IgEというのは、免疫の働きがうまく進まない(免疫失調)のマーカーでもあるのです。

お子さんのアレルギーの程度が知りたくて、血液中のIgEを測ったことのあるお母様は、結構多いのではないでしょうか?その時の、医師の説明は、納得のいくものだったでしょうか?
 
花粉症がないのに、杉に対するIgEが出ていると告げられた人はいませんか?

あるいは、卵を食べると皮膚が赤くなる乳児をお持ちのお母さんが、IgE反応が陽性と予想していたのに、卵に反応が陰性、ダニだけIgE陽性と言われて、めんくらった経験はありませんか?
 
上の子のアトピー性皮膚炎は、下の子のアトピー性皮膚炎より軽いのに、IgEは上の子の方がすーと高いと言われたとの話しも、時々聞きますね。
 
そもそもIgEとは、何なのでしょうか?もちろん、IgEはアレルギーの程度を測るマーカーであることは確かですし、日本の石坂博士が50年前に発見したことを知っているお母様は多いでしょう。
 
実は、IgEというのは、免疫の働きがうまく進まない(免疫失調)のマーカーでもあるのです。その場合は、アレルギーの病気とは必ずしも関係がなく、IgEが上昇してきます。今日は、IgEについての理解を少し進めましょう。
 
免疫の調整を狂わせる最大の病気は何?という質問に、何をイメージしますか?そうです。答えはエイズHIV感染症です。HIV感染症では、IgEが上昇しますが、アレルギーの病気の有無とは関連しません。喘息やアトピー性皮膚炎だけで、上昇するわけではないのです。
 
HIV感染症の人では、CD4とよばれるリンパ球がウイルスに感染すると、この細胞は、毎日すごい数で死滅していきます。HIV感染症にかかってまもなくは、免疫が活発となり、ウイルスがとりついたCD4を殺そうとがんばります。
 
この時、CD4リンパ球は、免疫の司令塔として働きますが、CD4リンパ球は、免疫反応を効率よく維持するために、過剰な免疫反応にはならないように、抑えの役割があります。
 
HIV感染症では、この大事なCD4リンパ球が消えていき、司令塔がなくなります。すると、HIV感染症では、免疫グロブリンに対する調節役がいなくなってしまうので、IgEは上昇してしまいます。
 
HIV感染症では、IgEはアレルギーの検査ではなく、HIV感染症の重症度を反映するマーカーとなります。成人HIV感染症と同様に、乳幼児のHIV感染症でも、IgEが上昇することが知られています。
 
これに関する南アフリカケープタウンにある赤十字病院からの論文を紹介します。

pediatr allergy Immunol 2002;13:328
赤十字病院に肺炎で入院した122人の乳幼児において、IgEと免疫状態を調べました。乳児の月齢は3-20か月、月齢の中間値は、8か月です。HIV感染症あり81人、HIV感染症なしが41人です。
CD4リンパ球は、HIV感染症では、減少してしまう細胞ですが、このCD4リンパ球が、今回のHIV有り群600、HIV無群で1900です。
 
CD4/CD8 については、HIV感染症では、分母のCD4リンパ球の数が減少して、CD8リンパ球との比が1を切ってくると進行した状態と考えられます。今回のCD4/CD8は、HIV感染有り群0.3、無群2です。

この数値から推定できるように、今回のHIV感染症の乳幼児は、かなり厳しい免疫低下の状態であると言えます。つまり、CD4リンパ球はすでにかなり壊されてしまっている状態です。11人の子供が、今回の肺炎を契機に死亡しました。肺炎の原因は、細菌12人、結核8人です。
 
この両群において、IgEは、HIV感染症83 IU/L、HIV無群29 IU/Lの数値が得られており、明らかにHIV感染症のある乳幼児で高くなっています。
 
このHIV感染症のある乳児では、かなり免疫低下状態にあるものの、まだIgEは過剰に産生しています。HIV感染症では、免疫反応のストップが効かずに、IgEの産生が亢進しているのです。

巷で、免疫活性物質などと謳った健康食品がありますが、実は免疫活性物質とは、生体に危険な物質でもあるわけです。 正常な人では、過剰な免疫反応が起きないように、CD4リンパ球はストップをかけています。IgE抗体は、元をただせば、体を守る役割を担うために進化してきたものです。
 
このように考えると、IgEの数値に、一喜一憂してもしかたないことがわかります。アレルギーは、確かに悩ましいものですが、IgEの役割やその意味をもう一度、見つめ直してみましょう。この論文の不幸な子どもたちは、必死でIgEをつくりながら、エイズとたたかっているような気もします。
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