今は、若い男性から、子育てで疲れるとの話を聞きます。
仕事で疲れて帰っても、又、家で家事手伝いをして疲れると言うのです。そんな時、私は、「お父さんが子育てに参加すると、賢い子どもになるような気がするけど・・・」と話します。子育て中に、男性の気づく視点があるし、男性特有の科学的な目というもあるような気がします。
赤ちゃんが離乳食の食物に反応した時、除去に走る母親に対して、父親は男性特有な科学的な目があり、母親の思いこみへの抑止力を発揮しそうです。日ごろから、父親が子育てに参加していれば、母親も父親の意見を聞きいれやすいでしょう。そこには、長い目でみる子どもの将来展望が期待できます。
男性は、社会的にいろいろな情報にも恵まれています。一方、母親には口コミ的な情報、もあります。現実的かつ科学的な情報に囲まれて、偏らない子育てを期待したいです。
健康情報はたくさん出回っていますが、証拠を確認することの重要性を大事にしていきましょう。
今回は、食物アレルギー克服に向けた、興味ある論文をご紹介します。
除去食一辺倒だった、世界のすう勢に対抗して、オーストラリア小児科学会が負荷食の重要性を発信してきました。そうしたチャレンジは、現在も続いています。
今回は、生後4カ月からの乳児に、卵抽出粉末を食べさせ続け、1歳時の卵アレルギーの発症の予防効果を検討したものです。
よりよい食を求めて、時にはリスクを冒しながら、人々の挑戦は続いています。
食物アレルギーの治療として先駆的なウェスタンオーストラリア大学、パースで行われた研究です。
J Allergy Clin Immunol. 2013 ;132(2):387-392. Palmer DJ,ら PubMed23810152
研究から得られた事実は次のようです。
4か月の時点では、乳児はかなり卵に反応すること、
卵を割り当てられない群の赤ちゃんでも、卵に対するIgE抗体が陽性になったこと
(つまり、赤ちゃんには、なんからのルートで卵が体内に入る可能性があること)にご注目ください。
乳児に完全に卵除去をすることは、うまくやれないようなのです。
結論として、卵粉群では、卵アレルギーと診断される割合は、1歳時には36%で、対照群の51%と比べると、卵アレルギーの発症はやや減りました。しかし、対照群との間に有意差が無かったのです。
統計的には有効とは言えない数値で、卵粉群に脱落した赤ちゃんがいることなども考慮し、この方法では卵粉の有効性を証明するのは難しいようです。
但し、協力した親と研究者、及びがんばった赤ちゃんには敬意を表します。食物アレルギーの発症のメカニズムについて、重要な情報を発信しました。
以下が論文です。
二重盲検無作為法で、臨床試験を行いました。4~8ヵ月の月齢の赤ちゃんを、毎日茶さじ1杯の殺菌非加熱の卵の粉(n = 49)を与える群と、対照として米粉(n = 37)を与える群に分けました。(親も医師も、どちらの群であるかは、知らされません)
生後、8か月からは、加熱卵を、両群の赤ちゃんに与えました。この子どもたちが12ヶ月になった時、生卵を食べさせてみた反応と、皮膚プリックテストの結果とに基づいて卵アレルギーの有無を検討しました。
結果:
15/49(31% )の赤ちゃんは、卵粉に対するアレルギー反応がおきたために、卵粉摂取を続けませんでした。
生後4ヵ月で、卵粉摂取の有無にかかわらず、卵特異抗体が陽性になった割合は、全体で36% (24/67)でした。
生後12ヵ月になった乳児では、卵アレルギーと診断された割合は、卵粉グループは(33%)で、対照群は51%でした。 相対危険度、0.65; 95%のCI、0.38-1.11; P = .11)。
卵特異IgG4レベルは、赤ちゃんが生後8と12ヵ月の時点で、卵粉群で高くなりました(P .001)。
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