ホルモン補充療法について世界の潮流を知る。

昨年、12月29日のブログなどで、学とみ子は、何度か、生体における女性ホルモンの多彩性についてかきました。そして、閉経後は低めの女性ホルモンが女性の健康をサポートすると言ってきました。今回は、外国での医学論文を紹介しながら、この問題を考えていきます。女性に知ってほしい話ですが、勉強好きな男性にも読んでいただいて、女性たちに情報提供していただけると、ありがたいです。http://gakutomiko.web.fc2.com/

外国では、乳がんは、日本よりずーと多く発症します。女性を乳がんから守るために、研究・調査がさかんです。米国では、BCSC (The Breast Cancer Surveillance Consortium)という組織が、15年以上、活動しています。一般向け、および専門者むけ、両面から乳がんについての情報提供を行うためのサイトです。医学情報の提供に加えて、乳がんの患者登録を行い、患者名、病院名をすべて匿名にして、研究者などに情報提供なども行っています。
 
2002年、7月にWHIにより、ホルモン補充療法と乳がんが関連するとの報告がありました。これは、世界に衝撃的な出来事でした。女性のQOL向上を望む医師たちにも、大変、ショックな結果でした。確かに研究対象となったのは、閉経期より加齢した女性たちが多かったのですが、女性ホルモンの多様性を、まざまざと見せつけた結果でした。この研究は、現在も追加調査されていて、論文が出てきます。これが世界の潮流です。
 
BCSC組織のホームページにアクセスすれば、乳がんに関する医学論文が多数出てきます。そして、ホルモン補充療法は、がん誘発因子であることに関する論文が掲載されています。乳がんは、乳房の大きな人、肥満の人、ホルモン補充療法をした人で、リスクが高まります。又、ホルモン補充療法を止めると、その後のがん発症リスクが低下します。

この論文ファイルの中から、いくつかを紹介しましょう。
 
1)Journal: J Natl Cancer Inst 2007;99(17):1335
ホルモン補充療法は、乳がんの予後に、どのように影響を与えたかを調査した。ホルモン補充療法を受ける女性の数は、2000-2002年にかけて7%、2002-2003年にかけて, 34%程、減少した。
 
50-69歳の603411人を対象に、スクリーニング検査としてマンモグラフィーを行い、3238人が乳がんと診断された。ホルモン補充療法が減少した年度と一致する2001年から2003年にかけて、浸潤性乳がんは、各年ごとに5%減少した。
2000年から2003年にかけて、エストロゲン受容体陽性の浸潤性乳がんは、年間13%減少した。しかし、軽症乳がんの数は変化がなかった。この事実から、乳がんが減少した理由として、乳がんの検査数が少なくなったと考えることは妥当ではなく、浸潤がんそのものが減少したと考えるべきであろう。
 
2)Journal: Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2007;16(12):2587-93
マンモグラフィー検査により、乳房密度の高い人の方が、乳がんにリスクが高くなる。一方の乳がんがある女性では、他方も乳がんになりやすくなるが、タモキシフェンなどの女性ホルモン剤の働きを抑える薬により治療が功を奏しやすい。
 
3)以下のの論文は、体重の多い群では、正常体重群に比べて、乳がんの発症率が高く、かつ浸潤性の高い(悪性度が高い)乳がんが発症しやすいと、統計学的な裏付けの数値と共に示されています。
 
Kerlikowske K ら、Journal: J Natl Cancer Inst 2008;100:1724-33
1996-2005年の間に、287,115人の女性に614,562回のマンモグラフィーを行い、対象となった女性のうち、マンモグラフィー検査の1年以内に、乳がんと診断された女性は、4,446人であった。女性の体重と身長で、BMI(BMIとは、分母が身長の2乗、分子は体重で算出する, kg/m(2)) を算出し、乳がん女性を、次の4群に分けた。

正常体重群(BMI18.5-24.9),
肥満群 (BMI25.0-29.9),
重症肥満I群 (BMI30.0-34.9), 
最重症肥満II、III群 (> or =35.0)
 
 1000人当たりの乳がんは、正常体重群6.6人 , 肥満群7.4 人, 重症肥満I群7.9 人、最重症肥満II、III群 8.5人
(P < .001、統計学的に信頼性が高いという数値)であった。
 
浸潤性が高いなどの予後の悪い乳がんのリスクは、正常体重群2.3人, 肥満群2.6 人, 重症肥満I群2.9 人, 最重症肥満II、III群3.2人 P(trend) < .001)であった。
エストロゲン受容体陽性がんは、体重の高い群に多かった。
 
4)個人差はありますが、女性ホルモンは、乳房を大きくします。閉経後も、女性ホルモン群では、乳房の密度が高い人が多いようです。
 
Journal: J Clin Oncol 2010;28(24):3830-7 Date: 2010 Aug 20
55-59歳の女性587,369人が、1,349,027回のマンモグラフィーを行い、14,090人の乳がんを診断した。
登録システムであるBIRADSの分類法を用いて、1-4度までの乳房分類を行い、それぞれの群に属する女性において、5年間の乳がんリスクを比較した。ホルモン補充療法は、エストロゲン単独投与の女性群と、エストロゲン+プロゲステロン(黄体ホルモン)群.を投与群の女性であった。

女性で、乳房密度の低い群に属する女性では、女性ホルモン無群が、0.8% (95% 信頼区間 0.6 to 0.9%)であり、女性ホルモン群では、0.9% (95%信頼区間, 0.7% to 1.1%) と、乳がんリスクが上昇した。
 
同じ年齢層の女性で、乳房の密度が高い人では、乳がん発症のリスクが高かった。ホルモン補充療法のない人では、2.4% (95% CI, 2.0% to 2.8%) , エストロゲン使用者では 3.0% (95% CI, 2.6% to 3.5%)、エストロゲン+プロゲステロン(黄体ホルモン)は、4.2%でした。
 
5)卵巣がんは、乳がん、子宮がんなどにくらべて、数は少ないですが、悪性度は高く、5年生存率も低いものです。この卵巣がんも、ホルモン補充療法により増加することが示されています。
 
JAMA. 2009 Jul 15;302(3):298-305.
730万人の女性たちの8年間の観察において、卵巣がん3068人(うち卵巣上皮がん2681人)と、ホルモン補充療法との関連を検討した。
対象として、ホルモン補充療法を受けていない90万人の女性と比較した。
ホルモン補充療法群の女性は、治療をうけなかった女性と比較すると、卵巣がんは、1.38倍となり、卵巣上皮がんは1.44倍となった。
ホルモン補充療法中止後、2年目までは、卵巣がんのリスクは、1.22倍とまだ、やや高いが、2-4年では0.98倍となる。さらに4-6年過ぎると、卵巣がんが0.72倍と減少する。ホルモン補充療法群では、1000人あたり0.52.非ホルモン補充療法は0.4であった
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