慢性肺疾患を持つ女性における女性ホルモンの影響

慢性肺疾患を持つ女性における女性ホルモンの影響BMC Womens Health. 2011 Jun 3;11:24.

女性は、呼吸器の病気が起きやすいことを紹介してきました。喫煙が、女性でまだまだ男性より少ないことを考えると、女性の肺の病気の多さは、驚くべきことです。
 
女性は炎症が起きやすく、病原体の排除には好都合ですが、一方では、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)のような炎症性肺疾患が悪化しやすいです。これらの病気は、致死的なため、死亡率は、女性で増加します。
 
この論文は、カナダのデータですが、白人では、嚢胞性線維症CFが多くなります。嚢胞性線維症(CF)は、西洋人に多い遺伝的な病気であるため、不妊治療のため人工授精を受けようとするカップルでは、この遺伝子異常を持つかどうかをチェックすべきとの学会勧告が出されています。

この病気では、気道の分泌が亢進していても(痰が多くても)殺菌能が悪く、何度も細菌感染を繰り返します。そして、致死的な緑膿菌の慢性感染となっています。
 
死亡率の高さは、30年間の観察で、女性は常に男性より高く、1989年には大きく水があきました。その後、女性の生存率も上昇したため、男女差は減少しています。
実際の平均死亡年齢は、1977年男性28歳、女性20歳、1989年では、男性36歳女性27歳、2001年になると、男性38歳。女性34歳という数値が得られています。
 
喫煙の影響は男女共にうけるものの、女性は、喫煙の影響を受けやすく、そこにも女性ホルモンの影響があるようです。
 
興味あることに、病気のない健康女性では、月経周期に関係なく肺機能が保たれますが、上記のような病気がある女性患者では、月経のサイクルの間、肺機能が低下してしまうことが疫学研究で示されています。エストラジオールと黄体ホルモンが気道を縮めてしまうことに関与するようです。

女性ホルモンの増減を感じる部分は、受容体と呼ばれ、αとβがあることは、以前のブログでも紹介しています。エストロゲン及びその受容体は、胎児の肺が出来上がる時に重要で、これらの物質の相互作用で、肺は作られていきます。
 
αは肺胞構造を、βは肺間質(肺胞以外の部分)をつくっていきます。α受容体は、炎症に対して抑える働きをしていますが、βにはこうした抗炎症作用はありません。しかし、実際の働きは、それほど簡単に区別されているわけではなく、生体内の受容体は、相互に助け合い、時に、抑えあいます。

喫煙女性では、タバコの有害物質を代謝していく能力がエストロゲンによって阻害され、さらに、エストロゲンから生じる有毒な中間代謝物が生成しやすくなります。その結果、女性で、タバコによる酸化ストレスが高まります。エストロゲンの1種であるエストラジオールは、免疫の遷延化がおきやすいTH2表現型の方へ適応可能な免疫を左右に動かします。
 
このエストラジオールは、気道上皮細胞のMUC5B遺伝子の働きを強めます(痰が多くでる)。 黄体ホルモンは、気道炎症を増やすことに加担します。

女性ホルモンのサイクルは、以下のようですが、月経周期で大きく変化し、個人差が大きなものです。又、その働きは、単に血液の数値だけでは、評価できません。診療の外来で単発で女性ホルモンを測っても、それは大きく変動する数値の幅の中に入るもので、測定自体はたいした意味はありませんので、一喜一憂する必要はありません月経周期が女性なら、ホルモンは正常にサイクルしています。

女性ホルモンのサイクル
               17β-エストラジオール (nM)           プロゲステロン (nM)
ろ胞期 1-13 日目     ~0.15-0.37 (40-100 pg/ml)              ~0.95 (300 pg/ml)
排卵期 14日目        ~0.37-1.47 (100-400 pg/ml)             ~0.95-9.54 (300-3000 pg/ml)
黄体期15-28 日目      ~0.15-0.92 (40-250 pg/ml)             ~9.54-31.81 (3000-10,000 pg/ml)
 
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