悠○というメーカーが販売していた石鹸が、多くの人に小麦アレルギーを発症させたとする事件があった。
朝日新聞4月21日版によると、悠○が厚労省に報告した小麦アレルギーの発症者数は、1567人とのことである。発売中止まで、うれた石鹸は460万個であった。2010年までに、医師らが何度か、アレルギーの危険を悠香に警告していたという。
最近、全国535人の人が、訴訟を起こしたそうである。
この事件は患者にとって不幸な出来事であったが、この事件を契機に、アレルギー発症の機序を社会に根付かせることに役立ってほしいと願う。
今回の事件で学ばなければならないことは、何点かある。
どの部分のたんぱく成分が、人の免疫を刺激するかは、わかっていないこと(予測不可な部分が多い)。
つまり、健康食品に含まれる別の物質(特にたんぱく質)が、同じようなアレルギーを引き起こす可能性があること。
多くの患者が出ないと、明らかにならないことがあり、予めその危険を知ることは難しいこと。科学の予知能力は、まだ、不完全であること。
だから、健康に良いという触れ込みだけで、製品を体に入れないこと。
健康に良いという評価は、極めて難しく、にせ薬を使用し、効果の比較試験を長期に行う必要があること。
一方、健康に悪いという評価は、比較的に容易に得られやすいこと。
今回は、患者が増えたことで、医師が熱心に解明に乗り出し、医学の力で因果関係が明らかになったこと。
最初から、石鹸と小麦アレルギーの因果関係を予想していた人は、いなかったのではないかと思われること。
先日のアレルギー予防食でも書いたが、パン食が主食の欧米民族では、小麦の起こす病気が多い。
小麦成分は、グリアジンなど、人の免疫細胞を刺激する物質が含まれている。
しかし、正常人では、パンのたんぱく質を食べても、病気にはならない。胃酸や腸の消化液で分解され、免疫細胞を刺激することがない。
小麦の慢性腸炎(セリアック病)などは、免疫異常を持ち合わせたごく一部の人で、発症してしまうことはわかっていた。こうした人では、小麦を食べて腸炎がおきてしまう。
今回は、人工的に分解された小麦蛋白を、皮膚に乗せたことで発症した。
そして、人類は、今まで、そのような経験がなかった。その結果、顔に残った石鹸の保湿成分(小麦成分)は、皮膚の細胞にとりこまれ、免疫細胞を刺激してしまったのだろう。
保湿効果が続くということは、この成分が皮膚に残りやすかったのであろうし、それを勝手に人が肌に良いと感じていたのである。その結果、皮膚の免疫細胞は活性化した。
最も、こうしたアレルギーも何も起きない人では、保湿効果の高い、素晴らしい石鹸であった。
小麦のアレルギー反応は、一部の人に限定して起きたものだが、反応する人の数が増えれば、特殊反応ではすまされなくなり、訴訟ということになってしまった。
グルバール19Sという分画の小麦たんぱく質が、人にアレルギーをおこさせたとのことである。
もう少し学術的な言い方をすると、特殊な人工的な構造体となった小麦蛋白が、人のIgEの産生を刺激した。
今後の展開は、悠○が市販後調査などで、アレルギーの把握をどの時点でどの程度を認識し、販売中止の判断時期が適切であったかが、争われるのではないだろうか?
もし、発売前から、動物実験などで、皮膚炎の頻度が高いという事実が判明してしまえば、メーカーには不利であろう。
しかし、こうした一般日用製品が市場に出回る前には、どの位の安全確認義務がかせられているのであろうか?
薬などより、ずっと、ラフな品質管理で、世にだせるはずであろう。
健康食品、サプリなどは、効果がなくても世にだすことはいくらでもできる時代である。
今回の事件は、健康に関する商品知識を持つ事が、大事であることを教えてくれた。
特に体に入れる商品については、よくよく考えて、使用を決める必要がある。
副作用に関して、どの位のデータが出るものなのか確かめ、安易に体内に入れない方が良い。
特に、人工的に加工されたたんぱく質は危ない。
そして、商品を販売している業者は、どの位の知識と経験をもつのか、社会全体でウオッチしておくべきと思う。
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