ネットニュースによると、思い出すという作業は、どのような脳内処理による成果なのかに関して、研究論文が投稿発表されました。
この動物実験の方法論ですが、まず、2枚の絵の関連性をサルにおぼえさせます。異なる2枚の絵を見せて、ペアとなる2枚を、サルに覚えさせます。
サルが、どの絵と、どの絵がペアであるかを覚えたら、ジュース(報酬)を与えます。サルが、覚える、思い出すという作業をしている間の、サルの脳内の電気(活動電位)の動きを調べます。サルの頭につけた電極から、微細な脳の電気の流れをモニターします。
こうした脳科学の手法を用いると、脳のどの部分が強く反応するのか?活動電位がどの道筋を通って、他の脳部位に伝達していくのか?が調べられます。
人間でも、こうした研究は、盛んに行われています。そして、脳内活動電位は、実際の人の性格や病気と、どう関連するかが検討されています。
人の場合は、あらかじめ、性格を反映する質問をしておいてから、その人の性格、たとえば、偏執的とか、楽観的とかを知っておきます。
その後に、脳内電気との関連を調べます。活性化した脳は、電気的に興奮し、負の電位にふれて、その後、正にふれます。頭部に電極をつけて、グラフ化すると、最初、負の電気、その後に正の電気へと変化していく経過を見ることができます。
そして、電極を付けた被検者(検査を受けている人)に対し、いろいろな質問をして、答えさせ、脳を動かしてもらいます。
さらに、質問に、正しく答えた場合、間違ったかによって、脳内電気の波形の違いを比較します。質問に対し、間違いを強く感じる人なのか、そうでもない人なのか?などの性格的なものとの関連も見ます。
脳内の活動電位の評価は、健康な人を対象にする場合もありますし、メンタルトラブルの患者さんと、健康人を比較する場合もあります。
こだわりやすい性格の人では、答えを間違うと、脳内も強く反応するようですが、それは、脳内電気が負に触れる部分の波形に変化がでるとのデータが示されています。
偏執的な人では、 前頭葉と線条体の交流が強くなっているとのデータがあります。これは、基底部の脳と、高等脳との電気的交流が盛んになっていることを示します。
さて、こうした脳科学の研究は、現在、研究途上ですが、示唆に富む成果がでてきています。
人は、恐怖を海馬、扁桃体などの基底部の脳で感じ、それが中脳、高等脳へと広がることにより、恐怖に対処する能力を獲得します。
元々、人の脳は、機能が高まるように準備されています。そして、科学の力をかりて、人は脳をさらに発達させてきました。
平安時代は、モノノケなどで、人々は不安におののいたと思いますが、現代人は怖くありません。それは、平安時代にくらべ、大脳の理論武装が進んだからと思われます。
大脳の表層は、神経細胞が多く、高度の判断ができる部分です。視覚は後頭部、聴覚は側頭部などで処理され、さらに、頭頂部に集められてから、前頭葉との交流して、最後に人の感情や行動が決まります。
fMRIで観察された脳内血流の研究では、物事にこだわる人は、質問に対する答えを間違ったり、トラブルに際して、前頭葉正中部の興奮が強くでる(血流が増える)との観察結果が出ています。
原始脳である基底部の脳が不安を感じると、次々と電気的興奮がおこり、活動電気として出てきます。
高等脳は、基底脳からの不安反応に対して、広範囲に大脳を活性化させて、興奮を鎮めようとします。
大脳皮質、特に、前頭葉がしっかり調整してくれれば、不安や迷いが消えていきます。
しかし、高等脳の指示が甘く、海馬、扁桃体の不安をなだめきれないと、ドパミン過剰の状態の不安脳となってしまうのでしょう。
偏執的な人では、神経線維が多く通過する線条体と、大脳との電気的交流が多いとの成績があります。こうした人では、大脳が、不安の解消に手間どっている結果なのかもしれません。
これらの研究成果を見ると、不眠、不安を起こさせるマイナスな脳の働きを、薬だけでおさえるのは難しいようです。
薬は、不安を抑制する神経を強めると言われています。ですから、薬が切れると、むしろ、不安が高まりやすいのです。
認知行動療法がめざすように、自らの大脳皮質の能力を高めながら、脳内不安解消の上書きをしていく作業が最終の成果であると思わずにはいられません。
コメント
No title
これらの研究のソースをよかったら教えていただけないでしょうか。
2013/11/24 URL 編集