巷では、女性ホルモン力などと、もてはやされていますが・・・。歴史に興味を持とう

以前、若返り物質の話題を提供しました。男性ホルモンは、老人の筋力をアップし、運動機能が改善したという話でしたが、マイナスの見返りも相当に強いことも書きました。

体に作用する物質は、短期でなく長期的な影響が大事です。一部の薬剤などは、飲み続けると、細胞表面の薬剤を感じる部分が反応しなくなる(内包化という現象)が、あります。
つまり、良かれとおもって治療に使っているうちに、薬剤の効果が変わってしまうのです。これは、一種の体の防御反応といえるものですが、その出方に個人差が大きいです。
 
例えば、喘息の治療薬である気管支拡張剤は、縮んだ気管支を広げることを目的に使用されます。
医師は、気管支拡張剤の処方の時に薬を使いすぎないように注意をします。
使用が多いと薬剤が効かないだけでなく、逆の作用がおきて、かえって呼吸が苦しくなってしまう人がいるのです。
遺伝子の型と関連して、この現象がでやすい人がいます。

気管支拡張剤が効かなくなる現象は、客観的に証明されています。すなわち、喘息の子どもに毎日、気管支拡張剤を使用していると、4週間目には、薬の作用が低下する現象が観察できます。
 
抗ヒスタミン剤も、ステロイドも使い続けると、その効果は薄れます。ステロイドを皮膚に塗って、治ったようでも、止めたら又出た!となります、実は、ステロイドの作用を受け入れないために皮膚が変化したのです。
 
このブログでは、女性ホルモンの効果について、考察を続けてきました。女性ホルモンも、若返りの物質としての期待がかかるものです。

その効果は圧倒的である一面、長期的にはマイナスが多いです。
 
この50年、マウスやサルを用いた実験が繰り返されました。
エストロゲンの短期投与はメスの知能を改善させます。
そして、人間に応用しようと臨床研究が続けられました。そして、今も、欧米では、閉経後のホルモンの補充は、かなりの数の更年期女性で行われてきています。
 
女性ホルモン、特に、エストロゲンは、神経細胞の伝達物質で、動物実験で脳の改善機能があります。
しかし、人では、エストロゲンの脳への効果についての証明が困難です。
この50年の、疑問解決の取り組みについて、ご紹介しましょう。
 
胎児において、脳の神経細胞の構造が作られる時に、性ホルモンが働きます。それが男女の違いを生んでいきます。

動物であれば、親の性ホルモンを変化させることで、生まれた子供の脳への影響を調べることができます。
例えば、妊娠マウスにアンドロゲン(男性ホルモン)を投与すると、生まれたメスサルは、オスとメスの中間の行動を示すようになるそうです。
 
もちろん、人では、こうした操作は不可能ですが、いろいろな事例や病気から、エストロゲンと脳との関連が推定されてきました。

1950年以後からでている論文をさぐりながら、考察がされてきた内容をご紹介します。
 
病気により生ホルモンが異常になると、患者さんの脳にどのような影響がでるかを見る研究法があります。
胎児期の性ホルモンの異常が起きてしまう子どもがいます。
性ホルモンの影響をみることができる代表的な病気に、副腎過形成症候群があります。これは、遺伝病で21ハイドロゲナーゼという酵素が作れない病気です。
この異常をもつ女児は、エストロゲンが利用できず、アンドロゲンが脳をつくります。生まれてからは、空間認識が優れるものの、言語能力はむしろ劣る状態になりやすいことが観察できます。

ターナー症候群では、性染色体がXOの女児ですが、この子どもを7歳の時に、エストロゲンと偽薬を投与して、脳への影響を比較した研究があります。エストロゲン投与群の方が、子どもの言語能力が改善したそうです。
 
正常女性において、月経周期を観察しながら、エストロゲンと脳の関連を調べたりします。
エストロゲンの高い時は、女性の特徴である言語能力が高まるようです。一方、エストロゲンが低い時は、空間認識が高まるとする論文があります。
実際には、この変化は個人差があり、一般的に女性が気づくほどは顕著にはならないであろうとも書かれています。
 
1950年から70年にかけては、性ホルモンが若返りの期待薬として、かなりの数の臨床研究がなされました。その結果は、効果があるとするもの、効果がないとするもの、とばらつきました。

たとえば、1952年の偽薬との比較試験で、75歳以上の女性のエストロゲン投与群において、言語能力の改善はないものの、視覚空間認識は改善したとこ報告があります。

その後、1990年代半ばより開始された米国のWHI研究の結果報告により、閉経後のホルモン補充療法の副作用が無視できないと結論されたのをうけて、若返り効果としてのエストロゲンは、かなり後退したと思います。
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