18歳未満の子供に限定してみると、ピーナッツ・木の実アレルギーの有病率は、1997年に0.6%、2002年1.2%、2008年は2.1%になっていた。

食物アレルギーは治りやすいとは言うものの、治る割合は?となると、病院の規模により、成績が変わると言うお話をしました。より、重症な食物アレルギーの子どもを診療している専門病院では、治る確率が低下してしまう可能性があります。
 
食物アレルギーに限らず、どのような病気でも、病院におけるデータは、その病院の規模により、重症度や治癒率が変化します。良くある糖尿病や高血圧でも、大病院の患者さんでは、重大な合併症の起きる確率が高いです。
 
日本で発表される食物アレルギーの成績の多くは、病院受診の食物アレルギー患者をベースとした実態です。軽くて治りやすい子供と、そうでない子供が混在しています。

治癒率の偏りを避けるためには、一般集団から食物アレルギーのある人を選び出し、その人の病状を集計するやり方があります。言うのは簡単ですが、実際には難しく、調査費用もかかります。日本ではこうした成績は少ないです。
 
今回は、そんな研究論文を紹介します。これは、ピーナッツ、木の実に対するアレルギー有症率の年次的な調査です。J Allergy Clin Immunol. 2010 125(6):1322-6.  PMID:20462634

一般家庭に無作為に電話をかけて、食物アレルギーのある家族がいるかどうかを聞きだします。この電話調査結果に基づき、一般人口に占める食物アレルギーの頻度を算出したものです。
 
電話調査は、過去1997年、2002年、208年に、3回行われ、この調査の中で、米国人の成人と子どもの間で、ピーナッツ・木の実アレルギーが増えてきているかを調べました。
 
結果は、残念ながら、米国の小児でピーナッツ・木の実アレルギーの有病率が増加しているというものでした。成人ではそうした傾向はありませんでした。子どもたちが、ピーナッツ・木の実アレルギーになる環境が以前として続いていると考えられます。
 
子どもでのピーナッツ・木の実アレルギーの増加は、その重症度や子どもの将来性を考えると、原因解明が必要です。
今後も、人と食物蛋白の研究が続きます。
 
では、実際の論文です。
方法:ピーナッツ・ピーナッツアレルギーの有病率を調べるために、全国的に、無作為に選んだ電話番号にかけて、同一方法の調査用紙を用いて有症率調査を行った。
 
結果:5,300世帯の合計13534人を調査することができた。電話調査に協力してくれたのは電話をかけた人のうち、1997年67%が参加し、2002年では52%、今回の2008年の調査では42%であった。
 
全体的なピーナッツアレルギー、木の実アレルギーの有病率は、1997年1.4%、2002年の1.2%、2008年1.4%との数値が報告された。各年度の間には、有意差はなく、平均1.3%(95%CI、1.1%〜1.6%)であった。
 
しかし、18歳未満の子供に限定してみると、ピーナッツまたは木の実アレルギーの有病率は、1997年に0.6%、2002年1.2%、2008年は2.1%になっていた。この数値は、有意に増加していた。(P <。 001)。
 
子どものピーナッツアレルギーの有病率は1997年に0.4%、2002年で0.8%、2008年は1.4%になっていて、以前と比べ大幅に増加していた。(P <0.0001)
 
木の実アレルギーの有病率は、1997年に0.2%、2002年0.5%、2008年1.1%で、以前と比べ大幅に増加していた。
 
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