肝機能の異常は、どう考えたらいいの?No.1

今回は肝臓の話をします。C型肝炎、B型肝炎などは、新聞に取り上げられることの多い病気です。しかし、こうした病気より、もっと身近に、肝臓を意識するのは、お酒を飲む時ですよね。健康診断で、肝機能異常を指摘される方は多いと思います。医師に行くように言われても、お酒のせいなどと理由をつけて、なかなか決心できません。すると、次の機会の検査の時には、肝機能は良くなっています。なあんだと思う方も多いと思います。しかし、肝機能が悪いということは、すでに肝臓の予備力が低下した証拠です。あるいは、軽度な異常がだらだらと続くことがあります。太っていなくても、お酒を飲まない人にも起きてくることがあります。A,B,C型肝炎でもなく、肝炎がおきて来る人がいます。原因不明だけど、異常が続く、そうした悩ましいことがあるのも、肝臓の病気です。薬による肝機能障害などが起きる理由は、その薬を処理できていないということですが、女性に多くみられます。今回は、そうした話題にふれます。
 
1)アルコール
肝臓は、アルコール分を消去してくれる大事な臓器です。アルコールなる物質が体に入ってくると、肝臓は必死に働き始め、短期間で蕪毒化しようとします。アルコール性肝炎は、それこそ、読んで字のごとく、アルコールによる“炎”です。肝臓の病気で、“炎”という字がはいるかどうかは、大事なことです。それはすでに病気であること、そして将来が心配であるということを意味します。“炎”は、すでに一過性の出来事でなく、病気がおこっているという印で、一旦良くなったとしても、再度、アルコールによる“炎”となり、そして積み重なって行くと言ういみです。肝臓の細胞が壊れ、又、作りなおしをくりかえしていく間に、肝臓はだんだん固くなっていきますよね。これが、誰でも知っている肝硬変です。
 
ですから、この“炎”がつくような状態になることと、やはり、まずいのです。アルコールを飲んだ翌日でも肝機能が悪くならない人でも、だんだん翌日まで持ち越すようになります。肝臓のすみやかな解毒能力が、飲んだアルコールに見合うだけ、働かなくなってきているのです。その結果、おきてくるのが、“炎”ですが、肝臓の構造が変化していることを示す言葉です(正確には、顕微鏡などによる検査を要します)。
 
肝臓のアルコール無毒化能力が落ちてくると、人の健康はおおいに破壊されます。若い時は解毒能力が強いのですが、誰でも、その能力は衰えていきます。アルコールを分解するためには、肝臓のみでなく、体じゅうの全臓器が動員されます。アルコールの解毒作業をしている間は、他の大事な体の働きは犠牲になります。がんをつぶす能力も低下して、がんになりやすくなりますし、感染症にも弱くなります。もし、そばにアルコールにはまっている方がいれば、誰でもその変化に気づくと思います。特に注意すべきは、個人差はあるものの、女性は、アルコールを無毒化する能力は、男性の2/3 と言われます。
 
肝臓でのアルコール代謝は、サイトゾールにおけるアルコール脱水素酵素(AlcoholDehydro-genase:ADH)と、ミクロゾームにおけるMEO (Micro-somalEthanol-Oxidizaing System)と呼ばれる、解毒システムにより行われます。ADHという物質名は、生まれつき、酒に強い人と、弱い人がいる理由を説明する時、必ずでてくる用語(酵素の名)でしたね。ADHは、エタノールをアセトアルデヒドに分解する物質です。この時できたアセトアルデヒドは、さらに酢酸まで分解されますが、その作業を行うのは、別の酵素のアルデヒド脱水素酵素を(ALDH)です。
アルコールをすばやく分解できるかどうかの能力は、それぞれの人も持つ遺伝子の影響をうけます。それが、酒に強い人と、弱い人の違いでした。このアルコールを分解する過程で、活性酸素が生じます。活性酸素は、細胞障害を起こします。女性は、アルコール代謝の機能が悪く、男性より少ない量のアルコールで、肝臓がだめになります。アルコールによる酸化ストレスが起きます。アルコールに限らず、酸化ストレスは、細胞にとっては、とても怖いものなのです。

男性は、女性より酒が飲めるのは、アルコールを分解する能力が高いからです。男性が、深夜まで飲んでいても、次の日には働けますね。そして、この毒性物質を解毒できる能力は、個人差が大きいですよね。そして、いまさらのことではないですが、女性が酒に弱いのは、女性は、酒中の毒素(エンドトキシン)を吸収する能力が高いこと、さらに毒を消す能力が低い(代謝能力が低い)という、女性特有の多くの因子があり、アルコール摂取が、男性より肝臓に負担をかけるのです。アルコールによる負担が強ければ、それに耐えきれない肝臓の細胞は死んでいきます。アルコールによる肝障害は、γ―GTPという数値が上昇するのが特徴です。AST(GOT)、ALT(GPT)と呼ばれる数値も上昇します。細胞が壊れて、内部の酵素が漏れ出してくるのです。
 
この“炎”の字がつかわれる場合には、急性と慢性があり、A型肝炎の急性型はよく治ることが多いです。急性の肝炎は、全身倦怠、黄疸、発熱。右季肋部の痛みなどを生じるので、私たちは病気に気づくことが多いです。しかし、新聞で話題になる、B型、C型肝炎は、一筋縄ではいきません。慢性肝炎は検査をして初めて気付くという
ことが多いです。肝臓の病気は、しばしば、知らずして慢性の経過をとります。そして最後に行き着く
ところは、肝硬変であり、肝がんです。
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