網膜色素細胞をとりだして、実験室でサプリなど抗酸化薬剤の影響を調べた成績

黄班変性症は、網膜色素細胞の光受容体が消失していく病気です。
 
前々回に、サプリの効果が期待される疾患であると、ご紹介しました。
 
視力に最も重要な働きをする網膜に、出血などの病変がおきると、失明につながります。
 
網膜は、酸素を多量に必要とする臓器ですので、抗酸化物質が豊富に集まります。しかし、こうした抗酸化物質は、人は、加齢と共に作れなくなってきます。
 
それで、老人では、個人差があるものの、網膜の色素が減少して、黄班変性症が起きてきます。網膜には、多価飽和脂肪酸も多くあり、これも酸化ストレスに関連するようです。
 
加齢関連眼疾患研究班 AREDS (Age Related Eye Disease Study) をつくっている専門研究者は、世界中で発表される学術論文を根拠に、世界の人々に向けて、眼に関する学術的勧告をおこなっています。
 
この学派の勧告では、進行した黄班変性症には、亜鉛を加えたマルチビタミンが有効であるとしているそうです。ただし、勧告によると、こうしたサプリには、始まりだした初期黄班変性症を完全に防ぐ効果までは、期待できないそうです。つまり、「サプリをつかっていれば、こうした病気にはならない」 とは言いきらないです。
 
人の加齢に伴う健康への影響を調べる研究は、疫学研究、動物実験、細胞研究などの基礎研究にさされられています。
 
本日は、網膜色素細胞をとりだして、実験室で培養して、サプリや、抗酸化薬剤の影響を調べた、カナダ発の論文を紹介します。Clin Ophthalmol. 2012;6:1471-6.
 
人から取り出した網膜細胞(研究用に市販されている)を使って、薬剤と酸化物質を加えて、細胞の生存状態(生き残り数)を調べた実験です。
 
加えた物質は、ビタミンC,E, vitamin C phosphate、propofol, betaxolol, N-acetyl cysteine (NAC) などの代表的抗酸化剤でした。その後、網膜色素細胞に酸化ストレスを加え、生き残った細胞の数を観察しました。5時間の酸化ストレスへの暴露では、細胞の数は25%に減少しました。
 
次に抗酸化剤の効果をみました。かけた酸化ストレスの程度は、約半分の数の細胞が生き残る設定条件でおこないました。
 
加えたそれぞれの抗酸化物質ごとに、どの程度の数の細胞が生き残れるかを検討しました。結果は、ビタミンEと、NACを加えた場合のみ、網膜色素細胞の生存が高まりました。
 
ビタミンEと、NACに、抗酸化効果があるとされました。ビタミンEは特に、高濃度で生存効果が高く、20%程度に細胞の生存を増加させました。

ビタミンCは、むしろ、酸化ストレスだけの時より、さらに、細胞の生存が低下しました。
以上、ビタミンEと、NACの有用性を示す結果でした。
 
しかし、これをそのまま、人にあてはめるのは、注意が必要です。

この実験は、細胞を抗酸化物質と共に、酸化ストレスにさらしたものですが、実際の人での実験ではありませんし、そのまま、人体に同じ効果が期待できるかどうかはわかりません。他の副作用がでるリスクもあります。こうした情報を、鵜呑みにせず、あれこれ、背景を考えるのが科学的思考です。
 
サプリメント業界は、少しでも良い成績がでると、それを拡大解釈して、いつの間には、科学的でない過剰な宣伝になってしまいます。

ネットの動画サイトでも、NACは、40歳すぎたら、取るべきサプリと宣伝されており、その効果も、インフルエンザ、うつ病、統合失調症、アレルギーと、効能は、留まるところをしらず、素晴らしく効くとの宣伝文句です。
確かに酸化ストレスを軽減できれば、すべての病気に効果が期待できるでしょう。
 
物を売りたい人は、その人自身も、どんどん、その気になってしまうのでしょう。
 
専門家の勧告でも、サプリが効く時期があると言っていますので、やみくもに、誰にも効果がでるわけではないのです。
 
このブログ内容はあくまで、論文の紹介にとどめたいと思います。
 
ウィキペィアからの情報
N-アセチルシステイン (NAC) (N-acetylcysteine)はしばしば鎮咳剤として用いられる。これは、粘液中のジスルフィド結合を切断して液状化させ、痰を切れやすくするためである。サプリメントとしても使われる。
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