8月31日に、米国の病院で、卵アレルギーの子どもに卵負荷テストをしたところ、2/3の子どもは、卵が食べられたことを書きました。いつも間にか、子どもたちの食物アレルギーはおさまっていたようです。
食物負荷テストについて、少し書きます。
負荷テストは、原因食品を実際に食べてみて、何か、体に症状が出ないかどうかを確認する検査です。外来の診療の場や、入院して負荷する方法があります。
日本でも、かなり、負荷テストが行われるようになりました。そして、除去していた子どもが実際に食べてみると、何も症状は起きず、(良かったね!」と言うことで、それからは食べれるようになります。
本来の負荷テストは、除去食を開始する時に行うものです。しかし、血液検査だけとか、原因がはっきりしなくても心配だからと除去に踏み切ってしまう日本の子どもの割合は、外国の報告より多いようです。
現在、日本で多く行われている食物負荷テストは、年長児で行われています。
除去を開始する時の根拠として行う負荷テストですが、実際には年少時に症状が出て、除去食を開始するものの、除去を続けて年長児になってしまい、このままではまずいとのことで、負荷テストが行われることが多いのです。
乳児を持った母親から、負荷テストをしてくれる病院を聞かれることがありますが、乳児では負荷テストはあまりやられていません。
乳児や1歳代では、負荷テストをしても、病気が変化してしまうことが多いです。
負荷テストで症状がでなくても、しばらくしたら出るようになることがありますし、その逆もあります。
乳児期の症状はまだ、あまり決定的なものではなく、気づいたら治っていたということが多いのですが、それを確かめるためにはどこかで食べさせる必要があります。
自然にアレルギーがとれてしまう理由については、まだ、良くわかっていませんが、子どもたちの環境に多くある食品であれば、食べずとも、知らず知らずのうちに体に入り、減感作されてしまうことが考えられます。
しかし、乳児期の食物アレルギーの多くは軽くなるとはいえ、その時期は画一的なものでなく、食物アレルギー症状が続けば、親は悩みます。
日本は、特異IgEの検査(RAST)が簡単に行えるので、これが独り歩きをして、軽微な症状でも、除去食を開始してしまいます。そうすると、食べないので、治ったかどうかわからないまま学童期になり、食物アレルギーを持った小学生が、増えてしまいました。世界でも有数の卵・ミルクアレルギーの子どもが多くなっています。
今は、その反省期にありますが、今でも、母親、保母さんが、特異IgEの検査(RAST)の結果にこだわる場合があります。
実際に、病院で負荷テストをして、どの位の子どもが治っているかについては、専門病院から発表されるデータが多く、重症児に偏る傾向があります。
つまり、治っている子どもの割合は、その病院小児科の規模が関係します。全国的な有名病院であれば、重症児が集まるため、負荷テストでも、反応を起こす子どもが多いというわけです。
しかし、実際にはこうした専門病院ですら、負荷テスト後に現れる症状の頻度は、それほど高いものでなく、外国の報告より低率となっています。
日本の子どもは、治っているかどうか確かめず、食物アレルギーと思って除去を続ける子どもが多いと思われます。
日本では、食物アレルギーの年長児では、男児に多いのが特徴的です。5歳以後の食物アレルギーは、男児が7-8割を占めます。親が、病気がちな男児を心配するあまり、男児の方が食べさせる機会を失してしまい、判断が遅れてしまうからではないでしょうか?
Pediatr Allergy Immunol. 2013 ;24(5):450-5. PMID: 23773122
それでは、オーストラリアで行われている卵負荷テストについて、書きます。アナフィラキシーの定義は、WAO基準に従っています。
過去に重症の症状があっても、食べさせてみたら治っている子どもがいる一方で、以前より食物アレルギーが重症化していた子どもがいたことにご注目ください。食べないとわからないということが良く理解できると思います。
マフィンをつかって、十分に加熱した卵の負荷テストを行っています。
卵蛋白1gが含まれる(卵1/6個)を入れて、1個のマフィンを焼きます。それを、1/16 から開始し、問題がなければ倍量の1/8 とし、さらに1/4へ、1/2へと20分ごとに増やしていきます。
負荷テストの対象になったのは、近い時点で症状が出たことがあるか、極めて高い確率で症状がでると予想される子どもたちで、実際に、すべて厳密な卵除去食をしている子どもたちです。
負荷テストの結果をまとめます。負荷後、
① 症状の無かった人150人でした。平均年齢は3.2歳。過去にアナフィラキシーを越したことのある人22人の15% を含んでいます。
② 何らかの反応があったのが、86人の子供たち(36%)でした。
そのうち、軽症から中等症の症状の出た人74人(平均年齢4.7人)、
③ 残りは、重症で、アナフィラキシーが起きた人12人(平均年齢4.8歳、過去にアナフィラキシーを起こした4人を含む)でした。
以下に、もう少し詳しく、負荷テストの論文の内容を書きます。
背景:方法:前向きコホート研究。 2009-2012年、マフィン(加熱卵)を用いて卵負荷テストが行われました。1/6の卵(1gの卵タンパク質に相当)を含む1つの焼マフィンを、段階的に増量し、卵厳密除去をしていた卵アレルギーの子供たちに食べさせました。
結果:卵厳密除去をしていた236人の卵アレルギーの子供たちのうち、150人の子供たち(64%)は、加熱卵負荷テストにて、症状を認めませんでしたので、以後、卵解禁としました。
食後、12人(14%)にアナフィラキシーがおこりました。12人の子供たちのうち、 筋肉内アドレナリン投与は5人でした。一人は持続性の低血圧があり、2回目の投与を必要としました。
こうした重症化の予測は、皮膚反応の大きさ、喘息の有無、以前の卵アナフィラキシーの既往などからは、予測不可能でした。
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