性ホルモンと脳 No.1

記憶や情動など、さまざまな人の脳の機能を、知りたいと思う時、私たちは、ネットに情報を求めます。しかし、用語に慣れないうちは、理解しがたい解説の壁にぶちあたると思います。ネットには、研究レベルの高度な解説と、根拠があいまいな記事が混在しています。そして、中間的なレベルの解説は、残念ながら少ないと思います。複雑な体の仕組みを知るのは、難しいことなのですが、できるだけ興味を持ち続けたいです。学とみ子も、学びつつこの記事を書いています。専門家でなく、誰でも、ある程度理解できたら、実際の病気の時に役立つかな・・・の視点で書いています。
 
今回も神経のしくみです。私が大事だと思っている、脳における性ホルモンの多様性について書きます。人の脳の複雑なしくみについての理解の参考になればと思います。
 
”性ホルモンは、生体を動かすたんぱく質を合成する重要な物質であり、単に、男性・女性の能力を高めるためのホルモンというわけではない”と、学とみ子は、言ってきました。今回は、脳への性ホルモン作用にも、興味を持ってほしいとの思いで書きます。
 
性ホルモンと脳機能との関係については、エストロゲンに関しての研究が進んでいます。エストロゲンと結合する受容体は、細胞の核内に存在し、受容体と性ホルモンの結合物は、たんぱく質合成に活躍します。エストロゲンを用いた動物実験の結果から、エストロゲンは、人の脳の機能に保護的に働くと考えられています。しかし、それを治療薬として、実際に人に投与したら、どうなるのか?ですが、結論を先に言うと、まあ、散々たる結果だったわけです。この経験を通じて、人々は又、ひとつ学びました。これからも、ニューロサイエンスは進歩し、人の病気の治療に貢献していくはずです。
 
今回は、コーネル大学の神経サイエンス部門からの論文NIH Public Accessの無料論文から情報を得ました。PubMed No.17765731です。http://www.healthy.pair.com/にアクセスして、この番号を入力します。図1を参照、図1には海馬の位置が書いてあります。もっと正確なかたちは、ウィキベデアを参照http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E9%A6%AC_(%E8%84%B3)#.E6.B5.B7.E9.A6.ACください。立体画像による、海馬の存在場所が示されています。
 
エストロゲンが脳にどのように作用するかは、重要で興味ある脳科学の課題であった。この30年位の間に、多くの科学者が、主として動物モデルにおいて、研究成果をつみかさねてきた。その突破口となったのが、1980年後半の、脳の性差に関する画期的な発見であった。歯状回(海馬の周辺の脳部分)の顆粒細胞(神経細胞の一種)は、オスのマウスにおいて数が多く、この脳部分が、性ホルモンのターゲットになっていることがわかったのである。脳の重要な神経伝達物質である、グルタミン酸や、GABA作動性の神経の伝達に、性ホルモンは影響を与えていた。この脳部分の神経細胞の多いオスは、有利であり、それがオスの空間認識の優秀性などに関連していると考えられた。
 
人においても、歯状回と海馬は、性ホルモンの脳内ターゲットがある。人がストレスに対応できる強さや処理能力は、歯状回と海馬・扁桃の協力した作業と関連している。異常と言えるほど高度に発達してしまった人の脳の機能を調節するために、これらの脳部分は重要な任務を持つ。一般的に、性ホルモンは、神経機能を保護する役割がある。歯状回は、海馬と協力的に認知/情動機能(cognition, mood)を司る。
イメージ 1
イメージ 2
  左図1
     
 
 
      右図2
 
 
 
 
 
 
 
 
人の脳構造は、胎児期に構築されて、生後は若干の再構築が行われるのみと考えられてきた。この脳構築の知識は、セントラルドグマとして正しいが、従来考えられていた事実より、生後もダイナミックに、脳は再構築(neurogenesis, synaptic remodelingと呼ばれる) を繰り返すことがわかってきた。歯状回に存在する顆粒細胞と呼ばれる神経細胞は、異なる種類の神経細胞である錐体細胞(Pyramidal cell)に情報を送る。図2を参考にしてほしい。図2には、3種類の色違いの脳内神経細胞を示したが、もちろん、実際の脳は、こんなスカスカ構造ではない。機能の異なる神経細胞は、あらゆる細胞表面を利用して、お互いに突起を出して、からみあっている。こうした神経細胞が、シナップスを介して情報交換をすることで、記憶が維持され、情動やストレス制御などが行われる。歯状回、海馬の神経細胞は、連絡網の中心となっている。これらの細胞のおかげで、私たちは、一旦、ストレスを乗り越った後は、その経験を生かして、次のストレス克服に役立てることができる。そして、人は一段と強くなっていく。イヤな経験を素早く忘れるなどのストレス克服は、このニューロン同志が調整し、記憶し合うおかげである。論文には書いていないが、海馬様、ありがとうと言いたい・・。
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