医療環境の悪い地域では、溶連菌感染症がどんな猛威をふるって、人々を不幸にしているかの貴重な成績が出たので、これを勉強して思いをはせましょう。

日本の日常診療において、溶連菌感染症は、今もすこぶる多い疾患です。
 
1年中を通して、子どもたちの咽頭ぬぐい液から、即時検査の溶連菌反応が陽性に出ます。子どもだけでなく、両親、保母さんも、溶連菌感染症にかかります。抵抗力の低い大人が増えたという印象です。
 
溶連菌感染症は、咽頭の赤味が強い、鼻水がない、くしゃみがない、唇や舌が赤い、目が赤いなど、いくつか特徴はあるものの、検査の結果は、しばしば予想とはずれ、絶対陽性のはずが陰性だったりします。
 
一方で、発赤がそれほど強くない場合でも、時に陽性反応がでます。病気の出方は、本人の抵抗力との兼ね合いなので、「この病気なら、この症状!」と必ずしも言えないのが実情です。
 
抗生剤が良く聞きますので、つまり耐性菌はいないということですが、医者は助かります。抗生剤を投与しても、熱が下がらない場合は、他のウイルス合併をしているなどを考えた方が良いです。
 
最近のおかあさんは、溶連菌が陽性でも、「薬を飲めば大丈夫だから、バレエの発表会に、ぜひ行かせたい。」とか言う人がいたりして、病気のおそろしさに対する認識が今一つ欠けています。確かに、薬の飲めば、子どもはすぐ元気になります。

すぐ病院で診て診断してもらえる、すぐ抗生剤が手に入るなど、溶連菌感染症に関しては、日本は恵まれた医療環境にあります。そこは感謝したいところです。
 
溶連菌は治って当たり前と思わないで、やっぱり、恐い病気なのだということも肝に銘じておきましょう。
 
溶連菌感染症の怖さは、リウマチ性心炎を起こすと、その後、弁膜症などで、心臓の働きが悪くなっていきます。
 
日本と異なり、医療環境の悪い地域では、溶連菌感染症がどんな猛威をふるって、人々を不幸にしているかの貴重な成績が出たので、これを勉強して、感謝の思いをはせましょう。

以下の情報は、医師向け情報サイトから情報をいただいています。2013/09/03 [Cardiology News Now] | nc035869 | 提供元:自治医科大学教授 苅尾七臣先生
 
溶連菌感染症を放置すると懸念されることは、その合併症です。代表的なものに、腎炎、リウマチ熱、リウマチ性心疾患があります。
 
同じリウマチとの名前がついていますが、リウマチ熱は、成人の自己免疫疾患である、リウマチ性関節炎とは別の病気です。
 
オーストラリア・王立小児病院のJoanna G. Lawrence氏らが、原住民の多い地区で、1997年から心疾患の発症に関して統計をとりはじめています。
 
オーストラリア原住民は、医療アクセスが悪く、子どもたちが溶連菌にかかり、心臓疾患を起こし、さらに心不全や死亡などして、その予後が不良なのです。
 
オーストラリア北部地域は、住民(22万5,000人超)のうち、原住民(アボリジニやトレス海峡島民)が約30%(約6万4,000人)を占めます。彼らは、隔絶された狭小の地域に住み、大半が貧困で生活水準が低く、 医療へのアクセスが不十分です。

1997年から2010年にかけて、オーストラリア北部住民の臨床観察をして、リウマチ熱とリウマチ性心疾患の発症頻度を調べました。
 
長期観察の結果、1,465例(リウマチ性心疾患1,149例、リウマチ熱初回診断615例)が診断され、彼らの病気の経過を観察しました。リウマチ熱登録615例のうち、97.6%が原住民でした。
 
彼らのリウマチ熱罹患率は、5~14歳群で最も高率でした(10万人当たり男性162人、女性228人)。
10年以内にリウマチ性心疾患が起きてくる率は61%、リウマチ性心疾患と診断後5年以内に心不全となる(心臓がポンプとして働かなくなること)確率は27%でした。
 
診断後10年の、生存率(相対比)は88.4%でした。
 
医療が十分に行きわたらないことにより、オーストラリア原住民にリウマチ熱およびリウマチ性心疾患が増え、死亡しやすくなっていました。
 
以上は、溶連菌感染症を契機に、心臓が悪くなり、10年以内に死亡するリスクが高くなる状況を、数値で確認した貴重なデータです。
 
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