ネーチャーニューロサイエンス(脳神経科学)の最新記事を紹介します。
思春期になると、男性を中心として、精神疾患が発症しやすくなります。その理由や原因は、まだ、解明されていないのですが、以前のこのブログで、女児の場合は、不安やうつの要因として、女性ホルモン上昇の影響があるとする論文を紹介しました。又、女性ホルモンとは無関係に、女性は男性に比べて、うつや統合失調の発症に、環境からの影響が大きいと考えられています。
前回ブログで、人は、恐怖を扁桃体で感じ、さらにACCや島の活性化を経て、大脳に連携されることを書きました。不安・恐怖を克服するために、前頭葉は、大事な機能を担うことを示しています。つまり、前頭葉と扁桃体の連携性が良い人では、恐怖を克服しやすいと考えられます。
今回は、不安や恐怖の克服に大事な役割を果たす前頭葉の役割について検討した論文です。Nature Neuroscience doi:10.1038/nn.3257
乳幼児期にストレスを受けてしまう、あるいは、乳幼児期に、ストレスに関連する視床下部-下垂体-副腎軸の機能が失調していた人を、思春期の時点まで追跡していくと、その人が、思春期になった時点で、精神疾患が発症しやすくなる可能性があります。
一方、扁桃体と前頭葉前部皮質(vmPFC)の連携性が良いと、動物実験でも人間でも、情動がコントロールできると考えられています。
今回の小児を対象とした追跡研究では、乳幼児期の生活体験を調べておき、その子どもの成長を追って行き、4-5歳になった時点で、視床下部-下垂体-副腎軸の機能を反映するコルチゾール量を測定しました。
14年後に、その子どもが思春期になった時点で、磁気共鳴映像法(fcMRI)を用いて、扁桃体と前頭葉前部皮質(vmPFC)の連携性を調査しました。
乳幼児期に重大な体験をすると、小児期のコルチゾール濃度が高くなっており、思春期に検査したfcMRI において、扁桃体と前頭葉前部皮質(vmPFC)間の連携性が低下していることが、女性においてのみ示されました。
扁桃体-vmPFCとの間で連結性が低下していている女性では、青春期に不安抑うつ症状を伴いました。
男性ではこうした関連はみられませんでした。
乳幼児期の女児において、コルチゾール濃度異常があると、思春期になった時に、脳内扁桃体とに前頭葉(vmPFC)間の機能的連携能が低下してくることが予想され、その結果、青春期の不安や落ち込みがおきやすくなるとの可能性です。
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