読者の皆様に、向精神薬、抗不安薬をお飲みの方も、いらしゃると思います。
ウィキペディアや、製薬メーカーなども、薬剤情報を出しています。しかし、なかなか、薬の効果の理解は難しいと思います。
特に、用語、例えば、ドパミン作動、錐体外路症状、プロラクチン、薬剤性パーキンソニズムなどではないかと思います。
私のこのブログに、向精神薬を解説しながら、情報提供いたします。読者の皆さまの理解が進むと、うれしいです。
まず、簡単に脳のしくみにふれます。
大脳皮質は、学習、計画、動機づけなど、人が考え、知的行動を起こす時に働きます。大脳皮質の前頭前野は、注意、計画、動機づけなどの頭脳活動を起こさせる場所です。一方、大脳の内部に存在する中脳辺縁系(腹側被蓋野、側坐核腹側線状体、扁桃体、海馬、その他の辺縁系構成部位と名付けられている脳部分)は、不安、注意、我慢、ストレス対応などに活躍する部分です。脳では、知的行動に関連する脳部分と、生命現象(呼吸、心臓)に関係する原始的な部分があります。しかし、いづれの脳の部分も、神経細胞とその線維によって、密接に連絡し合っています。
この連絡網は、人間の子どもが思春期になる時に、速い速度で完成していきます。それぞれ種類と役割の異なる神経細胞がいるのですが、細胞体から繊維と呼ばれる糸状の構造を伸ばして、隣の神経細胞と連絡を取り合います。複数の種類の神経細胞が、相互に作用し合っています。つまり、細胞同士で、支えあったり、抑えあったりしているのです。実は、脳の働きは、神経細胞が、じょうずに繊維を伸ばして、細胞同士でうまく連絡しあうかで決まってきます。そして、子どもの脳は重量を増して、神経細胞が成熟していきますが、その過程で、繊維網を完成させていきます。時には、神経細胞から飛び出した無駄な繊維をきりとり、重要な繊維を強化するなど、ネットワーク網を慎重に作っていきます。このネット網は、ぎっしりでも、スカスカでも、脳はうまく働けません。ネット網がうまく働かないと、不安があっても克服できない、不安にさいなまされる、やる気が起きない状態となり、知的活動がうまくできなくなります。神経ネットが働かないと、うつや統合失調などの脳の病気が起きてきてしまいます。男児では、思春期に、統合失調症が起きやすく、この神経の密なネットワークがうまく、編みこめなかった結果であろうと考えられています。神経ネットを結びつけるには、ドパミン、セロトニンなどの脳内伝達物質が必要です。これが増えたり消えたりして、細胞同士で連絡をとります。連絡しあう部分をシナプスといいますが、実はこのシナプスは、大事な部分であるため、鞘(さや)のような構造物で、守られ、かつ鞘からも調節されています。
人が不安を感じる時、それに対抗しようと脳が働きますが、その時、中脳辺縁系の神経細胞が、ドパミンという物質を増加します。この時、同時に、他の脳神経も、バランスをとろうと働きを始めます。脳の興奮が高まると、統合失調症などの精神の病気が起きてきます。統合失調症でしばしば、見られる妄想、幻覚、幻聴、混乱、興奮などは、陽性症状と呼ばれ、興奮させる脳内伝達物質ドパミンが主に起こすと考えられています。統合失調症などの病気は、ドパミンの興奮を治める薬が効果を発揮します。これをドパミン受容体遮断作用薬(ドパミンを感じとる部分を減らすと考えると良い)と言います。
精神のバランスをとる薬を向神経薬と言います。精神科(心療内科)の治療目的薬剤は、なんとか脳のバランスをとり戻し、健康が回復するのを待つことです。この薬の働きを大きく分けると、鎮静的な薬(興奮を抑える薬)と、活性化(元気を出させる薬)があります。同じ薬が、時に統合失調症、時にうつ病の治療薬として使われます。その他にも、躁状態、夜間せん妄、強い不安感や緊張感、また混乱状態などに、薬が使われます。
中脳辺縁系の神経細胞のドパミン作動神経を抑えると、人は不安に耐えられるようになります。しかし、脳内伝達物質を人工的に変化させると、いろいろな副作用も起きてきます。ドパミン受容体を遮断すると、人の体は、プロラクチンが増加するように仕組まれています。向神経薬の副作用としては、錐体外路症状(体が不随意に動いてしまう、筋肉がけいれんしてしまう)、血圧低下などがあります。向精神薬の急速な中止は、副作用が多いのです。定型精神病薬は、黒質線状体路や下垂体のドパミンD2受容体の遮断も起きてきやすく、薬剤性パーキンソニズムなどの副作用が生じます。プロラクチンは、授乳中の母親で増加する物質ですが、この物質が、向神経薬で増えてしまうのです。私たちの脳内物質は、複雑な相互関係がある証拠です。
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