喫煙者では、脳の受容体の数と効率性が増し、ニコチンをすばやく感じ取れるように変化します。男女で差があります。


禁煙を実行するのは、困難です。一般的に、女性の方が禁煙の成功率が低いと言われています。その理由は、どこまでわかっているのでしょうか?
 
タバコを吸うと、タバコ依存症になるわけですが、その理由は、脳がいつもニコチンを必要とする状態に変化しているからです。
 
喫煙を続けると、脳の細胞のニコチンを感じ取る部分(ニコチン受容体)において、数が増加し、ニコチンを効率的に結合できる状態に変化しています。その結果、ニコチンが少なくなると、受容体はニコチンを結合していない空の状態の受容体となります。すると、脳は、空腹であると同様に、脳が空になったと感じますので、ニコチンを補給したいとの欲望が強くなります。
 
喫煙者では。脳の受容体の数と効率性が増し、よりニコチンをすばやく感じ取れるように変化します。ですから、いつも、ニコチンを欲しがる脳の状態となります。
 
非喫煙者と比べて、喫煙者や禁煙者において、ニコチン受容体がどのような構造的な変化がおきているのかを調べる研究は、盛んに行われています。
 
一般的に、細胞表面に多数存在する受容体は、常に新しくつくられ、そして古くなると壊されて、いつも入れ替わっています。この変化は、受容体のターンオーバーと呼ばれます。
 
喫煙者の受容体は、置き換えのターンオーバーの速度も変化しています。その結果、ニコチンが減ってくると、喫煙者の脳では、ニコチンが受容体に結合していない状態となり、ニコチンを受容体に結合させたいとの欲望が起きます。
 
これが、ニコチン依存症が起きる理由とされていて、喫煙者が禁煙をすることを難しくさせている理由です。
 
喫煙者の脳細胞のニコチン受容体と、非喫煙者のニコチン受容体を比べると、喫煙者では、β2*-ニコチン受容体と呼ばれる部分で変化が起きています。
 
喫煙者が禁煙を始めると、脳細胞のβ2*-ニコチン受容体は、一時的に増加し、約3週間位で元にもどるという現象が観察できます。
ニコチン受容体の変化の研究は、世界的に、ニコチン依存症を治療する薬の開発に利用されています。

Arch Gen Psychiatry. 2009 June; 66(6): 666–676.
喫煙している男26名女28名に、禁煙をしてもらい、その1週後の脳のβ2*-ニコチン受容体の変化の男女差を検討しています。その結果、女性の方が、受容体の変化がおきにくいことがわかりました。つまり、男性脳の方が、体内ニコチンの変化に、すばやく反応できる可能性がわかったのです。
 
β2*-ニコチン受容体が、依存症にどのように関与しているかは、まだ不明な部分が大きいのですが、女性の禁煙をすすめるためには、従来の治療法の抗ニコチン治療では、男性より、女性は効果がうすく、治療に限界がある可能性があります。エール大学からの報告では、女性用の禁煙薬剤の開発が必要であると書かれています。
 
Arch Gen Psychiatry. 2012 69(4):418-27.
性差は、禁煙のためのニコチン療法の有用性に影響します。 禁煙に伴うβ(2)サブユニット(β(2)*-nAChRs)を含むニコチン受容体の変化を調べると、これらの受容体に、性差が存在する様子を観察することができます。男女の喫煙者において、非喫煙者との比較を試みました。
 
デザイン:
男性 26人と、女性28人において、放射線ヨウ化物を用いて、脳の磁気共鳴映像を行いました。同様に、年齢がマッチした男性26人、女性 30人の非喫煙者を対照として、脳の磁気共鳴映像を行いました。
 
結果:
喫煙男性の脳(線条体、皮質など)におけるβ2*-ニコチン受容体は、非喫煙者と比較して、より利用度が増している結果が得られましたが、女の喫煙者は男性のような変化は起きにくいという結果となりました。 女性において、皮質と小脳のβ2*-ニコチン受容体は、検査日の黄体ホルモン(プロゲステロン)値と、負の相関がありました。女性では、禁煙することにより、禁煙に伴う喫煙要望が強くおこり、抑うつ症状も見られました。
 
結論:
脳におけるβ2*-ニコチン受容体は、男性と女性の間で明確に異なるようです、そして、女性では、β2*-ニコチン受容体は、女性の黄体ホルモンの影響を受けています。
 
β2*-ニコチン受容体の構造的な変化が、依存症に及ぼす影響については、全貌は明らかではありませんが、女性の禁煙をより効果的に、進めるためには、ニコチン受容体に作用する薬だけでなく、非ニコチン性の薬物を開発する必要があるのではないかと考えます。PMID:22474108

線条体(せんじょうたい striatum)は、終脳の皮質下構造であり、大脳基底核の主要な 構成要素のひとつである。線条体は運動機能への関与が最もよく知られているが、意思 決定などその他の神経過程にも関わると考えられている。ウキベディアより
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