背伸びに加えて、自身は、清く、美しく、自分に寛大。反省しても、それを外に表せないとなると、消耗は一段と強くなる。消耗が続けば、うつと不眠がくる。

中華レストランにおけるランチタイムもかなり過ぎて、大かたの昼食客はすでに帰った静かな昼下がりであった。
 
4人の年配者を前に、30歳位の若い女性が、やや興奮してしゃべっていた。この昼食グループの人たちは、専門家のタバコの講演を聞いた後のようであった。知識があるらしい若い女性が、同席している年配者にその講演内容について、説明しようとしていた。
 
彼女たちが聞いた講演は、妊婦とタバコに関する話題のようで、妊娠中のタバコの危険性についてであった。
 
若い女性の解説によると、タバコが危険な理由は、胎盤を容易に通ってしまうからであると言う。さらに若い彼女は、独自の解説を加えたいようで、胎盤というものは、めったなものは通らないようにつくられているが、それでもタバコは胎盤を通る程の危険なものであり、講演会の先生は、そこを強調したかったのだろうと説明した。
 
講演会場の聴衆から、妊婦でなければいいのか?と質問が出たらしく、若い女性は、その質問を、とんでもない事だと強い口調で非難した。「妊娠していても、いなくても、タバコを吸うのは危険なことです。胎盤ですら通過してしまうのですから、タバコの強い害が全身に廻ってしまうということなのです。とにかく、タバコはDNAを傷つけてしまうのですから・・・。」と、彼女は強調していた。
 
話を聞いている年配者たちは、そこそこの健康知識はある人たちのようで、若い女性の話しを聞き流すのでなく、あれこれとコメントをしていた。
 
年配者たちは、DNAが傷つくという意味のイメージがわかないようであり、もっと具体的にDNAの傷を理解したいようであった。そのためであろうが、サリドマイドと比べるとどうなのだろうか?との質問が出た。昔の人ならよく知っていたサリドマイド事件から、タバコのDNAの傷のイメージを膨らませたいと、年配者たちは思ったのであろう。
 
しかし、若い女性は、サリドマイドの障害とDNAの傷との関連を解説することができなかった。
 
若い女性は、「サリドマイドとは別の問題です。」と言い、「とにかく、タバコにはそういう問題があるのです!」と言い、サリドマイドの話題を避けようとした。そして、再び、タバコは胎盤を通過する、タバコはDNAを傷つけてしまう、と繰り返し強調した。

このグループは、昼食後であるにもかかわらず、まるで、職場の検討会の雰囲気のような会話を続けていた。
 
しばらく、会話は続いていたが、その途中で、若い女性は、ふ と言った。
「先生の通訳役をしたいのだけれど・・・。」

彼女がそこまで言ったので、私は、「それができなくて、ごめんなさい」 とでも言うのかと予想した。しかし、彼女の言葉は、そこで終わった。

この時の彼女は、年配者からの質問のDNAの傷について、解説できない自分を反省したであろうが、謙虚な言葉は、彼女の口からは出なかった。
 
彼女が、年配者を前に、背伸びしているという印象は、見え見えであった。
 
私は、悪い癖だと思うが、レストランでたまたま、聞こえてしまう話に興味を感じてしまうことがある。特に、病気の話題になると、どのような内容なのかと聴き耳をたててしまうのである。
 
元々、食事の会話は、カジュアルなフリートークの場であり、会話は自由に交差していく。
誰かが、誰かの話をうかがうというものでない。
わからない話題が出てくれば、質問が出てくる。そして、答えが出て、共通に理解し合って、話題はぐるぐると廻って行く。わからない事は、素直に、そこはよくわからないと言えば良い環境である。
 
おしゃべりと言うのは、お互いの知識を対等に交換し合ってこそのものである。
不十分な知識で、場をし切りたいとの欲望が強い人は、おしゃべりに向かない。知らないことを無理してつくろっても、他人にもわかってしまうものである。
 
今回の場合も、若い女性の知識のレベルがそれほど高くないと、周りの年配者は気付いている。それでも、この若い女性は、自身の言い方を工夫していくという態度がとれなかった。一方で、年配者たちは、そんな彼女に寛大だったと思う。
 
この若い彼女は、「私が教えてあげます」みたいな感じで、勢いよく知識を披露してしまったため、後には引けなくなっていた。
 
この若い女性のように、背伸びするタイプの人は、消耗しやすく、自身が苦しくなりやすいのではないか?そして、こうした人に消耗が続くと、メンタルトラブルが起きやすいと思う。
 
さらに、背伸びに加えて、自身の意見は、清く、美しくと信じ、他人をせめるが、自分に寛大で、反省しても、それを外に表せないタイプであれば、かかえる消耗は一段と強くなる。消耗が続けば、うつと不眠がくる。
 
今回の若い女性のように、年配者を前に、話題を仕切ろうとするのは、はたから見ても、はらはらする。
 
若い彼女は、周りからくるアンチの雰囲気を感じ始めても、それが自分側の問題とは気づかず、素直に自分を出すことができない。
 
若い彼女自身は、こんなに気を使っているのに、なぜ、受け入れられないのか?と感じたりするだろう。世間をわ
たるにはトラブルが起きやすい性格と言えそうだ。
 
彼女のような人は、いろいろな経験を積んで、早く、自分がみえてきて欲しい。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック