初潮、月経、妊娠、出産、閉経時の女性ホルモンの変動と関係して、頭痛は起こる?

頭痛は多くの女性を悩ませる症状です。初潮、月経、妊娠、出産、閉経と女性ホルモンの変動に関係して、あるいは恐らく無関係に、女性では頭痛を経験することが多いようです。
 
頭痛は、女性の専売特許といわれています。

今回は、女性ホルモンと頭痛について、考えてみましょう。
 
古くから、月経と頭痛の問題は医学的議論が盛んでした。しかし、その関連に関しての解明は遅れています。エストロゲン、プロゲステロンの、脳実質や血管に対する生理学的な機序が解明されても、実際の女性の訴えは、多種多様です。
 
表現する女性側のコメントは一様でなく、ある人は頭痛は、月経や妊娠に強く関連すると言い、別の人では、影響ないとの答えがかえってきます。その結果、女性ホルモンの影響を画一的に評価できず、解明を難しくしています。
 
性ホルモンの変動を、体がどのように感じ取るかは、個人差で大きく変わってしまうようです。つまり、気持ちの持ち方や性格の影響が大きいのですが、エストロゲンの細胞への作用も、個人ごとに多様だからでしょう。
 
更年期の女性が、ホルモン補充療法を始めてから、頭痛から開放されたという話を聞く一方で、ホルモン補充を始めたら頭痛がひどくなった、ムカムカがひどくてとても続けられないとの訴える人などもいて、その評価はさまざまです。
 
論文 その1
頭痛と性ホルモンの関連の論文を紹介します。
米国の研究者の論文ですので、対照となっている女性たちは、米国人です。以下に、頭痛の頻度の数値が述べられていますが、印象として、外国の論文の頭痛の頻度は、日本の女性の頭痛の頻度と比べて多いようです。但し、日本でも、女性の社会進出や、知識の普及により、日本と米国との頭痛の違いが減少してきて行きます。
 
日本では、産後うつ病、月経前症候群などの症状を訴える人は、米国より少ないですが、近年、急に増加している状況です。昨今、女性たちが、より自分たちの症状を意識するようになったことが一因か?もしれません
 
PubMed 11139745 Rev Neurol (Paris). 2000;156 Suppl 4:4S30-41.
 
一部の人では、小児期から頭痛を訴えます。初潮をむかえる前の年齢では、男女とも100人のうち4名位に頭痛症状があります。やがて、性ホルモンの変動が起き。女性が初潮を迎える頃から、女性に頭痛の訴えが多くなり、思春期の女子では頻度が上昇し、100人当たり33名位の女子が頭痛を訴えていると考えられます。
 
成人になると、女性では、100人当たり16名に対し、男性では100人当たり6名との数値です。
 
頭痛は、月経との関連が深く、月経前から月経期間まで持ち越す頭痛を訴える人が多いようです。
 
頭痛は、妊娠との関連が深く、特に妊娠初期の三分の1で、頭痛が多く、残り三分の二の妊娠期間で、頭痛の訴えは少なくなります。
 
閉経に伴い、再度、頭痛を訴えるようになることも多く、月経サイクルのある世代では、ピルの内服中におきやすくなります。つまり、人工的なホルモンの補充により、頭痛を誘発するようです。
 
こうした事実から予想できることは、エストロゲンレベルが高いから、低いからが頭痛の原因となるわけでないであろうということです。むしろ、ホルモンレベルが増えたり減ったりの変化が、体内調節物質の均衡をくずし、それが、頭痛を起こすと考えられます。なぜなら、元々、人の体は、体内物質の増減に応じて反応する生体環境にあるからです。
 
例えば、月経の機序として、下垂体からろ胞刺激ホルモンが急上昇し、引き続き急に下降することが刺激となり、排卵がおこるといった具合です。このように、性ホルモンが大きく増減するので、脳内の血管調整がついていけず、血管拡張がおこり、女性たちに、頭痛が起きると推論があります。
 
 
論文その2 PuMed14979877 Headache. 2004 Jan;44(1):2-7.
米国アトランタの頭痛センターに通院中の女性たち504人の、月経、妊娠、閉経の時にまつわる頭痛のデータを紹介します。
 
頭痛センターの通院中の女性に、月経、妊娠、閉経と、頭痛との関連を問診しました。頭痛センターに通院中の女性のうち、68.7%に月経前と頭痛に関連があると答えています。29%は、閉経に伴って症状があると答えています。24.4%に、ピルを飲むと頭痛がおきると答えています。
 
64.9%の女性は、月経に関連する頭痛と、関連のない頭痛があると言います。3.4%は、月経にのみ限定して頭痛が起きると言います。
 
女性たちの61.3%は、妊娠を経験しています。
このうち、79.6%の女性が、妊娠により頭痛は変化したと答えています。残り29.4%は、頭痛と妊娠とは関連がなかったと答えました。
79.6%の妊娠中の頭痛を報告した女性のうち、妊娠時に頭痛は悪くなったのは34%、軽くなったのは17.8%、27.8%は変わらなかったと答えています。
 
全体の女性のうち、64%の人がピルをのんで、頭痛が悪くなったと答えました。
 
頭痛に前兆(頭痛の前にちかちかする、吐き気がしたりなどする症状のこと)のある人のほうが、ピルなどの人工的なホルモンに対する反応は少ないという結果が得られました。しかし、前兆のある人のほうが、自然なホルモン増加である妊娠に対しては、頭痛は悪くなると答えた人が多かったです。
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