人生相談の回答に関して:定年後の夫に対して、あれこれ小言を言うのは、妻の長年の夢だったと思えるのだ。

5月18日の読売新聞の人生相談は、70歳の男性からの投稿だ。以下が相談内容である。
 
口うるさい妻に閉口し、家を出たい気分だと書いている。
結婚前の妻は、「悪いところがあれば直すから、何でも言って」と殊勝なことを言ったとのことだ。
しかし、妻は、今も、料理がうまく、掃除洗濯など主婦のやるべき仕事をしてくれているが、どう対処したらよいか?
 
これに対する賢者(作家)の答えは、以下のようであった(抜粋)

奥様が急に変わられたのではなく、あなたが変わられたのでしょう。
(あなたが)目にあまる変わりようなので、それで奥様がいちいち注意するのでしょう。
私にはそのように思えます。
「悪いところがあったら指摘してほしい。直すから。」こう、夫は言うべきだ。
・・・あなたは、妻の小言をありがたく思い、直すところは直した方がよろしい。
奥様に関心を持たれるだけ、あなたは幸せ者です。

作家という職業柄か、かなり皮肉的な物言いであるが、投稿した男性にとっては、厳しい回答であると思う。
もっとも、この作家の回答者が、一番いいたのは上記の文章の最後であろう。
 
男は70歳をすぎて、仕事が無くなったらみじめなモノだと、作家は諭している。
あなたは、料理・洗濯・掃除をやってもらっているのだから、良い方だ。
ありがたいと思って、妻の言うことを聞け!と、回答者は言いたいのだろう。

確かに、この相談者の男性は、いまだに、妻に面倒をみてもらっている。だから、妻が強くなるのだろうと思う。
この夫婦の妻は、夫に対して指示を出すのは、妻の長年の夢だったと思えるのだ。
今、妻は、人生最後の夢をかなえようとしている!

妻を長い間、守ってきたつもりの夫にとっては、予想しない反撃にあう時代になったと言える。
では、なぜ、こうなってきたのか?

人は物を考える生き物である。それぞれが自らの価値観を持っていて、それに従って生きて行きたい。
他人からの指示は、自らの価値観とはずれる。
誰でも、いつでも、他人からの指示は、苦痛なのである。
妻は、長い間、夫から指示されてきた。人生の大事な決め事は、夫が決めた。
過去に、妻が望んだことは多くあっても、立場上、妻はあきらめてきた。

夫が働いていて、給料を入れる時期であれば、夫の発言権は大きい。
子どもの教育など、家庭で大事なことは、夫の意見が尊重される。
妻がやりたい行動も、夫が駄目と言えば駄目になる。
夫が食事中に咳こんでも、くしゃみをしても、家族はがまんするだろう。
料理がまずいとか、妻の家事のやり方についても、文句を言う夫であれば、妻は夫からの文句を避けるために頑張る。妻は、上からのもの言いに耐えてきたのである。
 
結局、生活の糧を誰が得ているのか、この問題が大きいようだ。

しかし、時と共に、夫婦関係が変化する。夫からあれこれと指示されてきた妻は、その長い間に抱え込む人生の夢がある。それは、指示をだしてきた夫に対して、逆に、妻から指示を出すことだ。

毎日の細かいことについては、妻の経験はうわてである。妻は、この時を待っていたのである。
妻は、夫の日常行動に小言を言う。
妻は、夫への小言に満足するから、料理・洗濯・掃除に精を出せるのだ。
 
回答者の作家は、そこをふまえて、夫に対し、妻の小言に付き合えと言っている。
妻を支配した夫ほど、後に妻に支配されると、作家は言いたいのだろう。
 
人は、誰でも、他人から細かく指示をされることを嫌う。
若い女性が、未来の夫に対して、従順に従います」 などと言ったら、将来は危ないと思うべきだ。
一見、おとなしい女性が危ない。
 
この人生相談の女性は、「悪いところがあれば直すから、何でも言って」 と言った。
女性が我慢してきた分だけ、後になって、自我を通そうとするのである。
特に、妻に社会経験が少なく、相手の気持ちが読めない人であると、妻は、夫の足元を見
て、ますます、強権を発する。

しかし、若い時のこの女性は、嘘をついたわけではなく、女性もそうしたいという気持ちがあっただろう。
そして、それが本音ではないことに、女性は気づかないのだ。
自分自身の心が読めていないからである。
こういった人は、他人の心が読めない。他人の痛みが見えない。
だから、後で豹変する可能性が高いのではないだろうか?
 
アドラーの心理学でも、自分の問題と、他人の問題をわけて考えるべきとの、課題の分離を進めている。
だから、人はいつでも相手を尊重し、指示を出すことには、慎重でありたい。
他人へ指示をだして、他人まかせにすれば、文句は言えない。

実際、家庭生活というのは、課題の分離をするのは難しい。
誰かが、誰かのために仕事をして、ささえあうものである。
そして、夫の退職は、この家庭の力関係もバランスを崩してしまうものである。

家庭内の力バランスの変化に応じて、人も変わらなければいけない。
料理・洗濯・掃除は、妻にやらせていたら、夫は、妻からの指示が多い事を覚悟すべきだ。
妻から小言を言われるのだ。
妻の小言には目的がある。その目的を読みとって、夫は、賢くたちまわる必要がある。

他人の世話が無いと、生活できない人の立場は弱い。
それは、たとえ給料を払っていても同様である。
映画などで、昔の上流の暮らしは、多くの使用人に囲まれてかしづかれているが、主人が隠れたところで、使用人が嫌がらせをする場面がある。
 
使用人から、悪くののしられたり、鼻水を落とされたりする。
使用人は、上流の暮らしにジェラシーがある。
やがて、名家が没落して、使用人が主人にのし上がったりすると、使用人の反撃は大きい。

女性雑誌の特集の広告に、良い妻であることをやめる、良い嫁であることをやめる、良い母であることをやめる との言葉があった。
 
これは、男性にとってぎょっとする言葉かもしれない。しかし、そうした夫婦関係の方が、夫の定年後の妻の反逆は少ないのではないかと想像する。
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