エストロゲンをつくるアロマターゼについて そこが知りたい!

学とみ子は、エストロゲンが、細胞を動かす多様で多彩な物質であるという説明をしてきました。
そして、生涯を通じて人を支える物質でもあります。http://gakutomiko.web.fc2.com/

エストロゲンは、アロマターゼと呼ばれる酵素により、男性ホルモンであるアンドロゲンから作られます。アロマターゼは、別名をCYP19とよばれ、これを作る遺伝子は、細胞核の染色体の15番、q21.2領域と呼ばれる場所にあります。エストロゲンは、多くの臓器の必須の物質で、そのエストロゲン生産のためのアロマターゼ遺伝子は、体の多くの臓器の細胞で発現されています。アロマターゼが過剰に産生されると、男女で女性化が起きてきます。男性であれば、低身長、女子乳房、精巣機能不全となり、女性であれば、早発乳房(思春期前に乳房肥大)、子宮疾患を起こしてきます。
 
性腺、骨、脳、血管、脂肪組織、皮膚、肝臓、胎盤では、それぞれの局所で、アロマターゼが作られますが、DNA上のアロマターゼ遺伝子部分は各臓器共同部分ですが、遺伝子転写に影響を与えるプロモーター部分は、複数で存在し、各臓器ごとに異なっるプロモーターを使用します。プロモーターとは、遺伝子転写そのものを行う部分ではなく、遺伝子発現レベルに影響を与える部分です。どの部分のプロモーターが使われるかで、アロマターゼ量や働きが異なったり、アロマターゼ量に影響を与える転写因子が異なってきます。エストロゲンが適正に作られるよう、微妙な調節をプロモーターが行っているわけです。各臓器ごとに、使われるプロモーターが異なるため、エストロゲンの働き方が違ってくるのです。
 
乳がん局所では、エストロゲン活性が高まっていますが、アロマターゼ活性もたかまっています。そして、乳がんのそばの脂肪組織でも、正常の脂肪組織よりアロマターゼ活性が高まっています。がん細胞には、正常細胞とは異なるプロモーター部分が使われるため、アロマターゼの調節が難しくなるわけです。正常の乳房では、プロモーター1.4 と呼ばれる部分が使われますが、乳がんではプロモーター1.3 と II と呼ばれる部分が使われます。つまり、がんの部分は、がんが拡大するのに、ふさわしいエストロゲン環境が用意されていると考えられます。これは、生体にとってはとても不利なことです。
 
エストロゲンの活性を抑えることは、乳がんの治療薬となるのですが、他にも、アロマターゼ活性を抑える薬剤があります。プロスタグランジンは、アロマターゼ活性をあげます。プロスタグランジンとは、COXと呼ばれる体内酵素が作用して作られる物質で、私たちが熱のある時、炎症が起きている時、この物質がつくれます。プロスタグランジン産生を抑える物質は、解熱、鎮痛剤として使われます。COX-2阻害剤により、アロマターゼ活性が抑えられます。
 
エストロゲン阻害剤は、乳がんの治療薬となっていることからも、明らかなように、エストロゲンは、細胞をふやしていくのが主要な働きなのです。同時に細胞の働きを高める機能因子でもあります。脳では、エストロゲン受容体の作用が次第に解明されてきています。このように、全身に発現し作用する物質であるために、どのような環境でどの位産生されるべきかは、厳密なコントロールをうけているはずです。生体は、エストロゲンが働き過ぎて細胞増殖をやりすぎないよう、がんにならないように、きめ細かにコントロールされています。こうした働きの全貌は、まだ明らかではないですが、正常細胞は、プロモーターを使い分けて、アロマターゼの暴走を抑えていると思われます。それが、狂ってしまうのが、がん細胞で、アロマターゼ産生も狂ってきてしまいます。
 
そう考えると、閉経後に、人工的なエストロゲンの導入することは、アロマターゼの微妙な調整作業を狂わすものであり、がんと言う予期せぬ結果をもたらすわけです。アロマターゼ・エストロゲン遺伝子は、全身臓器に発現し、組織を新鮮に保ち、機能低下を防ぐ役割を担っているわけですから、関与する多くの体内物質の協力のバランスを壊さないようにすることが大事なのでしょう。
 
日本人の多くが、ホルモンは怖いと信じているのも、自然からの啓示なのでしょう。
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