ミルクの導入が遅れる子では、湿疹のリスクが高く、2歳時のアレルギーが多い」

ヨーロッパは、疫学研究が盛んです。
オランダには、コアラ研究とタイトルされた、親と子の病気に関連する事実を確かめるための疫学研究があります。
 
コアラ研究において、ミルクの導入と子どものアレルギー発症の関連が調べられています。
2002年から開始され、代表者は、van den Bradt先生です。
妊娠14-15週の女性に、コアラ研究に参加してくれるようお願いします。その後、女性が妊娠34週となった時に質問票などの調査に協力してもらい、さらに出産後も、子どもを継続的に、生後3,7,12,24週の時点で、子どもの健康状態を調査します。疫学的手法として、いろいろな因子で補正しながらの数値を検討していきます。
 
コアラ研究の2編の論文では、湿疹や反復性喘鳴、アレルギー感作は、母乳、ミルクの導入時期と、はっきりした関連をみいだすのは難しいとするものでした。
 
以下の訳は複雑な結果が書かれていますが、読み説くのは大変と思います。しかし、大事なことは、アレルギーを防ぐために、除去食をするとか、母乳にいつまでもこだわるということは、成果は期待できないということのようです。
 
2007年に発表されたコアラ研究では、2405人の親子ペアを1歳まで、追跡した時点で、この集団の子どもが1歳の時には、535人(22.2%)に湿疹がみられました。
 
乳児期、母乳を7カ月以上にわたり与えると、子どもが1歳の時に湿疹が減少する傾向がありましたが、有意差にはなりませんでした。
 
ミルクの開始月齢が0カ月 (母乳でなく、最初からミルクのみ) を基準にすると、ミルクを開始する時期が0-3か月だった子どものでは、1歳の時の湿疹の頻度は0.98倍、ミルク開始4-6か月では、1歳の時の湿疹は0.94倍、7カ月以上では、1歳の時の湿疹の頻度は、0.8倍となりました。
 
数値上では、ミルクの開始が遅れた子どもの群で、1歳時の湿疹が減っているようです、しかし、実は、統計学的数値としては有意ではありませんでした。つまり、ミルクの開始が遅いと、1歳児の湿疹が減るとは言えないのです。
 
有意差がでないのは、個々の子どもの条件のばらつきが大きく、95%信頼区間が幅広く数値が0.5-1.6となっているのです(1をまたぐ数値は信頼性が低い)。Pediatrics2007;119:e137
 
さらに、その翌年の2008年に、子どもが2歳になった時のコアラ研究のデータがでました。
今回は、2歳時の湿疹の有無、反復性喘鳴の有無の調査に加え、コアラ研究に登録された子どもの2歳時に、採血を行い、子どものアレルギー状態を検査して、母乳やミルク導入時期との関連を見ました。Pediatrics2008;122:e115
 
その結果は、「ミルクの導入が遅れる子では、湿疹のリスクが高く、2歳時のアレルギーが多い」とした結果でした。
 
アレルギーがすでに起きている子どもでは、ミルクの導入が遅れる可能性がありますので、ミルクの導入の遅いグループは、アレルギーが多いとの結論になりやすい可能性があります。
 
アレルギーのリスクの高い子どもを持つ親は、母乳にこだわる傾向があるからです。しかし、今回の調査では、早期からアレルギーリスクが高い子どもは除外して検討しましたが、結果には影響を与えませんでした。つまり、リスクが高い子どもでも、母乳の継続やミルクの導入時期に一定の傾向がないようで、全体としては、母乳以外の食品の導入は遅らさないことが良かったのです。
 
この研究に参加したオランダ人カップルにおけるアレルギー保有は、母親がアレルギー保有が20%、父親のアレルギー保有が20%位です。また、人工栄養のみが、全体の2割、3か月までには母乳をやてしまう母親は4割、9か月をこえて母乳を投与している母親は1割位のようです。
 
母乳を飲んでいる期間が長いグループでは、2歳までの反復性喘鳴は減少しました。
2歳の時に、子どもにアレルギーがあるかを調べる血液検査を行い、その結果を、母乳の継続期間と関連するかをみました。
 
母乳の長い群のこどもで、血液検査でのアレルギーは、数値のばらつきが大きく、有意差がでませんでした。
 
ミルクの導入は、4-9か月で導入した群で、湿疹が減り、7-9か月のミルク導入群で、反復性喘鳴が少なく、2歳時のアレルギーが減少しました。
  
具体的な数値は、2歳時にアレルギー状態がある確率は、母乳の無い子どもを1とすると、母乳継続期間0-3か月の子どもは1.33倍、母乳継続期間が月齢4-6か月では2.42倍、月齢7-9カ月2.22倍、月齢10か月以上では1.89倍となりました。
 
この数値は、一見、母乳期間が長いと、2歳児のアレルギー状態が上昇するということになります。しかし、この数値は、統計学的有意差ではなく、母乳継続期間とアレルギーが関連するとの結論にはなりませんでした。
 
この研究では、離乳食、母乳と、アレルギーとの関連は、個人差が大きく、疫学的な有意差の出る数値を出すことが難しい現実を示すもの思われます。
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