新生児は、無菌の環境から、多様な病原体がうごめく不潔な環境へと放り出されてしまう。

生まれた瞬間から、赤ちゃんに起こる劇的な変化は、何か?と聞かれたら、多くの人は、おぎゃーと息が始まる呼吸の変化をあげるでしょう。

もちろん、これは大きな変化ですが、これだけではなく、もうひとつ、大事な大きな変化が起きます。それは、赤ちゃんは、無菌の環境から、多様な病原体がうごめく不潔な環境へと放り出されてしまうことです。

赤ちゃんは、生まれ落ちた時から、さまざまな菌をしょいこみますが、それが重大な病気になることがあり、B群溶連菌による髄膜炎、クラミジア肺炎などがあります。
新生児が、産道で体内に持ち込んだ菌が血液、肺などで増えてしまうのです。
 
胎児は、母親の細胞という異種の多数の抗原に包まれながら、胎内で成長しますが、母親の細胞に対し、免疫反応を起こさないように調整されて(抑えられて)います。
その赤ちゃんが、母親の産道で多様な菌に遭遇するのです。
帝王切開の赤ちゃんは、とりあげた人の手の菌にもふれることになります。
 
以前のブログに、赤ちゃんは産道で飲み込んだ菌により腸内細菌相が形成されると言うことを紹介しました。経膣分娩で生まれた赤ちゃんの方が、アレルギー反応が起こりにくいなどとのデータも紹介しました。
 
新生児は、母親が持っている大人の抵抗力を、ある程度、さずかって生まれてきますので、風邪などに、抵抗力を発揮したりすることがあります。兄弟が風邪をひいても、赤ちゃんにうつらなかったという話もあります。
しかし、赤ちゃんに抵抗力がある一方で、時には致死的な経過をとることもあります。特に、生後1か月の乳児の発熱は、重大です。
 
赤ちゃんは、いろいろ体に触れるもの、吸い込むもの、食べるものに、さまざまな反応を示します。動物は、自然免疫と呼ばれる種類の能力があり、これは、動物に生まれながらに備わった能力で、多種多様な病原体を検出して排除する能力です。
 
生後、赤ちゃんの体には、いろいろな反応や変化がおきます。
 
下痢したり、皮膚が赤くなったりですが、多くは、その原因を特定するのは難しいです。
皮膚が赤くなっても、その原因がわからないまま治ってしまうからです。
原因がわからないと言って悩むお母様もしますが、原因がわからないものは、じっくり見守ってください。医師にもわらないことが多いです。
 
時には、皮膚の赤みの原因に、母乳やミルク、離乳食が疑わしい場合がありますが、断定はむずかしいです。
ミルクや母乳が怪しい場合でも、症状が軽ければ、ミルクや母乳を止める必要はありません。

赤ちゃんは、いつでも、さまざまなものに反応しているのです。

つるりすべすべの皮膚をもつ他の赤ちゃんと、比べる必要はありません。
一人ひとりが持ち合わせた反応と能力が、こうした違いを生むのです。
 
赤ちゃんの免疫能力を検査するのは、難しいのですが、そこに挑戦した最近の論文を紹介します。
オランダ発、Pediatr Allergy Immunol 2012;23:65 belderbosらによる

1か月の赤ちゃんの免疫機能を、詳細に検討しています。
1か月の赤ちゃんから採血して、血液のNK細胞、好中球数、好酸球数などをしらべ、血液細胞を、いろいろな種類の刺激物質(トールライクレセプターTLR2,3,4,7)で刺激して、それに反応できるかどうかを調べています。
 
トールライクレセプターTNRとは、動物が病原体を見分けるために持つ細胞表面の構造物です。TNRで(受容体)病原体に触れながら、敵かどうかを見分けます。
 
対象となった赤ちゃんは、オランダコホート集団に属する親子で、当初3032人を観察していましたが、生後1か月の時に、赤ちゃんの採血による免疫機能の検査の同意したのは、291人でした。

この赤ちゃんの分娩状態(帝王切開か自然分娩か)、生まれ月、ペットの有無、親のアレルギー、母乳との関連などを調べました。帝王切開は、40人の赤ちゃんでした。1か月までの完全母乳栄養は、53%、ペット32%、春夏秋冬の生まれ月は、ほぼ同一でした。両親のタバコは25%、両親のアレルギーは55%でした。
 
論文の要点をお伝えすると、1か月の時点で、多様な物質に接している赤ちゃんは、そうでない赤ちゃんにくらべ、免疫の活性化には違いがみられました。
 
具体的に、赤ちゃんの免疫を高まらせる活性物質とは、経膣分娩、母乳、ペットでした。
刺激物質の種類により、反応が高くなる場合と、低くなる場合がありました。
 
免疫反応は、赤ちゃんにとって、高まった方が有利な場合と、低下する方が有利な場合があります。
過剰な免疫反応は、病気を悪化させます。その判断は、現時点で断定するのは、難しそうです。
 
専門用語を用いて解説しますと、帝王切開の赤ちゃんは、自然分娩にくらべて、NK細胞の数が低下し、白血球が低下している場合が多かったです。
 
血液細胞を、TLR3で刺激すると、帝王切開の赤ちゃんは、サイトカイン(TNFα、IL12p70)の産生が低下しました。
刺激物質を変えると(TLR7)、帝王切開の赤ちゃんの方が、サイトカイン(TNFα)の産生が亢進していました。
 
冬に生まれた赤ちゃんの方が、NK活性は高まっていて、(TLR7)で刺激後の、サイトカイン(TNFα)の産生が亢進していました。
 
赤ちゃんは、普段、多様な物質に接することにより免疫が高まりますが、その後は、他の異物に対しても、過剰に反応せず、調節能力を高めている可能性があります。
 
免疫が成長発達期にある乳幼児は、調節能力が高まるような自然暴露が有用であることを示唆するものです。
 
自然免疫が高まっている赤ちゃんでは、その後のアレルギーの発症を防ぐ能力も高いであろうと、この論文では結論しています。
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