若返り物質を求めての苦しい旅 筋力アップとそのための犠牲

世界中で、若がえり物質探しが続いています。
 
若がえり物質としては、性ホルモンがまず思い浮かびます。広告では、女性ホルモンを増やす方法を論じた雑誌が売れていますが、このブログでは、人の体に対する性ホルモンの影響の複雑性について情報提供をしてきました。
 
ネット記事、新聞広告にあふれる若がえり物質の多くは、その効果について、臨床試験は行っていません。
臨床試験を合格するためには、偽薬との比較試験に勝たなければなりません。
このためには、かなり強力な効果を持つことが必要です。人は、偽薬でも容易にだまされます。効いてるみたいの感覚だけでも、心は十分に救われます。
 
若がえりに有効であろう性ホルモンですが、当然、日本では治療として許可されていませんし、一般的な認識でも、ホルモンは怖いと考える人が多いと思います。
 
しかし、外国では、若がえり効果を求めて、性ホルモンや成長ホルモンについて、積極的な臨床研究が続けられています。臨床試験では、日本人が恐がる強い薬が用いられますが、偽薬との比較試験に勝つためには、強い効果が必要なのです。
 
効果がなくても、副作用がなければよいというのが、日本人的な考え方ですが、外国では、効果がでなければだめで、効果があれば、多少の副作用は見逃すという考え方のようです。
 
少し、古くなりましたが2002年の、性ホルモンと成長ホルモンの若返り効果を、偽薬との比較試験で証明した論文を紹介します。
 
男性ホルモンとして、テストステロン、女性ホルモンとして、エストロゲンと黄体ホルモン、及びその偽薬が投与されています。
 
さらにそれに加えて成長ホルモンが追加されています。成長ホルモンは、思春期になると下垂体前葉から活発にでるホルモンで、体の成熟と身長を伸ばすホルモンです。
 
今回の臨床試験の投与期間は、26週でした。
 
この論文の結論は、性ホルモンと成長ホルモンの投与により、男性では筋力アップ、心肺機能アップが証明できました。
しかし、男性では糖尿病が多く発症しました。女性はこうした副作用は少なかったのですが、浮腫がでて、筋力アップや心肺機能アップ効果は、いまひとつでした。
 
性ホルモンや若がえり薬による男女への効果の違いを知ることは、興味深いものです。
男性の場合、若がえり薬で、体力をアップさせると、関節痛や糖尿病がでたりしました。男性が強くあるためには、体の他の機能を犠牲にするという宿命的な構造が伺えます。
 
一方、女性では、筋力や心肺には、若がえり薬の効果は今ひとつで、GHを投与された人の4割の人に浮腫がみられるものの、糖尿病の発症などはみられないようです。
 
以下が論文です。

JAMA. 2002;288(18):2282-92. PMID: 12425705
加齢した人にホルモン投与をすると、体重を増やし、脂肪を減少させることができます。今回の試験では、加齢した人に、成長ホルモン(GH)と性ホルモン、及びその偽薬を投与して、体の持久力や強さへの増強作用に対する影響を比較しました。
 
米国に居住する健康で歩行可能な65~88歳の一般女性(n = 57)と、一般男性(n = 74)を対象に、ホルモン投与26週間の臨床試験を、無作為二重盲検プラセボ対照法で、行いました。
 
成長ホルモンGHを、皮下に3回/週投与開始しましたが、開始量の30μ
g/kgは、副作用が多かったため20μg/kgに減らしました。
 
これに加えて、男性にテストステロン、女性にエストラジオールと黄体ホルモンを投与しました。
参加者は無作為化され、26週間、薬剤が投与されました。
 
男性ではエナント酸テストステロンの100mgの隔週筋肉注射)群; GH +テストステロン群; テストステロン+偽薬GH群; 共に実薬群の4群です。

女性では、毎月、エストラジオール貼り薬28日間と、後半10日間、経口の黄体ホルモンの併用をしました。
 
治療前後で、体重、レントゲン解析装置を用いたやせ指数、機器を用いて測定した筋力、トレッドミルによる心肺機能測定値(酸素取り込み最大値(VO(2)最大)の変化をしらべ、かつ、副作用もみました。
 
結果:
女性では、痩せ指数が改善し、脂肪成分が減少しました。
指数の変化は、
コントロールの偽薬群0.4kg、
HRT群+偽GH群1.2kg、
GH群+偽性ホルモン群1.0kg
GH+HRT共に実薬群では、2.1kgとなりました。
 
男性においても、同様の変化がありました。
指数の変化は、
コントロールの偽薬群 0.1kg、
テストステロン群+偽GH群 1.4kg、
GH群+偽性ホルモン群 3.1kg
GH+テストステロン群 4.3kg となりました。
 
女性の筋力の増加は、4群間の差は小さく、HRT群、GH + HRT群でわずかに増加しました。

男性の筋力増加は、GH +テストステロン群は、13.5kgで有意に増加しました。
女性の心肺機能最大VO(2)値は、GH群と、GH+ HRT(P =.06)群で少し増えました。
男性の最大VO(2)値は、GH群と、GH+テストステロン群で、増強しました。
副作用の浮腫の頻度は、女性に多く生じ、GH群に39%、GH+ HRT群に38%の頻度で発現しました。
 
男性では、GH+テストステロン群の32%に、手根管徴候がありました。男性の関節痛はGH群の41%にみられました。糖尿病またはブドウ糖不耐性は、 GHを受けた男性の18人、GHを受けていない男性7人に起こりました。
 
結論:
この研究において、加齢した健康人では、性ホルモンと成長ホルモンは、体脂肪を減らし、筋力アップと心肺機能の増強効果を発揮しました。しかし、女性にはその効果がでにくい結果でした。重要な副作用として、男性では、耐糖能の低下(糖尿病になる)があり、年配者へのホルモン投与は、慎重にすべきとの結果になりました。
 
ブドウ糖不耐性とは、インスリンが存在してもその効果が低下し高血糖が起きることを言います。
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