科学専門誌ネーチャーに、乳がんの解説が載っている。その中には、一般の人でも理解できるような書き方をしているものがある。
ネーチャーは、多種の科学の論文を扱い、広い分野や職種の人たちが読む雑誌なので、記事の中には、わかりやすく誰でも興味が持てそうな解説記事がある。
今月号の乳がんの解説文章には、特殊な専門用語が少なく、読みやすい。
若干の専門用語は、出てくるが、それを知らなくてもだいたい、言いたいことはわかるであろう。
本日は、これをご紹介しよう。
ネット配信された乳がんの記事は、小説に近い書き方をしている。
小説的な文章は、時に誇張的であるので、そこは注意が必要だ
(あまり、深刻にならず、小説として読んでほしい)。
何が小説的な書き方かというと、乳がんは、何年経っても、たとえ30年でも、体の中に潜んで、再発のチャンスをねらっているんだよ!という調子なのだ。
まず、配信されたプロが訳した日本語の文章を、以下に示した。
ごらんのとおり、あまり小説風の訳でなく、淡々と書かれているが、実際のネーチャーは、もっとおもしろおかしく書かれている。悪く言えば、興味本位に、良く言えば、刺激的に書かれている。
日本では、こうした論調の病気の解説記事は、まだ、少ない。しかし、どんどん、こうしたタイプの解説が増えてであろうし、日本の医学も変わっていくと思う。
この文章の次に、私の文章を書く。実際の文章はこんな具合だ!
がん細胞は、早期から血流にのって、全身を探索している。どこかに仲間(がん細胞)を増やすに有利な場所はないかとさがし廻っているのだ。
つまり、がん細胞は、種(たね)と同じようなものだ。種(がん細胞)は、必ずしも土に落ちて芽をだせるとは限らないが、がん自身の増殖に都合のよい土をさがしている。
種は、血流にのって、どの体の部分にも行くことができる。特に、乳がん細胞が定住するのに好む場所は、脳、肺、骨、肝臓なのだ。
先に到着したがん開拓班が、まず土を耕しておいて、肥料(増殖因子、ケモカイン、DNA成分)をまき、次に流れてくる種が土に落ちやすいようにしておく。
骨髄にたどりついたがん細胞は、骨髄の中で、周りの細胞や成分(マイクロRNAなど)により、再教育をうける。骨髄成分は、迷い込んだがん細胞に、骨髄でおとなしく留まるようにと諭していく。
骨髄成分は、がん細胞に対して、骨髄幹細胞のように振る舞うようにと教えこむ。
そして、がん細胞が本性を出して、骨髄で仲間をふやしてはいけないと、骨髄成分は、がん細胞を教育する。
すると、骨髄の中のがん細胞は、そこで、生き延び、時には、骨髄幹細胞と同様に、体中をめぐる旅にでることもできるようになる。
がん細胞は、全身を旅行中に、適切な場所がなければ、また、骨髄にもどれる。
つまり、がん細胞は、骨髄という場所を、生存が保障されるねぐらとすることができるのだ。
しかし、一旦、がん細胞がそのねぐら(骨髄)を完全に立ち去ってしまうと、次の目的地では、腫瘍を抑えようとする力が働くようになり、増殖に失敗するかもしれない。
つまり、骨髄に腫瘍細胞が残っているのかは、がんの予後の判定に、とても重要な情報を与える。
乳がんの患者さんの骨髄穿刺をして、骨髄液にがん細胞が無ければ大いなる安全だろうと言いやすい。
しかし、骨髄にがん細胞がみつかった場合には、医師は、がんの経過について説明をするのが難しい。
なぜなら、潜んでいるがん細胞が、いつ暴れだすかは、個人差が極めておおきいからである。
骨髄から間もなくがん細胞が出てきてどこかで増える人もいれば、何十年も出てこない人もいるのである。
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