腸内細菌が、多種類かつ多数に増えている腸では、病原菌が腸内に入ってきた時も、病気にならない仕組みができあがります。


前回ブログの続きで、腸内細菌の話題について書きます。
 
腸にいる菌として、良く知られているのは大腸菌ですが、この菌が、便から培養できるようになったのは、1800年の後半です。テオドール=エシェリヒ(Theodor Escherich 1857-1911)は、大腸菌Escherichia coliを発見した小児科医として有名です。
 
発見したというと、「あっ!見つけた!」というイメージですが、実際には、研究者が、菌を人工の培地(寒天培地)で増やして、ひとつの菌の塊りとして示すことです。そして、他の科学者も、菌の塊が、1種類の菌であることを納得し、了承する状態になります。実験の再現性などについても、コッホの三原則などと呼ばれるものがあり、科学の答えは、ひとつであることを目指します。もっとも、今は、同じ種類の菌の顔つきを、菌の遺伝子を解析して、さらにくわしく調べることができます。
 
この菌の塊り(コロニー)には、他の菌が混じっていない事が条件です。純培養の菌は、その性質は、いつも一定です。
 
このように、人間は、1800年の後半になると、病気を起こす菌を多数、みつけられるようになりました。大腸菌の場合は、発見者のエシェリヒ先生から名をとって、学名をエシェリヒアコリと呼ばれます。
 
コッホが、炭疽菌を培養したのが1876年、結核菌をみつけたのが1882年で、1800年後半は、病気を起こす元となる細菌が、人の目で見えることが可能になった時代でした。見えるということは、信じるための大事な条件ですが、1900年になると、目で見えないウイルスも、発見されていきます。
 
エシェリヒ先生は、培養の技術を用いて、1886年に、胎児の状態の赤ちゃんなら、その便(胎便)は無菌であることを証明しました。そして、生まれた後は、生後3-24時間で、赤ちゃんの腸管に菌が増えてくることをみつけました。
 
しかし、腸内細菌の研究は、長い間、これ以上の発展をすることができませんでした。しその難しさは、腸内は、簡単には培養ができない菌に満ちている点でした。人の目の前で、腸内細菌を増やして観察することができず、その存在が証明できなかったのです。
 
長い間、取り残された腸内細菌の研究分野でしたが、最近、やっと、その状況が変化してきました。菌の遺伝子検索(PCR法や、16Sリボゾーム遺伝子の検索)が可能となり、菌の遺伝子をさがすことにより、どんなタイプの腸内細菌が、どの位にいるかが、わかってきたのです。
 
 
最近の研究で、母親の腸管にいる菌が、母親のリンパ球に取り込まれて、新生児の腸管に運ばれるしくみがわかってきました。菌は、そのままの丸のままの菌の状況で運ばれるわけではなく、母親のリンパ球内に取り込まれた菌成分が赤ちゃんの腸管に運ばれます
 
こうして、生まれた赤ちゃんは、母親の腸管にいた菌の成分に対してなじみの状態になることができるので、これと同じ種類の菌ならば、あかちゃんの口から菌が入った時に、赤ちゃんの腸から排除されにくい状態になるのです。つまり、赤ちゃんは、母親の腸管にいた菌に対して免疫反応を起こさず、母と同じ種類の菌を、子どもの腸が受け入れるというしくみです。
 
こうして、生後まもなくの赤ちゃんの腸内に定住地を得た菌は、その後、そのあかちゃんの生涯の健康に影響を及ぼしていきます。
 
赤ちゃんの腸管の菌は、母親の母乳からも入ってきます。それは、母親の乳首の皮膚についている菌であったり、母親の腸管の菌が腸間膜リンパ腺リンパ球にのって、母乳に到達する可能性が指摘されています。
 
菌がそのまま生菌の状態で、母親の腸管から血液内に入るとなると、普通は、母親が激しい免疫反応を起こしてしまいますので、一旦、母親のリンパ球内で処理されて、子どもに移行すると考えられるようです。
 
こうして、母乳で育った赤ちゃんは、いろいろな種類のビフィドバクテリウムBifidobacteriumを腸内に持つことになりますが、ミルクで育つ赤ちゃんとは、母乳の赤ちゃんの腸内細菌の様相は異なってきます。
 
生後半年を過ぎると、赤ちゃんは、離乳食から、さらに多くの菌を腸内に取り込むようになります。赤ちゃんの腸内は、多種類の菌がバランスをとり、成人型の腸内細菌層に近づいていきます。この時、ミルクで育ったあかちゃんは、母乳の赤ちゃんより、より早く、成人タイプの腸内細菌を獲得していくようです。
 
腸内細菌だけでなく、赤ちゃんの腸粘膜の構造の変化も進みます。腸の粘膜は、複雑にいりくんでいるのですが、顕微鏡で見ると、粘膜が厚くなり、山は高く、谷は深くなり、腸粘膜を覆う粘液量も多く厚くなります。
 
腸内細菌が、多種類かつ多数に増えている腸では、病原菌が腸内に入ってきた時も、病気にならない仕組みができあがります。
 
残念なことですが、誰でも歳をとると、守り神である腸内細菌層が変化してしまいます。防御機能が壊れ、病原因が増えやすくなってしまうということは、人の寿命を暗示する悲しい出来事です。
 
腸内細菌の違いは、人の健康にどのような影響を与えるのでしょうか?実際の赤ちゃんを対象に、成長を追って行った研究では、まだ、結論がでていないようです。
 
抗菌グッズ、ファブリーズなどにのめりこむのは、どうなのか?
人の健康を保つしくみについて、もっと、いろいろなことがわかるといいですね。
 
今後、興味深い研究をさがし、ご紹介したいです。
 
 
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