そううつ病でみられる遺伝子異常 男女で発症機序が異なるのか?真相は今後に!


性ホルモンが含まれるステロイドは、いろいろな遺伝子に影響を与えますね。治療で使われたステロイドにより、肥満したり、糖尿病になったり、骨、筋肉、皮膚が弱くなったり、感染症になりやすくなったりします。だから、人々は、この薬を使うのに慎重になるのでしたね。
 
ステロイドは、多数の遺伝子に影響を与えることができるので、こうした現象が起きてくるのです。体内に入ったステロイドは、受容体と結合して、核のDNAの、多数の部分に結合します。こうした働きをする物質を、転写因子と呼びます。つまり、ステロイドは、多くの遺伝子に影響を与え、体内蛋白に異常をきたします。エストロゲンは、自ら働くだけでなく、他の蛋白の働きを、遺伝子レベルで高めたり、弱めたりできるのです。
 
大うつ病は、男性と比較すると女性で約2倍です。 双極性障害、うつ状態も、女性で多いようです。 女性は月経に伴うホルモンの変動により、気分の変化が起きると考えられています。

多種多様な遺伝子の中は、エストロゲン受容体複合物が、結合できる部分を持ちます。そううつ病やうつ病の人で、エストロゲン結合部位の構造を丁寧に調べた研究を紹介します。PLoS One. 2012;7(2):e32304..
PMID: 22389694

すでに過去に、いろいろな遺伝子ごとに、その遺伝子周囲にエストロゲン結合部分をもつかどうかが研究されており、その塩基の並びの結果が公表されています。
 
正常の人の遺伝子の並びとくらべて、病気のある人では、その部分の塩基の種類 (アデニン、グアニン、チミン、シトシンのうちどれか) が変化が起きているのかを調べていきます。
 
エストロゲン結合部分の塩基の種類をひとつひとつを調べて、スニップと呼ばれる1塩基置換(ヌクレオチド多形性)を見つけていきます。病気の人だけに高頻度で見られる塩基変化があるか、統計的な計算を用いて、遺伝子と病気発症の関連を調べます。
 
かつて、エストロゲン受容体α、β遺伝子そのものを調べた研究では、うつ、そううつ病では、はっきりした遺伝子変化は見いだせませんでした。今回は、エストロゲン受容体遺伝子そのものでなく、他の遺伝子の近傍で、エストロゲンが結合部位の1塩基置換の有無を、病気のある人と、正常人を比較して調べたのです。
 
研究の結果、エストロゲン複合物の結合部分1000-3000ヶ所位のうち、rs6023059と呼ばれる部分に、1塩基置換がおきていると、女性のそううつ病がおきやすくなることがわかりました。
 
男性そううつ病では、この1塩基置換とそううつ病が関連しませんでした。
 
この置換は、どの遺伝子の近くでおきているかというと、細胞の活動に大事な働きをおこす酵素を作り出す遺伝子のそばにありました。トランスグルタミナーゼ2(TGM2)と呼ばれる酵素の遺伝暗号の下流に置かれる一つのヌクレオチド多形性(スニップ)でした。
 
トランスグルタミナーゼ2は、多くの種類の細胞にある蛋白で、細胞の働きのいろいろな部分に影響を与えます。トランスグルタミナーゼ2は、細胞のカルシウム代謝に関係し、細胞の骨格、アポトーシス、分化、接着などに関係します。TGM2蛋白は、海馬の神経細胞アポトシースと関連するのではないかの説があります。
 
エストロゲンが増減しても、正常女性では、調節が働き、気分不快が避けられますが、遺伝子異常があると、エストロゲンの増減に反応して不安が高まったりして、そううつ状態になりやすくなるのではないかと、この論文は推論しています。

すなわち、この論文では、エストロゲン・レベルの変化に対応しきれないことが、心身の調節の低下と関連する仮説を提唱しています。
 
エストロゲンは、転写因子以外にも、脳内神経物質としても、働きますので、話はとても複雑になるであろうと思います。
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