室内カーペット、家具、お手拭きには、ピーナッツ蛋白が検出でき、ピーナッツの食後には、唾液中に3時間、ピーナッツ蛋白が残る。

前回のブログで、子どもたちの食事から、卵除去を徹底させることは、難しいとの話をしました。
 
その理由は、室内に卵蛋白がどこかについていて、無意識に、子どもの手や体から体内に、卵蛋白が入ってしまうらしいのです。
 
子育中、兄弟や親の食事の時に使われる卵の蛋白成分は、家の中のあちこちに広がってしまうということなのでしょう。
 
家の中のどこに、食品成分が散らばっているかがわかるようになったのは、科学の進歩により、食品蛋白が微量まで、測定できるようになったおかげです。
 
吸いとったり、ふき取ったりして得られた検体から、微量でも卵蛋白が検出できます。その結果、いろいろな事実がわかってきたのです。食物除去など、簡単ではないことがわかりました。
 
結局、除去する、しないにかかわらず、いろいろなルートで食物蛋白が体内に入ってきて、子供たちは、減感作されていくのでしょう。
 
以下は、卵でなく、ピーナッツ蛋白についてですが、室内のどこに、ピーナッツ蛋白があるかを検討した研究です。
The Journal of Allergy and Clinical Immunology;132, , Pages 623r 2013
 
この論文によると、ベット、室内カーペット、家具、お手拭きには、ピーナッツ蛋白が検出でき、ピーナッツの食後には、唾液中に3時間、ピーナッツ蛋白が残ったままになるようです。
 
しかし、ピーナッツ蛋白は、空気中にばらまかれることは少ないと、この論文は示しています。
 
ピーナッツ蛋白の測定には、3種のエライザキットを用いて、それぞれの測定系を比較しています。
吸い取ったほこりの中のピーナッツ蛋白の測定値と、ふきとったほこりの中のピーナッツ蛋白測定値は、よく数値が相関し、今回の測定法の精度が高いことを証明しています。
 
ピーナッツを食べた後の手や唾液には、食後3時間までピーナッツ蛋白が検出されました。
 
室内空気中のピーナッツ蛋白は、測定感度以下でした。ただし、ピーナッツのさやをむいた後には、若干の蛋白が空気中に検出できるようでした。
 
ピーナッツに関して、もう1題を紹介します。
 
ガーナの学童たちのピーナッツアレルギーについてです。
The Journal of Allergy and Clinical Immunology;132, 639-647, 2013
 
なんで、ガーナのデータ?と思われるでしょうが、ピーナッツアレルギーの反応(IgE抗体)がでる子どもたちの多くは、ピーナッツに反応しているのではなく、ピーナッツ以外の類似の構造物に反応しているという事実を、この論文が示しています。

アレルギー検査をすれば、アレルギーの状態が正確に判定できると、早合点してはいけません。検査の結果は、それほど精度の高いものでなく、数値が出たから、大変と考えなくて良いのです。

なぜ、反応が陽性となるのかの理由について解説いたします。
すでに、交差反応と言う言葉を勉強済みの方もおられると思います。アレルギーを起こす食品と、似た構造を持つ物質はたくさんあるのです。
 
もちろん、検査として正確でないのですから、改良が必要です。他の抗原検査でも、今も、改良の努力が続けられています。
 
今回、ピーナッツアレルギー検査で陽性に出たガーナの子どもたちは、実際には、ピーナッツアレルギーは無く、交差反応でピーナッツに対する陽性反応が出ました。
 
陽性となった原因のひとつは、子どもたちの寄生虫感染です。さらにもうひとつは、ピーナッツ蛋白とは関係しない炭水化物へ反応が起きたからです。その結果、IgE抗体検査で、陽性反応がでてしまったのです。
 
ピーナッツに対する特異IgE反応が陽性の子どもたちは、多く寄生虫に感染していたということが明らかにされました。もちろん、日本ではガーナの子どものような寄生虫感染はありません。
 
日本でも、ピーナッツが食べられる子供の中に、ピーナッツに対する特異IgE反応が陽性になる子どもたちがいます。
実際に、ピーナッツ蛋白に反応している子供もいれば、ピーナッツ蛋白以外に反応している子供もいます。
 
ピーナッツに対する特異IgE反応が陽性に出ても、ピーナッツを食べられる子どもたちの方が多いです。
 
反応が出ると、びっくりして、すぐピーナッツを止めてしまう親がいますが、すでに普通に食べれる子どもは、ピーナッツを食べていた方が、アレルギーへの進行が避けられる可能性が高いです(個人差があります)。
 
実際にピーナッツを食べてアレルギーが出る子どもは一部です。本物のピーナッツアレルギーでも、食べて慣らしていく減感作が可能です。

 
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