE%B3%E8%96%AC
 
セロトニントランスポーターがセロトニンに結合すると、セロトニンが再取り込みされるのですが(セロトニンが減少する)、抗うつ剤SSRIをいれると、セロトニン取り込みが抑えられ、セロトニンが増加した脳内環境となるのです。
 
その結果、神経伝達がゆきわたり、動物は活気がでてきます。しかし、SSRIが、セロトニントランスポーターを、どのような機序で抑え込むのかについては、まだ、十分に解明されていません。
 
SSRI(フロボキセチン)を動物モデルの直接脳内にいれると、脳内セロトニンが長持ちして、動物は水泳能力が増します。そこを確認した後、さらに、エストロゲンをいれると、抗うつ剤で増強した水泳能力が消失してしまうのです。
 
言葉での理解が難しいですが、女性ホルモンは、セロトニン代謝の面からは、セロトニン作用を消失させてしまう物質なので、発情期のマウスの不安は、増強していると言えます。
 
一方、卵巣を取った雌マウスでは、SSRIの効果はでやすくなり、セロトニンは長持ちしています。その後から、エストロゲンを動物にいれると、セロトニンは減りやすくなります。そして、抗うつ剤SSRIの効果がでにくくなります。
 
複雑な話なのですが、エストロゲンの多様性を理解してみてください。もちろん、エストロゲンは動物を元気にする、迷路から抜け出せるようになるとの実験は、いろいろに報告されているようですが、不安物質としての知識も確立されていくでしょう。
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