肝臓機能が悪くて肝移植を受けた子供は、術前に多かった食物アレルギーが改善することがわかりました。

赤ちゃんは、生後、半年前後で、離乳食に含まれる異物の蛋白を、うまく栄養源として取り入れることができるようになります。

腸の細胞は、外来の蛋白質を異物とせず、腸内に吸収できるようになるのです。これを、難しい言葉ですが、免疫寛容と呼びます。これは、あかちゃんが成長していく過程で、自然に起きている現象です。
 
人の体の働きの中で、潜在的に起きているしくみの研究は、難しいものです。人は、病気が起きてきて、初めて、健康が維持されるためのしくみの糸口が見つけられます。体を守るしくみである免疫は、複雑なしくみの方が、解明が楽であることが多いです。
 
免疫学も、T細胞、B細胞といった高等生物のみが持つ、高度な免疫から、先に解明されました。原始動物から変化して高等動物に伝わってきた免疫解明は、遅れました。
それでも、多く免疫機能はいまだ、謎のままです。
 
健康のしくみとは、病気にならないと見えてこないです。健康になるための医学や栄養学が、なかなか進歩せず、ガサネタばかりの世の中になっています。
 
人に食物アレルギーという病気が起きてきたことは、人と食とのかかわりあいについて、私たちに多くの示唆を与えることになりました。
 
動物モデルでは、肝臓の働きと、食物アレルギー発症とに関連があるとの結果が示唆されています。
肝臓は多くの蛋白の合成や分解にかかわっていますので、当然、肝臓が悪いと、病気を防ぐための調節因子が不足する可能性が高いです。
 
しかし、人の食物アレルギーでも、肝臓の機能と関連があるかどうかは、まだ、わかっていません。

今回は、こうした関連の有無に注目し、重症な肝疾患があって、肝移植治療をうけた子どもたちにおいて、肝移植前後で、食物アレルギーはどのような影響を受けるかを検討した研究論文のご紹介です。
Pediatr Allergy Immunol. 2012 Oct 11. PMID: 23050587
 
2001–2008年、英国専門医療センターにて、肝移植をうけた0–36カ月の子供たちの、移植手術前後における、食物アレルギー関連の総IgE,特異IgEの推移をみました。
 
血清検査にて、総IgE値、牛乳、卵、ピーナッツに対する特異IgEを検査しました。
 
小児期末期肝不全の程度判定スコア(PELD)を用いて、肝障害の重症度を得点化しました。
 
肝移植の子どもたちとの比較するために、同時期、腎移植を受けた子どもたち70人において、腎移植前後での、血液食物アレルギー反応の変化を検討しました。
 
結果
観察期間の間に、肝移植を受けたには、94人の子供たちですが、そのうちの50人では、手術前後で血液が採取でき、総及び特異IgE等の検査が可能でした。
 
手術を契機に、術前50人中の35人(70%)は、スコア1以上の特異IgEが陽性でしたが、術後は、18(36%)へと減少し、総IgEも低下しました。(p = 0.001)。術前に、10人の子供は、負荷テストを行い、食物アレルギーがあることが確定していました。
 
肝障害の程度を表す末期肝疾患スコア(PELDスコア)を用いて、肝機能障害の程度と、特異IgEの関連をみると、特異IgE陽性群は、術前の肝機能低下スコアが1.52と高く、一方、特異IgE陰性群の子供たちでは、術前の肝機能低下スコア0.77でした、(p = 0.004)。
 
つまり、IgEの高い子どもは、肝機能障害の程度が強い子どもに多かったのです。
 
総IgE濃度は、34/42の(81%)の子どもたちにおいて、術前は高く、移植後に低下しました。
40人の子供たちの両親をインタビューすると、13(33%)の子どもに、実際の食物アレルギーの既往があったと答えていました。

肝移植をした子どもたちは、術前、食物アレルギーが多い(特異IgEが高い)結果でしたが、同様の関連は、腎臓移植した子どもたちでは観察できませんでした。
 
結論
肝臓機能不全の小児は、食物アレルギーになりやすいことがわかりました。肝臓の働きが低下すると、食物に免疫寛容が起きやすくなる(食べ物に反応する)ものと思われます。
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