皆さまは、職場なら企業検診を、会社勤めで無い方は、地域で住民検診を受けていると思います。検診の結果を手にした時、不安な思いをしたことがありますか?
私も、検診の診察医として参加することがあります。企業や住民検診に、検診医として参加すると、検診後の結果に対して、受診者が疑問を持ち続けていることが少なくないことがわかります。
血液検査の結果が、Aとか、Bとかで表示されることが多いと思いますが、検診結果をもらった受診者には、AからBへの変化の意味がわかりません。昨年は、Aだったのに、なぜ、今年はBなの?病気との関連は、どう考えるの?
お酒も飲まないのに、太ってもいなのに、肝機能のALT、AST、γ-GTPが、微妙に高いのはどうして?
胸部レントゲンなどで、硬化像あり、ってどんな意味?特に、医者に行けとは書いていないが、放置して良いの?
腹部エコーでも、腎臓や肝臓にのう胞ありなどと書かれているけど、放置していいの?
心電図で、RBBB、ブルガダ症候群って、何?
などなど、
医師が検診の結果を見て、説明が難しいと思うのは、異常な結果が出た時、それが実際の病気にどの位、結びつくのか?を判断する作業の時です。異常値が出た時に、どこまで受診者に治療行動を勧めるのかも、難しい判断です。
多くの検診の場合、最終判定するのは、検診医ではありません。
例えば、尿たんぱくとか、血尿などで、説明の難しさを感じます。
一方、血液の数値の検査は、異常であるとの評価をするのは簡単ですが、やはり、病名との関連で悩みます。
心電図が、明らかに、危険につながる異常であれば、すぐ、受診するように勧めますが、こうした場合は少なく、むしろ、毎年の微妙な異常が続く人が多いのではないかと思います。
結局、こうした微妙な異常は、心電図の経過を追っていく必要があるのです。検診が中断してしまえば、せっかくのデータが途切れます。心電図は用語が難しく、検診結果では、専門的用語がそのまま、書かれているので、受診者の悩みが起きてきます。このあたりも改善されると良いです。
厚労省は、患者向けの病気のガイドラインを、“マインド”と呼ぶネットサイトに載せています。医師向け一般者向けのガイドラインものっています。指導的な立場にいる医師たちがガイドラインを書いているので、参考になるかと思います。
しかし、実際には、これだけ読んで理解するのは難しいでしょう。こうしたものを、説明してくれる専門者がそばにいて、ちょっとしたアドバイスをくれると、一般人はかなり、病気の理解が進むと思います。
http://minds.jcqhc.or.jp/n/public_user_main.php#
この“マインド”中には、このように書かれています。
健診での検査結果を解釈するときにいくつかの点に注意する必要があります。健診はすべての病気を発見したり、全く病気がないとお墨付きを与える目的で実施されるものではありません。特に上記の偽陽性、偽陰性の問題があります。一部の癌は体の中に潜んでいても健診ではうまく発見できないことがあります。また将来、心筋梗塞や脳血管障害になりやすい方をある程度区別はできても、このような疾患になる人、ならない人を100%正しく区別できるわけではありません。大腸癌検診で行う便潜血反応でも、これが陽性だからといって必ずしも大腸癌があるわけではありません。大腸内視鏡などで精密検査を受ける必要があります。また心電図も通常と違う心電図波形であっても、すべてが心疾患の存在を示しているわけではありません。胸部X(エックス)線では、早期の肺癌を十分見つけることができません。検診では陰性でも、症状がある場合は、病院の受診を考えたほうがよいことも少なくありません。
検診の問題点のひとつが、検診で指摘される異常値と、診断・治療を要する病気と決まる異常値との間に、若干のギャップがあることです。
異常を指摘されたが、診療機関に言ったら、担当医に何でもないと言われて憤慨する人など、受診者の不満はいろいろあります。
検診で通院するように言われたので、一度は診療を受けたが、医師から満足できる答えが得られず、その後、止めてしまい、でも、やっぱり気にする受診者もいます。
医師に行けとの指示が出ても、診療所の大きさまで、なかなか指導してくれません。専門外の医師に言ってしまうこともあるでしょう。検診結果にまつわる問題点は少なくありません。
喫煙とか、嗜好に関するトラブルも起きます。
検診時に、医師から、絶対にタバコの話題を言われたくないと構える受診者もいます。男性は概しておおらかに「わかっているけど、やめられません」とおっしゃる方が多いです。一方、年配で喫煙する女性は、「やめられません」と泣きそうになる方がいます。
レントゲンなど、継続的な経過の判断が必要な場合は、その検診会社(病院)への、問い合わせが大事かと思います。
病気を指摘されるのは、誰でもいやでつらいものです。
画面を見ているパソコンにトラブルが起きると、受診者も心配そうに覗き込みます。「いや、パソコンのトラブルです。」と言うと、皆さん、ほっとします。それだけ、受診者はストレスある状態になるのだと思います。
明らかな異常であれば、医師も判断しやすいのですが、微妙な異常は、判断が難しいので、医師ははっきり答えない場合があります。医師は、がんが無いとか、異常がないとか、否定をする作業は苦手なのです。一方、病気があり、治療を要するという判断は、比較的に、容易です。
明らかな異常を除き、検診とは結論を急ぐ必要はありません。かかりつけ医や、近所の医師がいれば、その医師に聞いてみる手もあります。
検診会社は、オプション検査を用意していることもありますが、血液の検査などでは、実際に結果の説明がないので、受診者は迷ってしまうことがあります。検査とは、検査をする必要性についての説明と、出た結果に対する説明が、共に必須なのですが、そのあたりが検診では薄いような気がします。検査値の独り歩きは、不安をあおるだけです。
オプション検査の必要性や精度についての、説明が必要です。結果を説明をする医師がいるのが、望ましいですね。
一般的に企業や住民検診では、医師はブースと呼ばれるカーテン囲いの中で、診察します。多くは、2-3分の短時間で診なくてなりません。
まず、ブースに入ってくる受診者の全体の印象を見ます。「いかがですか?」の短い質問で、聴力や言葉のチェックができます。次に心雑音と呼吸音の聴診です。企業検診では、ほとんど異常のある方はいないだろうと思っていると、案外、何もないはずの人で、逆流を思わせる心雑音が聞こえたりします。
尚、学とみ子の相談電話でも、皆さまからの疑問をお受けしていますので、当相談センターでは、検診結果について、皆さまの疑問についての説明をします。
ネットによる相談申し込みフォームへの記入をお願いします。
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