新聞の医療記事で、専門医万能との記事が気になる。

腸はいつも、ダイナミックに動いている。腸内に入った食べ物は消化され、ドロドロになった状態の消化物が、大腸を通過していく。その間に便中の水分が吸収され、便がほどよい固さになると、大腸の出口(肛門)に降りてくる。腸の働きが悪くなると、腸は便をスムーズに下へと送れず、十分な水分の吸収もできなくなる。ガスが過剰に産生され、腸がきりきりと痛くなっても、ガスや便を下に送れない。
 
特に、水分吸収ができないまま直腸に達した水様便は、腸をきりきりと刺激する。この痛みはなかなか強烈だが、便が出てしまえば痛みは消える。腸の重い病気になったと誤解する人がいるが、それは誤解である。元々、水様便は、腸を強く刺激するものであり、そこを理解できれば、痛みから来る不安は解消する。
 
腸の動きが悪いと、便がスムーズに送れず、便秘もくりかえす。昨今、こうした下痢と便秘をくりかえす過敏性大腸炎の症状を持つ人は多い。最近のネット記事では、過敏性腸徴候群と、炎を除いた病名が使われることが多い。炎というのは医学的に、具体的な病変が存在する時に使われる。炎を除いた病名の方が、幅広い症状を取り上げることができる。
 
痛み発作は、食後に起きることが多く、朝食後の朝の電車の中、昼食後の大事な会議中などで、腸のグルグル痛みがおきてしまうと、かなりつらい状態ではあるだろう。
 
しかし、この過敏性腸炎をうまく治す薬はない。なにしろ、脳が感じるストレスがそのまま、腸の機能を低下させているのだ。だから、腸を治すのではなく、脳のストレス軽減の工夫をしていくことが必要だ。
 
もちろん、現代の競争生活の中で、ストレスを減らすことはたやすいことではない。解決策と言えるものでもないが、お腹が痛くても大丈夫と考えるだけでも、ストレスの軽減につながるはずである。あまり心配しないでほしい。
 
病気はいつまでも同じところにいない。さらなる腹痛、血便、潰瘍などと、腸の病気が進むことがある。クローン病、潰瘍性大腸炎などの病名がつく状態がある。こうなってくると、自宅で様子をみているような状況でない。しかし、過敏性腸炎と明確な区別があるわけではなく、その関連すら不明だ。慢性腸炎の発症の経過も人それぞれである。
 
以前にこのブログでも、他人の便をつかって腸炎を修復するという外国で試みられた治療法を紹介している。この治療が有効である事を考えると、人の腸の健康を保つためには、腸の免疫状態と、腸内細菌のかかわり合いが大事であることがわかる。
 
菌と腸の両者が、究極の妥協状態にあることが必要なのである。菌に触れていながら、体(腸粘膜)は反応せず、むしろ菌が腸面膜を保護してくれている。慢性腸炎は、腸内細菌と腸粘膜のバランスがくずれてしまっているのは確かだろう。
 
先日の新聞の医療関連記事で、某大学付属病院のドクターが、慢性炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)について語っていた。新聞記事の文章を書いたのは記者であろうが、内容には、ところどころに不透明な点がある。つまり、内容に矛盾があるのである。
 
医療記事を読む時は、こうした矛盾を見つけて欲しい。記者は病気を十分に理解して書いているわけではない。前文を否定するような内容が、その後の文章に平気で出てくる。
そのまま、スラーと読むのではなく、あれっと、考えながら読むと、病気の理解につながると思う。
 
新聞の医療記事を読む時、内容の矛盾に気づくことが、病気を理解しているということだろう。
実際の病気を抱え込んだ人であれば、理解が進み、新聞記事の問題点に気づくと思う。
 
一般的に、慢性腸炎(クローン病、潰瘍性大腸炎)は、病院で専門的な検査を受け、その所見から診断されている。
症状のどの時点で、痛い検査をするべきかを決めるのが大事だ。
 
慢性腸炎の典型的な所見を欠く場合には、やみくもに専門検査を続けるわけにもいかない。所詮、原因も治療もわからない病気であり、病気の経過も治療に対する反応も個人差がある。治療してみてどう反応するかで治療効果を判定をするわけだが、その方針が立ちにくい場合があり、どうすれば最善なのかは、誰にも見えない。
 
新聞記事には、ストレス性の腸炎との鑑別が必要であると書いている。慢性腸は、ストレス性腸炎と誤診されていると書いてある。
 
しかし、腹痛、下痢などは、日常的な症状だからであり、他の病気との鑑別は困難である。クローン病、潰瘍性大腸炎の原因に、ストレスも考えられている事を考えると、誤診という表現は適切ではない。原因不明な病気というのは、他の病気との関連も、又、不明という意味である。
 
実際には、症状が重くなってきたら、いろいろ痛い検査が行われ、病名がつくという経過をとることが多いのだと思う。つまり、重いという判断ができるかどうかが大事なポイントである。
 
クローン病、潰瘍性大腸炎と診断されるには、いくつかの診断基準をクリアしなければならないが、病気の経過も所見も、所詮、流動的である。原因がわからない限り、鑑別などは困難だ。
 
重症例は難病に指定されているので、認定されるには、検査で所見がないとだめで、軽くなってしまうと認定は受けられない。
 
新聞記事では、専門医のところにくれば、すぐ診断がついて適切な治療が開始できるような風に書いてあった。しかし、読者は、こうした書き方には疑問を持つべきである。その前の文章で、治療法は不明と書いてあるから・・・。
 
ここで私が記者に要望したいことは、慢性腸炎(クローン病、潰瘍性大腸炎)の進行性や重い症状をしっかり説明して、これなら専門医にかかる必要があるとの書き方をしてほしいのである。
 
新聞では、2週間の腹痛と下痢があれば、専門医にかかれと書いてある。専門医なら、健常人と同じような生活を送れるようにすることができると、微妙な表現になっている。
 
つまり、新聞記事には、慢性腸炎は、治療法が無いと書きながら、専門医による的確な治療によって健常者と同じ生活を送れると書いてある。記者は、専門医だけが治せると書きたいのか?
 
専門医とは、どんな状態でも治せる人ではなく、軽症例はむしろ不得意で、重症例を多く診ている医師たちである。
専門医は、いろいろ強い薬や新薬を使う経験を多く持つ医師たちであるとも言える。重症であれば、薬に副作用があっても、専門医なら使うという意味である。
 
実際は、重症例で強い薬(免疫抑制剤など)を使うと、経過の良い人がいる。重症なら、薬の効果判定ができるのである。しかし、強い薬は副作用で不利益を被る人もいるので、軽症例に使えない。
 
自然に軽くなる軽症例では、自然経過にまかせた方が良い場合があるが、必ずしも、最初から予想できるものでもない。治療薬の効果の判定も難しくなる。
 
慢性腸炎に限らず、世間では、専門医という言葉が独り歩きをしている。専門医はオールマイティの技術があるような風潮がある。
 
皮膚の発疹、繰り返す頭痛、めまい、耳鳴りなど、日常的な症状を治せる専門医であるとの看板をかかげる医師もいる。
 
症状をかかえる本人が重大事と思えば、専門医紹介を希望することがある。しかし、こうした日常的な多くの病気は、むしろ、重大な病気が隠れていないかを見つけるのが、医師の技術だ。
 
専門医、専門外来などと大げさなことを言わずに、多様な病気の経験が豊富な医師の方が、隠れた病気を見つける才能を持つものである。
 
早期発見、早期治療は、理論的には可能だが、実際にはそうでない病気が多いのである。
 
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