フロイドは、目の前の患者の治療成果をあげるため、医学はさておいて、心理学の手法を用いることを選択した。

医学は鑑別診断が命である。体がマヒする患者を前に、ヒステリー症状と、神経が働かなくなる神経難病を区別しなければならない。
 
フロイドは、医師であり、生理学研究室で神経構造などを学んでいる。生命現象は、すべて化学や物理の理論で証明されるべきと、科学者としての信念をもっていた。フロイドは、生命現象に、宗教や生気論的な考え方を排除した。
 
生命現象は、エネルギーが産生され、電気が流れることによって維持されるが、当時から、そうしたことを証明しようとの生体実験は大いに行われていて、今の知識につながっている。

体がマヒする原因は、複数にある。
ALSの患者さんが、神経難病の発症にきづくきっかけとして、つりざおが投げられなったとの新聞記事があった。
 
又、他の神経難病の人では、家の階段を上る時に足があがりにくくなったなどがある。それまで、何気なくやれていたことがやれなくなるのは、神経病の発症を疑わせる大事な徴候と言える。
 
一方、ヒステリー症状は、行きたくない場所へ出向こうとすると足が動かなくなるとか、会社に入ると、全身倦怠するなど、その異常行動には、心の問題がつきまとう。脳が行動することを拒否しているのだ。
 
前頭前野と呼ばれる部分が、人の考えと行動に、最終の評価と決定を行う。ここで決めたことが、外に行動として出てくる。
 
人が、大きな不安を感じている場合、不安がそのままの形では自覚されず、他の感覚や感情に変化する。
 
例えば、化学物質に過度な不快感を感じる人がいるとする。職場などで、周りの人が特別の配慮をしていたりする話を聞く。
 
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医学的に証明される化学物質過敏症があるとすれば、遺伝子異常などの体質的因子により、特定の化学物質を分解できない、処理できないとか、異常反応につながる生体側の証拠因子が証明されなければいけない。
 
例えば、先天性の代謝病では、体内には特定物質が蓄積してしまうこのだが、代謝病の患者さんでは、体内からその物質を排出する能力が無いのである。その結果、蓄積した代謝物質が、脳や肝臓にたまって命取りの経過となる。
 
具体的な異常がないのにもかかわらず、不安脳は、人にどんな症状も起こすことができてしまう。
 
マヒや、感覚異常などの自覚症状などは、不安脳が作り出す得意な症状だ。
もっとも、ヒステリーだけで、心臓や呼吸を完全に止めてしまうのは無理だろう。
 
人々は、この100年を超える短い間に、生命現象を起こしている多くのモノを発見した。
 
病原体の発見、ホルモンなど生体内物質の発見、体内分解できず蓄積してしまう遺伝病、IgEが過剰に働くアレルギーなど、病気の原因となるモノをみつけてきた。

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そして、今も、生体内物質は発見され続けている。そうした意味で、今後、脳を動かしている物質が、さらに、解明されるであろうし、病気の治療も進歩するだろう。
 
フロイドらの時代も、脳内を動かす物質と機序を探して、試行錯誤をした。
しかし、当時の医学レベルでは、脳内の伝達物質や神経細胞機能を証明することが難しく、フロイドは、目の前の患者の治療成果をあげるため、医学はさておいて、むしろ、心理学の手法を用いることを選択した。
 
医学的病名には、医師間で共通認識が大事で、医師ごとに病名が違ってはいけないはずだ。
 
しかし、心理学では、医学と比べれば、モノを証明する必要はなく、判断や評価が専門者間で、違っていてもよいだろうし、ある程度、独断的であっても許される。
 
実学としての医学も心理学も、理論は後廻しになっても、目の前の患者に対して治療効果をあげることが、何より優先されるものである。
 
理論に反していた方が、治療効果が出たりするなど、試行錯誤はつきものである。
 
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